ドラクエ8冒険日記(19) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元山賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
ククール……元マイエラ聖堂騎士団。キザ男
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ


ラパン……キラーパンサーの父
カラッチ……ラパンの使用人
バウムレン……道に迷ったキラーパンサー
モリー……バトルロードオーナー
マルチェロ……聖堂騎士団長兼マイエラ修道院院長
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王に呪いをかけた道化師

 

 

 

闇の遺跡に入るための魔法の鏡の件を別としても、
トロデ王たちは、
急ぎサザンビークに向かい、
トロデ―ンの現状と自分たちの無事を伝える義務がある。
そうしなければ、
ミーティア姫は死んでしまったと考えたサザンビーク王が、
王子に、別の結婚相手を探してしまう可能性があるからだ。
これを婚約破棄と呼ぶことはできないだろう。
そう呼んでしまえば、
婚約者は、死者を永遠に待ち続けねばならなくなる。
婚約者の片方が死んでしまえば、
自動的に婚約解消されるのは、仕方のないことであるし、
トロデ―ンに降りかかった災厄を思えば、
サザンビーク王が、
ミーティア姫が死去したと考えたとしても、
至極理に適った判断だと言えるだろう。
だいいち、
トロデ―ンとサザンビークは別の国であるのだから、
別々の民族性があり、別々の法に則っている。
トロデ―ン国の婚約破棄が、

サザンビーク国の婚約破棄になるとは限らないし、
その法を司るのもまたトロデ王でありサザンビーク王である。
つまり、サザンビーク王の判断は、
サザンビーク国の法律と同意義であり、
サザンビーク王が首を縦に振るか横に振るかで、
ミーティア姫の婚約はあったことにもなかったことにもできるのである。
これはもちろん、
結婚前にはトロデ王にも同じ権限があるわけだが、
ひとたび結婚が成立してしまえば、
ミーティアはサザンビーク国の籍を持つことになり、
トロデ王の権限は全く及ばなくなるという事情である。

結婚後のことは、ひとまずさておき、
当面重要なのは、
婚約は継続しているという意思表示であるのだが、
この件にトロデ王は後ろ向きであった。
というのも、
魔物の姿や、馬の姿でサザンビーク王に会ってしまえば、
それこそ婚約解消されてしまうのではないかという、
不安に苛まれていたからである。
婚約の継続を申し出たことが原因で、
婚約を解消されるようなことがあれば、
目も当てられない、というわけだ。
そのような心境から、
トロデ王はサザンビークに行くことをためらい、
「魔法の鏡のことは、わしに期待せぬよう。お前たちだけでなんとかするのじゃ」
と、やや投げやりな発言をしていた。



そういう流れがあり、
急いで行かねばならないにもかかわらず、
誰もサザンビークに行くことに乗り気になれず、
うろうろと手をこまねいているいるうちに、
カインたちは、ラパンハウスという屋敷に辿り着いた。
ベルガラックからすぐ近くの丘の上に、
その屋敷はあった。
屋敷の主、ラパンは忙しい身であるからと、
まずは使用人のカラッチが、
「んなーっ!よく来ただー!」
とカインたちを出迎えた。
「ここはキラーパンサーの父、ラパン様のお屋敷だなやー!」
とカラッチに言われるまでもなく、
キラーパンサーを愛して止まぬのが一目瞭然であるような、
屋敷の形をしている。
ラパンハウスは、
キラーパンサーの形をした建物なのである。

