ドラクエ8冒険日記(23) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元山賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
ククール……元マイエラ聖堂騎士団。キザ男
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ


オディロ……マイエラ修道院・元院長。故人
ルイネロ……トラペッタの占い師
ザバン……魚人。滝壺に投げ込まれた水晶玉に直撃し、根に持っている
ギャリング……ベルガラックカジノのオーナー。故人
チャゴス……サザンビーク王子
ラグサット……サザンビーク大臣の子。ゼシカのフィアンセ
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王に呪いをかけた道化師


 

 

 

太陽の鏡を手に入れ、
再び闇の遺跡にカインたちが舞い戻ったのは、
そこにドルマゲスが入ってから、
ずいぶんと時間が経過した後である。
鏡を手に入れるために、
サザンビークのチャゴス王子の、
世話を焼くのに相当な時間をかけたものだった。
しかし、
そんなカインたちよりもさらに要領が悪いのが、
ギャリングの部下たちである。
彼らは、
ギャリングがドルマゲスに殺害された当初より、
ドルマゲスの行方を追っていたにもかかわらず、
闇の遺跡に到着したのは、
カインたちよりも後であった。
そこで闇の結界に遮られ、
ドルマゲスを追えないことを知った後、
サザンビークに魔法の鏡を探しに行ったのだが、
彼らがサザンビークに到着したのは、
カインが鏡を手に入れた後のことである。
そして今、
カインが鏡のチカラで、
闇の結界を振り払ったのを見たギャリング部下のひとりが、
「これでドルマゲスを追える。サザンビークへ使いに出した部下を呼びに行くとするか」
と意気揚々と歩き出したが、
カインたちがドルマゲスと戦う間に戻って来れるとは、
到底考えられない。
素手で熊を倒したと噂されるギャリングは、
良い部下には恵まれていなかった様子である。



その頃ドルマゲスは、
闇の遺跡の奥の間で、
朽ち果てる体を癒そうとしているところだった。
トロデ―ン城に封印されていた杖を手に入れて以来、
その魔力を解き放てば強力な魔法を発動することができるのだが、
その代償はあまりに大きなもので、
心身ともに深刻なダメージを受ける。
身体はその都度朽ちていき、
時折り精神もあやふやになるのである。
たとえばマイエラ修道院では、
精神があやふやになったおかげで、
寝ているオディロ院長を殺し損ね、
2度目に襲撃したときには、
危うくオディロ院長ではなくトロデ王を殺すところであった。
ドルマゲスは、
杖の指示に従って殺害する人物を決め、
犠牲者の血を杖に吸わせることを目的として行動していたのだが、
誰の血でもよいということではない。
特定の人物の血であることが重要であり、
それ以外の血を吸わせると、
どんな不具合が生じるとも想像がつかないのである。
それなのに、
トロデ王に向けて杖を投げつけてしまったのは、
ドルマゲスの最大の失態であったわけだが、
結果的には、
オディロ院長のほうがトロデ王の前に割り込んで、
自発的に杖に刺されてくれたおかげで、
不具合は未然に防がれた。
これはドルマゲスの功績と言うよりは、
オディロ院長の協力あってのことである。
このオディロ院長の、
敵であるはずのドルマゲスに対する予定調和のような行動もまた、
杖の魔力による精神の混乱が原因であったわけだが、
そんな杖を持つドルマゲスも今、
遺跡に乗り込んできたカインたちに追い詰められていた。
「ここで会ったが100年目!覚悟するでがすよ!」
「てめえは袋のネズミ同然だぜ!」
「兄さんのカタキ!」
ヤンガスとククールとゼシカが息を荒くするのを見ながら、
「おやおや。こんなところまで追ってくる者がいようとは」
とドルマゲスはため息をつく。
「悲しい。悲しいなぁ」
そんな口癖のようなセリフを吐き出し、
「だって、せっかくこんな所まで来たというのに、その願いも叶わぬまま、みんなこの私に殺されてしまうのですから!」
と言ってはみたものの、
そう言った自分がやられてしまえば、
もっと悲しいのだと、直後にドルマゲスは知った。


いきなり3人に分身して襲い掛かった道化師を
カインたちは苦労しながらも蹴散らした。
するとドルマゲスは、
悲しそうな悔しそうな顔をして、
「もし私が身体を癒している最中でなければ、もう少し楽に殺して差し上げたのに」
と負け惜しみのようなことを言う。
もっとも、
奥の手を持っていたという点では、
単なる負け惜しみというわけでもなさそうだったのだが、
残念ながらその奥の手も、
カインには通じない手であった。
「これでも食らえ!未来永劫、イバラの中で悶え苦しむがいい!」
とカインたちに杖を向けるが、
トロデ―ンを沈めたイバラの呪いをもってしても、
カインの体に触れることは叶わない。
ルイネロの水晶を取り戻す際に、
魚人ザバンにも言われたことであるが、
カインは呪いを受け付けない体質であるのだ。
その体質に関しては、
明確な理由があるのだが、
その理由はカイン本人さえも、
今は知らないことである。

