ドラクエ8冒険日記(17) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元山賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
ククール……元マイエラ聖堂騎士団。キザ男
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ



イシュマウリ……月世界の住人
ルイネロ……高名な占い師
ユリマ……ルイネロの娘
パヴァン……アスカンタ王
シセル……アスカンタ王妃、故人
メダル王女……メダル王家の姫
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王に呪いをかけた道化師

 

 

 

 

ドルマゲスを追うために、
海を渡るために、
古代船を手に入れるために、
イシュマウリに大海の記憶を呼び覚ましてもらうために、
月影のハープを探しに行くカインたち。
イシュマウリが言うには、
ハープは、
これまでにカインたちが知り合った誰かが持っている、
ということである。

そうは言っても、
カインたちも、
ずいぶんと長く冒険をしていて、
過去に知り合った人々の数は、
それなりに多い。
いったい誰が、
月影のハープを持っているのだろうか。
と、
そういう悩みをカインが持つことはなかった。
こういうとき、
誰に尋ねればよいのかがハッキリしていたからである。
カインたちは、
高名な占い師を知っている。


カインたちが訪ねて来ることは、
トラペッタの占い師ルイネロには、
予定通りのことであった。
水晶玉に、
そう出ていたからだ。
かつて自分の占いによって娘を悲しませたと思い込んだルイネロは、
商売道具の水晶玉を捨てて、占いから遠ざかろうとしたのだが、
当の娘のユリマと、カインたちの協力のおかげで、
家族のわだかまりから解放され、
そして占い師としての名声もまた取り戻していた。
一方で、
過去の経験から、
占いが当たればそれでよい、
という考えからも脱却していた。
最近では、
占ってもらおうとわざわざ遠くからやって来ていた富豪夫妻の、
依頼をなかなか引き受けずにいたりと、
ルイネロなりの美学を貫くようになってもいた。
この夫妻は、
大切な指輪を失くしたので、占いで探してほしいと、
ルイネロに頼みに来ていた。
しかし、
妻はそう言うが、
夫のほうは、妻には言えぬがそうは思っていなかった。
というのも、
指輪を失くしたのは夫自身であったのだ。
夫は、
あるときアスカンタへと赴き、
そこで妻の指輪を失くしてしまったのであるが、
そのこと自体を妻には伏せていたので、
妻のほうは、夫が失くしたとも知らず、
自宅に泥棒でも入ったのかと、漠然と想像していた。
夫は、
失くしたことまではわかるが、
どこで失くしたのかまではわからない。
わかっていれば、
ルイネロのところなどには来ずに、
自分で探しに行っていたことだろう。
そういう夫妻の事情を
ルイネロは、顔を見るなり察してしまった。
指輪の在りかを占うのは容易いことだが、
しかし、在りかを説明する過程で、
夫の罪を暴かなければならない。
しかし、
それは暴かれたくないという夫の心境は、
占い師でなくともわかってしまうような青ざめた顔を夫はしている。
さらに言うなれば、
ルイネロが高名な占い師であることを夫妻はもちろん知っていたが、
少し前までルイネロがやさぐれて占いが当たらなくなっていたことも、
夫のほうは知っていた。
であるので、
占いはするが、在りかはわからない、
という結果こそが、夫の求めるものであった。
「世界一の占い師がわからないんだから、もう仕方がないじゃないか」
と妻に言うために、
夫は今ルイネロに占いを依頼していたのである。
指輪はまた買えばいいが、
自分の罪は伏せたままでありたい、
と夫は考えていた。
しかし、そんな夫の心境さえも、
ルイネロの水晶玉には映っている。
この状況を解決するのに、
指輪の在りかを占うことは、
あまり意味を為さない、
と、そう考えたルイネロは、
依頼を引き受けない代わりに、
夫に、
「奥さんに正直に言うことだ」
とアドバイスを告げた。
その結果、
夫婦で大喧嘩になってしまったと後に聞いたが、
指輪の在りかを占うよりも良い結果であっただろうと、
今のルイネロは思っていた。
そんなルイネロだったので、
カインが来ることもわかっていれば、
来た目的もわかっていた。
カインが何も言う前から、
「わかっておる。何も言うな」
と水晶玉を覗き込み、
「城と、若い王が見える。晴れやかな笑顔を浮かべた王じゃ」
と告げた。
夫妻の指輪の在りかと同じ場所であることまで、
ルイネロにはわかったのだが、
それをカインに言う必要もないことであった。
もっとも、
その指輪もまた、
今となってはカインの道具袋の中にあったのだが。