カラッチは、
やって来た旅人たちがが、
主人ラパンに会わせるだけの人物かどうかをチェックするために、
3つの問いをカインに与えた。
「最初の問ーい!」
とカラッチは、
スーパーハイテンションよりは1段階低いほどのテンションで、
カインに出題する。
「捨てられた子猫が雨に濡れている。猫嫌いの家族を持つあなたは、この状況でどうする?」
というのが、カラッチの問いであったが、
カインは、真剣に考え、
「雨に濡れないところに移動させてあげる」
と答えた。
子猫を助けてあげたい気持ちはあるが、
家族の気持ちを無視することはできない。
カラッチは、その答えに、
「んなーっ!」
と反応し、第2問を出題した。
「王様と狩りに出かけたあなた。狩りが不調な中、ワナにかかったトラを発見した。どうする?」
カインはまた真剣に考え、
「トラを生かしたまま王様に見せる」
と答えた。
一家臣の身として、
王に先んじて判断をすることはできない。
現状を速やかに報告し、
聡明なる王の判断を仰ぐ、
というのが、カインの忠誠のあり方である。
カラッチは引き続き、
第3問を出題した。
「旅の途中でキラーパンサーに襲われて撃退。仲間になりたそうな目をするパンサーを、あなたはどうする?」
これには、
「仲間にする」
と即答だった。
仲間になりたそうな者を拒む理由は、
カインは持ち合わせてはいない。
たとえそれが魔物であったとしても、である。
マルチェロが仲間になりたいと言えばカインは頷くであろうし、
ドルマゲスが仲間になりたいと言えば一考はするであろう。
そんな3問に対するカインの回答に、
カラッチは不満顔だった。
「残念だけんど、おめさという人間が信用できんかっただよ」
と言われたときには、
カインのほうが、
「んなーっ!」
と言いたくなったほどである。

「もう1回考えてみるだか?」
とカラッチに言われたカインは、
今度は本心とは違う答えを言った。
同じ問いに何度も答えさせては、
主人に会わせるかどうかの選定として不適切のようにも思えるが、
ラパンに会ってみたいとカインも思ったので、
これも方便だろうと納得することにした。
リトライの回答として、
カインはまず、
「捨てられた子猫など見なかったフリをする」
と答えた。
しかし、
本当にカインがそう考えていたとしたら、
今頃ヤンガスは生きてはいなかっただろう。
トロデ―ンの東の橋の上ではじめてヤンガスと会ったとき、
橋から落ちそうなヤンガスは、
さながら捨てられた子猫のような存在であった。
「捨て置け」
と言わんばかりのトロデ王の言を聞かず、
カインはヤンガスを助けたので、
今のヤンガスがあるわけだが、
この状況を今の問いに当てはめるならば、
「家族を説得して子猫を連れて帰る」
が適切であったかもしれない。
2つ目の問いには、
「トラを殺してから王様に見せる」
と答えたが、
これもまた本心ではない。
橋げたにぶら下がるヤンガスは、
さながらワナにかかったトラのようでもあったが、
実際、カインは、
主君の反対を押し切ってヤンガスを助けている。
であるので、
深層心理では、
「ワナにかかったトラを逃がす」
と考えていたのかもしれない。
最後の問いには、
「パンサーにトドメを刺す」
と答えたが、
これもまた心情とは真逆であった。
あのときもし撃退したヤンガスにトドメを刺していたら、
というのは、もはや考える必要もないことである。
この答えに、カラッチは、
「良くも悪くも正直者」
と言い、カインをラパンに目通りさせたのだが、
これは両者の方便によって成り立った、
高度な駆け引きでもあった。
カインからすれば、
正直でもなんでもなく、
全く心にもない偽りの回答を述べていた。
ラパンに会いたいがゆえである。
一方、カラッチにもそれはわかっている。
ラパンに会いたいがゆえ、
先ほどとは全く別の答えをするカインを見て、
仮にここで不合格にしたとしても、
カインが再度挑戦してくることはわかり切っていたし、
そうなると、
カインが全問正解を出すまで、
カラッチはカインに付き合わねばならないことになってしまう。
何度も挑戦すれば、
いずれ全問正解できるのだと思えば、
挑戦の意志が見えた瞬間に全問正解が確約されたことにもなる。
それがわかれば、
実際に全問正解まで待つことなど時間の無駄と言える。
いずれ来る合格の瞬間を前倒しさせるのが、
カラッチの裁量というものであった。



