登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元盗賊。カインをアニキと呼ぶ
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王たちの呪いの主
マスター・ライラス……ドルマゲスの師。故人
ルイネロ……トラペッタの町の当たらない占い師。昔は高名だった
ユリマ……ルイネロの娘。父ルイネロを心配する
ザバン……不運な魚人
ユリマに頼まれて、
占い師ルイネロの水晶を探しに出た優男カイン。
トロデ王は、
ユリマが父想いであることに、
緑色の魔物顔をしわくちゃにして感動していたが、
しかし、
トロデ王が何か具体的な行動をするわけではない。
馬車の上から、カインたちに指示を送るだけである。
「ミーティアと同じ年のほどのユリマが父想いであること」
に感動していたトロデだが、
自分は馬と化したミーティアに馬車を引かせ、
ただそこに乗っているだけである。
カインは何も言わないが、
ヤンガスのほうは、やや不満顔。
元来の仏頂面をさらに膨らませている。
「ドルマゲスは下衆でげす」
などと言っていたヤンガスは、
「おっさんも下衆でげす」
と口を尖らせる。
しかし、
それをたしなめるのもまた王の務めと言うべきか。
「ルイネロのチカラが戻れば、ドルマゲスのことも占える」
一石二鳥だ、とトロデはヤンガスを諭した。
一連のやりとりを聞きながら、カインは、
「娘を大切にするのなら、ミーティアを馬車に乗せて、自分が馬車を引けばいいのに」
と思いもする。
そういう目でトロデを見てみると、
娘を大切にするというより、
娘が父親のために頑張っているのが好きだ、
という様子も垣間見える。
ミーティアもまた父親想いであることを
カインはよく知っている。
トロデ王も娘想いであるとは思うが、
娘のために何かをするような父親ではなさそうである。
カインたちは、
ユリマのお告げどおり、
滝の下の洞窟へとたどり着いた。
「わしは外で待っておるぞい」
馬車に乗ったまま言うトロデ王たちを残し、
ヤンガスと2人、カインは洞窟の奥へと進む。
途中、道を塞ぐおおきづちと出会う。
おおきづちは、
「通りたくば、俺を倒すんだな」
と太々しく言ったが、
カインが剣を構えると、
「そ、その勇気に免じて通してやる」
と、急に態度を変えた。
決して自分は弱いわけではないぞ、
と弁明するおおきづちを尻目に、
カインたちは洞窟の奥へと進んだ。
と、最終的に、
最下層の滝つぼの前で水晶玉を発見するに至る。
これを持ち帰ればミッションコンプリート。
そういう思いで、
カインは水晶玉に触れた。
すると突然、滝つぼから魚人が飛び出してきた。
魚人はザバンと名乗った。
「かれこれ10数年は待った」
と、おもむろに魚人は語った。
そして、
「お前がこの水晶の持ち主か」と凄む。
その質問に対し、
正直な優男カインの答えは「いいえ」である。
水晶の持ち主はルイネロだ……と思う。
……が、実は、ユリマに、
「洞窟に水晶玉があるというお告げが」
と聞いただけなので、
ルイネロのものかもしれないし、
全く別人のものかもしれない。
とりあえず、
カインのものでないことは確かだ。
しかし、
「持ち主以外に用はない」
とザバンに言われてしまうと、
「あ、じゃあやっぱり、はい」
と言い直すしかなくなる。
用はない、と言われてしまうと、
水晶玉を持ち帰れそうにない。
「はい」と言ったり「いいえ」と言ったり。
カインの話しぶりには要領を得ないところがあったが、
しかし、
とにかく持ち主を成敗したいという思いがあるザバンは、
「ならば許しておけぬ!」
とばりにカインに襲い掛かった。
そして簡単に敗れ去った。
ザバンの話を聞くと、
どうやら、
10数年前に何者かが滝つぼに向かって水晶玉を投げ捨て、
それがザバンの額に当たって怪我を負ったので、
持ち主が来たら説教をしてやる、と、
そう考えていたようだった。
しかし、戦っているうちに、
やはりカインは水晶玉の持ち主ではないと悟ったようで、
やや投げやりになってしまっていた。
なぜ悟ったか、というと、
ザバンの呪いの攻撃が、
カインには一切効果を発揮しなかったから、
だとザバンは言った。
ザバンの弁としては、
