カインの冒険日記 -28ページ目

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元盗賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ

 

ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王たちの呪いの主

 

 

 

ポルトリンクは港町。
つい先日までは、
毎日、船で南の大陸と行き来することができた。
しかし、
ここ数日、
そう、サーベルトの死よりも後、
航行する船を巨大な魔物が、
襲い掛かるようになった。
以来、
ポルトリンクからは、
出航することが、できなくなっている。


ポルトリンクに向かう怪しい人物を見たとして、
リーザス村を飛び出したゼシカは、
ここポルトリンクにて、
ひとりで、
その巨大な魔物に立ち向かおうとしていた。
何故か。
それは、
海の上を歩いて南下する道化師の目撃証言があったから。
その道化師がドルマゲスであると直感したゼシカは、
それを追うべく出航をする目的で、
出航の妨げになる魔物を
ひとりで倒そうとしていたのだ。
世界一のノーコン魔法使いなのにも関わらず。

 

「急いでるんだから!」
ゼシカは、荒くれの船乗りに詰め寄った。
しかし、
荒くれのほうが、
ゼシカを諌めようとしている。
「海には危険な魔物がいるので」

ここポルトリンクは、
アルバート家の領地だった。
そのアルバート家の令嬢であるゼシカを
危険な目に合わせるわけにはいかないと、
海の荒くれは、
勇み出るゼシカを必死に止めようとしているのだ。

 

と、そこに都合よく、
優男と悪人顔がやって来た。
カインとヤンガスである。
それに気付いたゼシカは、
「リーザス村で待っててって言ったのに」
と、ふたりに言った。
「ちゃんと謝りたかったのに」
というのが、ゼシカの弁だったが、
それも方便だった。
謝りたいのなら、
いま誤れば良いだけの話だ。
だいいち、
今からドルマゲスを追って、
南の大陸に行こうとしているのだから、
リーザス村に戻る気など、
さらさらない。

 

しかし、ともあれ、
カインとヤンガスがやって来たのは、
ゼシカとしては好都合。
ゼシカは荒くれに言う。
「じゃあ、私が危険な目に合わなきゃいいんだから、この人たちが魔物を退治する分には構わないでしょ」
「ええ……まぁ……」
荒くれも口ごもる。
そういう問題でもないのだけど、
という顔が、
荒くれの仮面越しにも見えるようだったが、
それに構わずゼシカは、
何食わぬ顔で、
カインとヤンガスに魔物退治を押し付ける。
質問をしないのがゼシカ流だ。
質問をしてしまうと、
カインが『いいえ』などと言ってしまうかもしれない。
有無を言わさぬ話ぶりが、
ゼシカの猪突さを物語っている。
しかし、
「いいわね!」
と、決定事項のように言ったのを
カインが、質問だと思ってしまったようで、
ここぞとばかりに『いいえ』と言われてしまう。
しまった、
とゼシカは思った。

 

しかし、
『いいえ』と言われても、
それで諦めるゼシカではない。
「そんなこと言わずに、なっ?なっ?」
と弱気に言ったりもしない。
「ドルマゲスが南の大陸に渡ったから追わないといけないでしょ!」
猪突のゼシカは、
あくまで強気だ。
「あなたたちも追ってるんでしょ!」
目的が同じなら最初から合流すればよかった、
などとゼシカが思うことはない。
それはそれ、これはこれ。
サーベルトの言う、
『自分の信じた道』に従うと決めたのだ。
カインたちに有無を言わさないのも、
自分の信じた道なのだ。

 

カインはまた『いいえ』と言ったが、
「追わないといけないでしょ!」
と同じ会話でごり押しだ。
『はい』と言うまでテコでも動かないし、
コロでも運ばれない。
クレーンでも釣り上げられない。
やがてカインのほうが根負けし、
ゼシカは依頼を丸飲みさせることができた。

 

カインとヤンガスが船に乗って出航するのを
手を腰に当てて眺めるゼシカ。
船がしばらく進むと、
巨大なイカの魔物が、
カインたちに襲い掛かっている。
魔物は、
オセアーノンと名乗っているようだった。
「食っちまうぞ!」
というオセアーノンの声が、
港のゼシカにまで聞こえた。
オセアーノンは、
イカでありながら、
墨ではなく炎を吐いていた。
熱がっているカインたちが遠目に見える。
が、やがて、
ヤンガスの鎌がオセアーノンに刺さり、
オセアーノンが降参した形になった。
耳を澄ますと、
「お強いんですね、御見それしました」
とオセアーノンはゴマを摺っていた。
そして、
こんなことしたのも、
海を歩いて行った道化師のせいだ、
私は悪くない、
と言い訳をしていた。
睨まれたら、
意識が乗っ取られたのだと言う。
「あれ?ここはどこだ?私は何を?」
と言うのならわかるが、
操られたことを自分で弁解する者がいるとは、
ゼシカから見ても滑稽だった。

 

やがてカインとヤンガスを乗せた船が、
港に戻って来た。
少しは労ってみるか、
とゼシカは口を開く。
「思ったより強いじゃない。期待してなかったのに」
つい、本音が出てしまった。
呪文を命中させるのが苦手なだけでなく、
労うのも下手だった。

 

ともかくも、
カインたちが生きて帰って来たのだから、
「リーザスの塔で盗賊と間違えて襲い掛かってしまったことを謝りたい」
という約束を果たさなければならなくなった。
あまり謝りたくはないが仕方がない。
ゼシカは、
「すんませんした!」
と格闘家のあいさつのようなポーズで言った。
謝るのも下手なのだ。
「押忍!」
とも言おうと思ったが、
それはあまり謝罪と関係ない言葉であるので、
とりあえず言わなかった。
そんな適当な謝罪なら、
わざわざここまで待たせずに、
ポルトリンクで会った瞬間言えばいいのに、
とカインやヤンガスに言わせぬように、
「じゃあ、南の大陸に向かうわよ!」
とリーダー顔で仕切った。

 


次に向かうべきは、
南の大陸である。

 

 


カイン:レベル11、ポルトリンク
プレイ時間:7時間42分

 

 

 

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目次

1話:トラペッタ

2話:ルイネロの水晶

3話:リーザス

4話:リーザス像の塔

5話:港町ポルトリンク

 

 

 

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