ともかく、
絶対の自信を持っていた奥の手が、
効かなかったときのドルマゲスは、
悲しいどころの表情ではなく、
驚愕の顔つきをしていた。
「なぜだ!?なぜ効かない!」
と目を見開きつつも、
全力を尽くさなければならないと悟ったようで、
その身を道化師の姿から変形させた。
「この虫けらどもめ!」
と襲い掛かってくるドルマゲスは、
怪鳥のような足と翼を持つ巨猿の姿をしている。
もはや人間の姿とは程遠い、巨大化したドルマゲスは、
その体つきに相応しく、
炎を吐いてきた。
しかし、
それを見越したカインは、
あらかじめ錬金釜でフバフバチーズを合成している。
トーポが食べれば、
炎や吹雪を和らげる息を吹きかけてくれるという、
不思議なチーズである。
カインはトーポに、
フバフバチーズを与えて炎から身を守り、
さらには激辛チーズを与えて、
逆にトーポの吹き出す炎でドルマゲスを攻撃した。
袋に入っているネズミであるトーポが、
ここまでしているのだから、
それと『同然』とククールに言われたドルマゲスも黙ってはいない。
やられっぱなしではいられない、と、
凍てつく波動でフバフバチーズをかき消してくる。
しかし、
それさえも予想して、
フバフバチーズをもうひとつ持っていたカインのほうが、
1枚上手だったと言ってよかったはずだった。
ところが実際は、
2つのチーズで満腹になったトーポが、
3つ目のチーズを口に入れることはなかった。
所詮は袋のネズミということなのだろうか。
ドルマゲスとの読み合いを制したカインは、
トーポの腹具合に関しては全く読めずにいたのである。
繰り広げたのは、机上の心理戦であり、
実戦では、全く思い通りにならないという、
最たる例となった。

そんなわけで、
読みはするものの、実践はできない戦術戦は、
ドロドロの泥仕合となり、
激しい消耗戦の末、
軍配はカインたちに上がった。
エルフの飲み薬を2つほど準備していたカインが、
消耗戦を制するのは、
あるいは当然だったことだろう。
消耗戦もまた、
カインの読み通りであったのだから。
結局、
何かの計画を遂行している様子であったドルマゲスは、
それを完遂することもなく、
何の計画があったのかを明らかにすることもなく、
「こんなところで朽ち果てるわけには」
と絶望の表情のまま石と化し、
砕け散って砂となった。
後に残ったのは、
杖だけであった。


「やったでがすよ、アニキ!」
とヤンガスが悪人顔をほころばせる。
これでトロデ王とミーティア姫の呪いが解ける、
とヤンガスは喜び、
するとチャゴス王子との婚儀を考えなければならなくなる点で、
カインは嬉しさ半分、苦悩半分という複雑な心境にもなる。
しかし、
ちょうどそんな折に、
「おーい」
とタイミングよく遺跡に降りてきたトロデ王を見て、
事はそう単純ではないことをカインは知ることになる。
トロデ王の姿は、
依然、魔物の姿のままであったのだ。
「あれれ?おっさん、呪いが解けたはずじゃ!?」
ヤンガスに、ドルマゲスを倒したことを聞き、
「バカな!ならばなぜわしの呪いが解けん!?」
と、トロデは腕を組む。
ドルマゲスと戦うつもりであったわけでもなく、
ドルマゲスが斃れたと知ったわけでもないトロデ王が、
そもそも、なぜこのタイミングで、
ミーティア姫を置いてひとりで遺跡に降りてきたのか、
それを説明する言葉があるとすれば、
杖の魔力としか言いようがなかっただろう。
とにかく、
近くにいる者に、
不可解な言動をさせてしまう、
思考の妨害電波を発生させるのである。
そのせいでもあるのだろう、
これほどの事件を起こしてきた、
諸悪の根源とも言えるドルマゲスの杖を、
「そうじゃった。杖はどうなった?」
と何の疑惑も抱かずにトロデ王は尋ね、
「杖って、これのことかな?」
とゼシカが無防備かつ無造作に、
その諸悪の杖を拾い上げてしまったのである。


その日、カインたちは、
サザンビークの宿で一夜を明かしたが、
翌朝には、ゼシカの姿がなかった。
早朝に、宿を抜け出したということだった。
むさい男ばかりのパーティーが、
ついに嫌になったのかとヤンガスが言い、
「オレがいる限り、それはない」
とククールが謎の自信を見せる。
しかし、
真の原因が、杖の魔力にあったことは、
もはや明白だと言ってよかった。
唯一、そうでない可能性があるとすれば、
宿屋から見上げた丘の上の邸宅の御曹司との婚約から、
逃げ出したという可能性だけであるだろう。



カイン:レベル31、サザンビーク
プレイ時間:45時間26分


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