カインたちが、
ラパンハウスの中に入ったとき、
カラッチの言うとおり、
キラーパンサーの父、ラパンは、
忙しそうに書類に筆を走らせていた。
キラーパンサーの父と呼ばれてはいるが、
ラパンはキラーパンサーではなく、人間である。
カインたちがやって来たのに気付いたラパンは、
「しばし待たれよ」
と言ってから5枚ほどの便せんに筆を滑らせ、
文をしたためてから、
「待たせたな」
と振り向いた。
カインたちがそこでラパンに頼みごとをされたのも、
あるいは当然の流れであったのかもしれない。
ラパンから見れば、
わざわざ頼まれごとをされるために、
カインたちがやってきたようにすら思えたであろう。
カインにしても、
目的があったというよりは、
サザンビークに行く気がしない、
という理由でやって来ていたのだから、
頼みごとを断る名目もないのだ。
ラパンは、
「わしの友が、道に迷っている」
と言う。
自分で行きたいところではあるが、
多忙ゆえ手が離せず、
代わりに、迷った友を導いてほしい、
とカインに頼んだ。
「賢いやつゆえ、これを見せればすぐに理解するであろう」
とラパンは、
『深き眠りの粉』をカインに託した。

ベルガラック地方には4体のキラーパンサー像があり、
その4体の像の視線の交点に、
明け方にしか見えない木が生えているという。
そこに友がいる、とラパンは言った。
ラパンハウスでキラーパンサーを1匹借りたカインたちは、
その背に乗って、目的地を探して一夜を明かし、
やがて昼間には何もなかったところに、
大樹が茂っているのを見つけるに至った。
そして、
その前をうろうろとする青いキラーパンサーの姿。
青いキラーパンサーは人間の言葉を使い、
バウムレンと名乗った。
ラパンの言う友とは、
人間ではなくキラーパンサーであったのだ。
バウムレンは、
ラパンの命で遣いに出たものの、
行く道がわからなくなってしまった、と言った。
「旅人に聞くのもおかしな話だが、お前は知らぬか。わしがどこへ行くはずだったのか」
その答えをカインは知らなかったが、
しかし、ラパンから預かったものはある。
『深き眠りの粉』である。
カインはバウムレンにそれを見せた。
「なんと。それをラパン様が?にわかには信じられぬが」
カインには何のことだかわからなかったが、
賢いとラパンが言うだけあって、
バウムレンはそれだけで全てを悟ったようであった。
「どうりで同じところをぐるぐると回って、どこにも辿り着けなかったわけだ」
と納得したバウムレンは、
「旅人よ。その粉をわしの周りにまいてくれぬか」
とカインに頼む。
カインがそのとおりにすると、
バウムレンは心底満足したような表情で、
「ラパン様に伝えてくれ。このバウムレン、ラパン様に会えたというそれだけで、まこと幸福な人生であった、とな」
と言い残し、
そして消えて行った。
『深き眠りの粉』が、
永遠の安息をもたらす粉であることにカインが気付いたのは、
このときであった。
バウムレンは、
永遠の眠りについたのである。



「どうやら、わしの古き友を無事に導いてくれたようじゃな」
カインたちが戻ると、
何も言う前からラパンは察したようであった。
明け方にしか見えない大樹は、
太古より『命を司る木』と呼ばれていた。
そして、その木には、
自分が死んだことに気付かぬ者たちが、
道に迷って辿り着いてしまうことがあった。
そのうちの1匹が、バウムレンであったのだ。
バウムレンは、
ラパンが最初に心を許し合ったキラーパンサーで、
以降、バウムレンあってこそラパンあり、
という関係でもあった。
バウムレンの死後、
ラパンは、キラーパンサー友の会を発起し、
会長としての任務を全うしようと忙しい日々を送っている。
友であるバウムレンが道に迷っていると知っても、
それを助けに行けなかったのは、
バウムレンとの友情の産物とも言えるキラーパンサー友の会の、
仕事を疎かにはできなかったからであったのだ。
そんなラパンとバウムレンの永劫の友情に、
一役買ったのが、この度のカインである。
ラパンはカインの功績に、
「この鈴を授けよう。いつでもキラーパンサーが駆けつけてくれる」
と報いることにした。
「鈴の名前は何と?」
とカインが訊きたそうなのにラパンは気付いたようだった。
「そうじゃな。今より『バウムレンの鈴』と名付けよう。わしとやつの友情の証じゃ」
この瞬間をもって、
カインはキラーパンサー友の会の会員となった。
「いつの日も心にパンサーを!」
というのを毎日唱えるのが会員規則であるらしいが、
無口なカインには、
会員規則を守ることが、
今までのどの仕事よりも困難でありそうである。