城と王、と言われれば、
カインはトロデ―ンとトロデ王を想像したものだが、
若い、と言われれば、トロデ王のことではなさそうである。
晴れやかな笑顔の若い王は、
つい先日まで暗くすすり泣くばかりだったパヴァン王のことだろう。
そう考えたカインたちが、
アスカンタを訪れると、
パヴァン王は笑顔で迎えてくれた。
さすがルイネロ、と言うべきか、
さすがイシュマウリ、と言うべきか、
2人の予想はそれぞれに正しく、
月影のハープは、ここアスカンタの秘宝であると、
パヴァン王は説明した。
しかし、
そうであるならば、
イシュマウリはアスカンタに来たことがあるのだから、
「君たちが過去に会った誰かが」
などと言わずに、
「私も行ったことがある。アスカンタにハープはある」
と、即座に教えてくれればよさそうなものだと、
カインは思わなくもない。
過去にアスカンタ城の記憶に触れたイシュマウリならば、
そのくらいはわかってよさそうなものである。
なんだか試された気分がするカインだった。

さて、
ハープがアスカンタの宝であることはわかったが、
パヴァン王が、
「君たちの頼みだ。喜んで差し上げよう」
と宝物庫へ赴くと、
そこにあるべき宝はすでになく、
代わりに、壁に大きな穴が開いている。
事情がわからないカインが見ても、
盗人に入られたことがすぐにわかる様子である。
「すぐにハープを取り返しに向かわせます!」
とパヴァン王は急いで兵を集めたが、
しかし攻め入る算段がなかなか立たないようだった。
ある兵士は、
「急いで追わなければ、盗賊が逃げてしまう!」
と焦るが、別の兵士は、
「調査不足は命取りだ。十分な情報が必要」
と慎重論を唱える。
また別の兵士が、
「兵士の数が足りない。国民に志願兵を募集せねば!」
と増兵を提案すれば、さらに別の兵士は、
「国宝が奪われたなどと知れると国民が不安に思ってしまう」
と隠密行動を主張する。
話は堂々巡りで、
結論が出る気配もない。
「危険なので皆さんはこの先には行かないでください!我々が必ず秘宝は取り戻します!」
とパヴァン王は言うが、
実際のところ、
あまり信用するに値しない言葉のように、カインたちには思われた。
結局、
カインたちが一番信用できると思える兵士の発言は、
「この国の会議は時間がかかります。待っているより、行動したほうが早いですよ」
というものであり、
会議の結論を待つまでもなく、
カインたちは、
宝物庫の穴の中を進み、
自分たちの手で盗賊を捕まえることにした。
国民や故シセル王妃は、
パヴァン王を聡明だと言うが、
カインたちには信じ難いものがある。
こうなってくると、
パヴァン王が聡明だと言う故シセル王妃の才覚もまた、
今となっては怪しいものである、
とカインたちには思えてくる。
たとえばトロデ王は、
聡明であるとはあまり見えないものの、
多くの場面で決断は早い。
その判断ひとつで国が栄えも滅びもするし、
ましてトロデ―ンは滅び去った国であるのだから、
トロデ王の判断が正しかったと言ってしまえば、
トロデ―ン国民に対して申し訳が立たない部分はある。
しかし、
判断の早さに王制の利点がある以上、
判断が遅いアスカンタの王制には、
王制たる利点がないと言える。
そんな王には権限を持たせずに、
政治に関しては議会制にしておけば、
先日のような、
王妃死去によって2年間も喪に服すよう強要するような悪政とは、
無縁でいられたはずである。