「お前は水晶玉の持ち主ではなく、トロデーンの兵士だな」
ということだった。
その話にカインは戸惑う。あまり理解ができない。
ザバンはこう言っている。
先日、呪いで茨に覆われてしまったトロデーン国から、
唯一呪いを受けずに生き残れた兵士がいた、と。
カインがその兵士であるならば、
ザバンの呪いを受け付けなかったことにも納得ができる、
ということだ。
ザバンの話を聞いたカインは、
いろいろと理解に苦しむ部分がある。
トロデーンの兵士であれば水晶の持ち主でない、
という理屈は、どう成り立つのだろう。
トロデーン兵であっても水晶玉を投げ入れることは可能だと思うが、
しかし、とりあえず、カインは投げ入れていない。
理屈はよくわからないが、
正解は正解だ。
それにしても、とカインは思う。
トロデ王とミーティアを除けば、
自分が唯一の生存者だったのに、
いったい誰が「唯一の生存者」のことを知っているのだろう。
そして、
洞窟の中で10数年も水晶玉の持ち主を待ち続けたザバンが、
なぜそのことを知っているのだろう。
カインの結論はこうだ。
『お魚ネットワークはすごいのだ』
しかし、
兎にも角にも水晶玉は手に入れた。
カインとヤンガスは、
トロデ王、ミーティア姫と合流して、
トラペッタへと戻った。
カインは、ユリマの依頼通り、
ルイネロに水晶玉を手渡す。
しかし、ルイネロは、
「お節介め!こんなものはまた捨ててやる!」
と激高した。
ルイネロの心境はどういうものなのか、
それがわからないカインには、
ルイネロの言動の理由がわからない。
しかし、
そこに割って入ったユリマの話を聞いて、
ルイネロのユリマのやりとりを聞いて、
カインにも理由がわかってきた。
若かりしルイネロは、
占いで何もかもを知ることができ、
占えないことなどないと有頂天になっていたという。
そんな思いから、あるとき、
親を探す幼いユリマのために、
親の行方を占ってみたところ、
ユリマの母親が死ぬという占い結果に辿り着いたのだ。
そして、居場所を探り当ててしまったのだ。
ルイネロは、
占いのせいでユリマの母親が死んでしまったと、
占いのせいでユリマを苦しめてしまったのだと、
激しく後悔した。
自分を責めた。
ただただ知りたいことを知れればよいという、
単純なものではなかったのだと、
思い知ったと言う。
真実は、思っているより残酷だ、と。
ルイネロは、それ以来、
水晶玉を捨てて、自らの高名を地に落とし、
そして、
親を失ったユリマを自分の子として育てて来た。
苦しみ苦しみの決断であり、
罪の意識を抱えたまま、
10数年の間、ユリマを育てて来たのだ。
ユリマに恨まれていると思いながら。
それでも、ユリマへの罪滅ぼしとして。
しかし、ユリマは言った。
「そんなことない!お父さんを恨んでなんてないよ!」
むしろ感謝しているのだ、とユリマが言うと、
ルイネロは黙ってうつむいてしまう。
そして小さい声を絞り出す。
「……知っていたのか」
幼かったユリマが、
すべてを覚えているとは、
ルイネロは思っていなかったし、
ただただ憎まれていることだろうと思い続けていた。
しかし、ユリマの話を聞き、
ありもしない確執の妄想を恥じた。
「見てみたい。お父さんの占い」
ユリマは言った。
敬愛する父ルイネロの本当のチカラを見てみたい、
ユリマの想いはそれだった。
しばらく黙っていたルイネロだったが、
やがて顔を上げて強く頷いた。
そして、
水晶玉を覗き込む。
「ふむ。道化師が南の関所を破って行ったようだ」
古の賢者の末裔、マスター・ライラスを手にかけたのは、
ライラスの弟子だったドルマゲス。
そして、関所を破った道化師もまたドルマゲス。
ルイネロの記憶と占い結果を総合すると、
そういうことだった。
「関所の先にはリーザスという村がある」
ルイネロのその言葉を聞き、
カインたちは、次に行くべき場所を知った。
関所の先のリーザス村。
そこにドルマゲスがいるかもしれない。
カイン:レベル6、トラペッタ
プレイ時間:3時間21分
【続きを読む】
【前に戻る】
【はじめから読む】
目次
【1話:トラペッタ】
【3話:リーザス】
![]() | ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君 6,458円 Amazon |