さて、
そうこうしている間に、
カインのモンスターチーム『怪々カイン院』に、
新メンバーが集まってきていた。
野生のヤリ名人、オークス。
魔鳥ウコッケ、ウコッケ。
秘境の怪力ザル、コンガ。
この3匹が、『怪々カイン院』のニューカマーである。
カインは早速モリーのバトルロードへと飛んだ。
彼らは、
さまよう鎧、プチアーノン、スライムで構成された、

前のチームよりも格段に強く、
スライミーズ、人面ブラザーズ、ガッツガッツ軍団を即座に切り捨て、
あっという間にランクGを制覇してしまった。
景品の力の指輪を授与されるカインを見て、
「すばらしかったぞ、ボーイ」
とモリーも満足そうな表情を浮かべ、
3匹のチームに加え、
3匹の補欠を保有することを認められた。

新生『怪々カイン院』の勢いは凄まじく、
その直後にランクFに挑戦し、
海のオールスターズ、リンリンデンデン団、もうかり真っ赤隊を

あっさりと制し、
それを見たモリーはまた喜んだ。
「ボーイだけ特別に、自分のチームと戦える権利を与えよう」
と言われたカインは、
すぐに『怪々カイン院』のメンバーと、
戦ってみることにした。
カイン側のメンバーはもちろん、
カイン、ヤンガス、ゼシカ、ククールのことであり、
こちらにもチーム名を付けるとすれば、
『カインドネス』といったところだろう。
『怪々カイン院』vs『カインドネス』というのは、
他のモンスターオーナーには許されていない、
特例のエキシビジョンマッチであるので、
バトルロードの観客たちも大いに盛り上がる戦いとなった。
が、快進撃を続ける『怪々カイン院』も、
オーナーカインの本気にかかってしまうとイチコロであり、
テンションを貯めた後のライデインにより、
3匹まとめて感電死することになった。
「ボーイは、自分のチームが相手でも容赦がないな」
とモリーは嬉しそうに言い、
「モンスターたちは、わしが生き返らせておこう」
と、感電死体にまた息を吹き込むのだった。

主君であるトロデ王が人遣いが荒いせいか、
カインもまた、なかなかに魔物遣いが荒く、
たった今生き返ったばかりの魔物たちに、
早くもランクEの出場を命じる。
もっとも、
魔物たちもこれに奮起し、
地獄のプリズナー、デビル核家族、ウルトラダンサーズを退け、
オーナーカインにこそ敗れたものの、
本戦では破竹の9連勝を飾り、
カインへの忠誠心を存分に見せつけた。
強い者に忠誠を誓うのは、
魔物の世界では当然のルールであった。
このランク制覇によって、
理性のリングをカインは授受し、
モリーからの副賞として、
チーム呼びを教授されるに至る。
バトルロード以外の戦闘中にも、
『怪々カイン院』を出動させることができるようになったわけである。

ところで、
ランクFの景品は、バニースーツであったのだが、
これはトロデ王が前々から欲しがっていたものでもあった。
「わしらに必要なのは、バニースーツじゃ」
と何度もトロデ王は言っていたが、
それが実際手に入り、
うさ耳バンド、網タイツとコーディネートさせたゼシカを見て、
「ゼシカから目が離せんわい!」
と興奮しきりである。
「わしらはさしずめ、バニーのしもべといったところか……うしし」
と魔物顔でニヤけるトロデ王の頭の中には、
サザンビークのことはもはや残っていないようであった。



カイン:レベル27、ベルガラック
プレイ時間:35時間24分

 

 

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