カインたちは、
宝物庫の穴を進み、盗人を探す。
穴は相当な長さがあり、
カインたちがその穴を抜けたときには、
アスカンタ城から山ひとつを越えた場所に辿り着いていた。
要は、
犯人は、山ひとつ分のトンネルを掘って、
アスカンタ城に侵入したということである。
とても人間業ではないとカインたちはこのとき思ったが、
それもそのはず、
犯人は人間ではなくモグラであったのだ。
何年も休まず、
城の地下まで穴を掘り続けたのは、
巨大モグラのドンモグーラであった。

自分たちの巣の奥で、盗んだハープを手に、
「頑張った甲斐があったモグ!」
とドンモグーラは気を良くしていた。
ドンモグーラは、
モグラの子分たちから、
基本的に好かれている頭領であったが、
今このときは、子分たちを悩ませる存在になっていた。
月影のハープをかき鳴らし、
ドンモグーラは子分たちに歌って聞かせるのだが、
歌声のひどさに子分たちは目を回していた。
そんな折だったので、
カインたちが自分たちの巣に侵入してきたときも、
「頼む!ボスからあのハープを取り上げてくれ!」
と願い出てしまう子分が続出したほどである。
いきなり現れたカインに対して、
気分が乗って気が大きくなったドンモグーラは、
「お前も聞きたいモグ?」
と観客に引き入れようとしていた。
一方のカインのほうも、
そう言われて剣を向けられるような無粋人ではなかったので、
ひとまず興味深げに頷いたわけだが、
その選択に、
カイン自身のみならず、カイン一味のみならず、
モグラの子分たちもみな悲鳴を上げることになる。
最低最悪のリサイタルを終えて、
ただひとり満足気な表情をするドンモグーラは、
「もっと聞きたいモグ?」
とカインにアンコールをせがむ。
モグラの子分たちは、
さすがにカインたちが拒むなり、
強硬手段に出るなりするだろうと期待したが、
なんと恐ろしいことに、
優男のカインは、
さらに2曲もリクエストをしてしまったのである。
2曲を歌い終えたとき、
ドンモグーラは嬉しそうであったが、
騒音被害に苦しんだモグラの子分たちの殺意は、
完全にカインのほうを向いていた。
であったので、
カインが4度目にはリクエストをせず、
ハープを取り返そうとしたとき、
本来なら、
望ましい結果に繋がりそうなカインの行動に協力すべき立場の子分たちは、
「ハープを返せとは、許せないモグ!」
と激高したドンモグーラのほうについて、
カインたちにスコップを向けるのだった。
と、
そんな状況であったのだが、
結局ドンモグーラの『芸術スペシャル』という名の歌声に、
カインたちよりもむしろ子分たちのほうが大きな被害を受け、
目を回して混乱した子分たちは同士討ちをはじめ、
結果的に大小のモグラたちは自滅した形となった。
「もぐふっ!」
とドンモグーラが倒れると同時に、
子分たちは冷静になったようで、
「これでボスの歌を聞かずに済みます、ありがとう」
と感謝の言葉を述べ、
「頼む。ボスにトドメは刺さないでくれ」
と頭領を庇う、情に厚い部分も見せた。


というように、紆余曲折あり、
他の宝はともかく、
カインたちは、
ひとまず月影のハープだけは取り戻すことに成功したわけだが、
それを持ってアスカンタに戻ったとき、
パヴァン王たちの作戦会議はまだ続いていた。
「急がないと!」
「いや慎重に!」
と同じような言葉が繰り返される会議室で、
「今から盗人の討伐に向かいますから!」
と今さら言うパヴァン王にも呆れさせられたが、
カインたちの成功を予見していたただひとりの兵士が、
「ほらね。会議を待ってなくてよかったでしょう」
と言うのに苦笑いもさせられた。
ところで、
盗人を追う間に、
カインたちは6個の宝を見つけた。
内4個は、モグラの巣の中にあったので、
あるいはアスカンタ城からの盗品であったかもしれないが、
もしそうだとしても、
今さら返すこともできない状況である。
たとえば、宝の1つであった守りのタネが今どこにあるかというと、
カインの胃を通り過ぎて、ただいま腸のあたりにある。
宝のうち、残り2個は、
巣の中ではなく、草原の宝箱の中にあったわけだが、
鍵がかかっていた。
盗人のドンモグーラたちが、
この草原の宝箱を盗まなかったのは、
鍵を持っていないからであろう。
パヴァン王にも、
宝物庫の宝箱には、施錠することを勧めたいとカインは思う。
草原の持ち主不明の宝箱が施錠してあるのに、
国宝に施錠せぬとは何事か、と。



