登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元盗賊。カインをアニキと呼ぶ
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王たちの呪いの主
ポルク……リーザス村の少年
マルク……リーザス村の少年
サーベルト……アルバート家の若き当主
ゼシカ……サーベルトの妹
アローザ……サーベルト、ゼシカの母
早まったゼシカを追って、
村の少年ポルクと共に、
カインたちは村の東、リーザス像の塔に足を踏み入れた。
この塔の入り口は、
リーザスの村の者にしか開けられないのだと言う。
「嘘だと思うなら試してみろよ」
とポルクが言うので、
カインは塔の入り口の扉を押したり引いたりしてみた。
どんなに強く押し引きしても開かないその扉は、
実は上下に開くシャッター様の扉だったのだと、
ポルクが自慢げに言う。
「ほらな。開けられないだろ?」
スライド式のドアなのではないかというカインの予想よりも、
少々上手だったようである。
「あとは任せた!」
そう言い残して、
ポルクは村へと戻った。
例によってトロデ王とミーティア姫を残したまま、
カインとヤンガスは塔を登る。
最上階まで登ると、
両眼に美しい宝石がはめられたリーザスの像がたたずんでいた。
カインがその像に触れようとしたそんな折に、
後ろから、
「また現れたわね、盗賊!」
と、ドスの効いた女の声がした。
ゼシカだった。
「兄さんと同じ目に合わせてやる!」
カインを盗賊だと誤解するのは、
ポルク少年やマルク少年と同じ思考回路のようだった。
ゼシカは、カインに向かって、
炎の呪文を繰り出す。
「違う!私は盗賊じゃない!」
と即座に口にできるほど、
カインは饒舌ではない。
「あなたは盗賊ですか?」
と質問されれば、
「いいえ」
と答えるつもりでいたが、
質問されない以上、
答えも言えないほどの無口ぶりだ。
そんなカインに向けて、
ゼシカの呪文が乱発される。
が、一発も当たらない。
この世界には、
呪文を外す者など、まずいない。
強い弱いはともかく、
効く効かないはともかく、
100回呪文を唱えれば、
100回命中するのが、
普通の呪文の使い手である。
乱発して一発も命中させられないゼシカは、
腕の悪すぎる魔法使いと言えるだろう。
「待て!私だ!」
こう言ったのはカインではなく、
リーザス像だった。
ゼシカの乱発した呪文は、
カインには命中せず、
すべてリーザス像に当たっていたので、
カインは、
リーザス像が怒ってしまったのかと思った。
「像が怒ったぞう!」
カインは心で思って心で吹き出した。
そんな怒った像を見て、
「サーベルト兄さん?」
とゼシカがつぶやく。
ん?像と人間の兄妹だったのか?
と思ったカインの想像は、
どうやら間違っていて、
話しているのは、
像の中にわずかに残ったサーベルトの魂のかけら、
ということのようだった。
自分の死の間際に、
リーザス像が魂のかけらを預かってくれたのだと、
サーベルトは言った。
リーザス像に宿ったサーベルトの魂は、
「私を殺したのは、この方たちではない」
と、まずはカインたちを擁護した。
開口一番、
「熱いじゃないか!ゼシカ!」
と言わないあたり、
死して尚、人間ができている、
と、カインは内心思った。
サーベルトの話では、
真実はこういうことだった。
その事件日、
塔の扉が開いているのを不審に思って様子を見に来たサーベルトは、
このリーザス像の前で、
道化師と遭遇し、
そして殺害されてしまったのだと言った。
「それは間違いなくドルマゲスじゃ!」
塔の外で待っていたかと思っていたら、
トロデ王が突然会話に滑り込んで来た。
「おっさん、いつの間に!」
とヤンガスが驚くのも無理のないことだ。
ミーティアだけを残して来ているわけなので、
娘想いであるのかどうか、怪しくなるところだ。
「これでまたひとつ、ドルマゲスを追う理由が増えたということじゃ」
トロデ王は、いきなり来て、いきなり話をまとめた。
宴もたけなわとなったところで、
「それでは、最後となりますが」
という口ぶりで、
サーベルトはゼシカに語り掛けた。
「お前は自分の信じた道を進め」
意味深な言葉だった。
近い未来に、
ゼシカが大きな判断を迫られることを
予見しているようにも思える。
魂のかけらが、
サーベルトが生きている段階での思念を残しているものだとするならば、
予言者としか思えないほどの言葉である。
カインたちが村に戻ると、
翌日には、早くも予言が現実となっていた。
ゼシカが、
先祖の教えも家訓も守らず、
アルバート家との縁を切ってでも兄のカタキを討つと、
村を飛び出して行ってしまったのだ。
それが、『信じた道』ということなのだろう。
カインは、
村を出たゼシカを心配する。
カタキを討つなら、
ドルマゲスを追っているカインたちと行動を共にすればよいのに、
ひとりで猪突して行ってしまうとは。
世界一呪文の命中率が悪いのに、
この先、ひとりで旅ができるとは、
カインにはどうしても思えない。
ポルクとマルクに、
ゼシカがポルトリンクへ向かったと聞き、
カインたちは急いで追いかける。
今となっては、
知らない仲ではない。
カイン:レベル10、リーザスの村
プレイ時間:6時間33分
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目次
【1話:トラペッタ】
【3話:リーザス】
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