「おい、大丈夫だったか?」
部屋に戻ると、旦那がそう声をかけてきた。が、心配そうな素振りとは裏腹に、すでに並べられている料理を息子と一緒に食べているところだった。
「なによ、心配してくれてると思ったら先に食事しちゃって」
「そう言っても、利弥がお腹すいたっていうから」
旦那には旦那の言い分があるんだろうが、なんかショックだな。そう思いつつも、私もお腹が空いたので早速食事に。
「私、ご飯食べたらさっき助けてもらった由衣さんのところに行ってくるから」
「みさきを助けてくれた人だな。しっかりとお礼をしておくんだぞ」
旦那はそういうの、私にまかせっきりなんだから。とはいうものの、利弥の面倒を見てくれるということなので私は腹を立てながらも由衣さんのところに向かうことにした。
「お待ちしてました。さ、どうぞ」
由衣さんは私を待ち構えてくれていたらしい。旦那とは違って、私を待ってくれていたと思うとなんだかうれしいな。早速おじゃまして、そこからガールズトーク開始。
私はいきなりさっきの旦那の態度に対して愚痴を言い始めた。由衣さんはにこやかな表情で私の話を聞いてくれる。なんだかすごく話しやすい人だな。私もこうなりたいな。
「なるほど、みさきさんは今すごく戸惑っているんですね。自分が何をしていくべきなのかについて」
「そうなの。でも、今一つわかったことがあるわ。私、由衣さんみたいな人になりたいなって思った」
「私みたいに?」
「うん、安心して話ができるし、受け答えもしっかりしているし。何よりかわいいしね」
「えへっ、ありがとうございます。一つ聞いてもいいですか?」
「うん、いいよ」
「私みたいになって、何をしたいんですか?」
そう言われて言葉に詰まってしまった。単に憧れているだけじゃダメなんだ。それで何をしたいのか。そこから先が見えてこない。
ここで悩んで黙りこんでしまったからなのか、由衣さんがこんな提案を。
「ちょっとおもしろいことやってみませんか? でもこれ、私は仕事としてやっているので無料ってわけにはいかないんですけど」
「どんなこと?」
「この八枚のカードを使って、みさきさんの今の悩みに対しての解決策を導くんです」
「えーっ、それって占い?」
「占いとは違います。みさきさんはコーチングはご存知でしたよね」
「うん、質問とかで相手から気づきを引き出すっていうのだよね」
「これはメタファリングといって、コーチングの一つなんです」
「コーチングかぁ。一度受けてみたいと思っていたけど、でも正直お金が結構かかるんじゃないの?」
私は以前コーチングに興味があって、受けてみたいと思っていろいろなコーチのホームページを見たけれど、とてもパートで働いている主婦が出せる価格では無いので諦めたことがある。
「うぅん、メタファリングは本当なら一回二千円なんだけど」
「えっ!」
私が思っていた価格よりずいぶんと安い。
「それなら受ける!」
思わず飛びついてしまった。二千円くらいだったら出せるし、それに占いを受けるのと対して変わらない価格だし。
「じゃぁちょっと待っててくださいね」
由衣さんはそう言って、バッグの中からカードを取り出した。
「じゃぁ、あらためてお聞きしますが、どんなテーマでメタファリングを受けてみたいですか?」
「えっとね、私のこれからの進路について、かな」
「みさきさんの進路ですね。では進路について今の状況をイメージした時に、この絵の中からピンとくるものを直感で一枚選んでください」
「直感で…」