こうして月影のハープを手に入れたカイン一行は、
イシュマウリの待つ月影の窓を開く。
冷静で、感情を出さないような口調のイシュマウリも、
月影のハープが手元に来るのが待ち遠しい様子だった。
というのも、このハープは、
古代船が海を駆け回っていた時代には、
イシュマウリの手にあったという。
カインたちが知る由もないほど長い年月を、
月影のハープは、イシュマウリの手を離れて過ごし、
そして今また古い持ち主の手に戻った。
ハープを握るイシュマウリの中に、
膨大なハープの記憶が流れ込んで来たことであろう。
ハープがどんな旅をしたのか、
カインたちが知る術はなかったが、
イシュマウリの感慨深げな表情は、
とても印象的であった。
「さあ、まどろむ船を起こし、旅立たせるため、歌を奏でよう」
内なる心情を読ませまいとしたイシュマウリの言葉は、
しかし喜びと切なさが入り混じっているようでもあった。


一同は荒野の古代船に臨んでいた。
イシュマウリの奏でるハープの音で、
大海の記憶が呼び覚まされる……はずだったのだろう。
何も起こらないことに驚いていたのは、
カインたちではなくイシュマウリであった。
「なんと。月影のハープでもダメだというのか」
この世界にひとつしかない、
神器とも言うべき楽器。
その奏でる音でも不十分であるならば、
いったいこの世界に大海の記憶を蘇らせる術はあるのだろうか。
イシュマウリの心の声に答えるかのように、
「ヒヒーン!」
とミーティアがいなないた。
「そうか。姫の歌声は封じられた楽器と同じ」
イシュマウリはすぐに察したようだった。
ハープが楽器であるならば、歌声も同じく楽器である。
ハープで大海が目覚めるのならば、歌声で目覚めることもできる。
人の姿であったとき、
ミーティアは、トロデ―ンの歌姫であった。
いまだ馬の呪いの解けぬ歌姫の声は、
弦の切れたハープでしかなかったが、
しかし、弦が切れても神器であるならば、
無下にすべきものでもないかもしれない。
「私と一緒に歌っておくれ」
イシュマウリはそう言って月影のハープを鳴らす。
惜しむらくは人の声ではないことであったが、
馬となっても、美しくいななくミーティア姫の歌声は、
月影のハープと美しく、そして強靭なハーモニーを紡ぐ。
かつてここは海の底であったという大地の記憶、
かつてここには魚たちが遊泳していたという大海の記憶、
それが具現化して、
カインたちにも見えるようになった。
そして、
かつてその水面を走っていたという古代船の記憶。
カインたちを乗せた古代船は、
大海の記憶、幻の水面へと浮かび上がる。
「さあ、別れの時。船出の歌を歌おう」
イシュマウリがまたハープを奏でると、
古代船は幻の水面を滑って荒野を抜け、
そして幻が消えたときには、
現実の海へと着水していた。
カインたちが振り返っても、
はるか遠くのイシュマウリは、
もう姿が見えなかった。


着水した古代船は、
すぐ目の前に、城のある小島を捕えていた。
メダル王の城である。
と言っても、
このとき、メダル王は病気で寝込み、
若かりし姫が、
早くも世代交代してメダル王家の仕事を引き継ぐところであった。
メダル王女の初仕事は、
カインの持つ小さなメダル25枚と、
網タイツを交換するという仕事となった。
ちょうど、このメダル王の城で、
ドルマゲスの目撃情報があった。
西のベルガラック方面に向けて、
海の上を歩いて行く道化師がいたという。

カインたちの次の目的地は、
ベルガラックとなりそうである。




カイン:レベル24、船着き場
プレイ時間:29時間57分

 

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