ドラクエ3冒険日記(10) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

カンダタ討伐から1年。
17歳をとうに過ぎてはいるにもかかわらず、
バラモスが動かないのをいいことに、
かいんはまだバハラタにいた。
それは、
かいんがオルテガを追う気持ちの、
張りつめた糸がぷっつりと切れたわけでも、
カンダタに2度騙されたショックでもなく、
あべるの商人魂ゆえのことであった。
将来的に自分の店を持ちたいあべるは、
黒胡椒屋を経営するグプタの手伝いをしていた。

かつてこの黒胡椒屋は、
タニアという女性の祖父が経営していた。
ところが、カンダタという西からやってきた盗賊に、
孫娘タニアをさらわれたショックから、
老人は黒胡椒屋を休業し頭を悩ませた。
タニアの婚約者のグプタが、
カンダタを追って飛び出してしまったことにも頭を悩ませた。
それを解決したのがかいん一行。
紆余曲折あったものの、
かいんは見事カンダタを成敗し、
タニアとグプタを救い出した。
老人が胡椒屋を再開しようとした折りに、
グプタが店を手伝うことを申し出た。
そこで、老人は、
手伝うよりは、むしろ店を任せたいと言い、
グプタに店を譲り、
商売の手ほどきをした。
その様子を見ていたあべるは、
グプタとともに老人に商売を習い、
胡椒屋を譲り受けたグプタの手伝いをすることとなった。
しかし、それももう1年前の話。
1年経つ間に、
婚約していたふたりは結婚し、
グプタは立派な夫、立派な主、立派な経営者になっていた。
立派な経営者になっているのであるが、
手伝っているあべるには、少々物足りなかった。
なぜならあべるは、
客を集め、
店を大きくし、
町を発展させたいと思っていたからであった。
ところがグプタは、
従来の客にこそ良くするものの、
新しい客を見つけることなく、
いつまで経っても細々と営業を続けた。
これはなにも、
グプタに商才がなかったわけではなく、
グプタもタニアも祖父も、
この細々とした生活が好きで、
こののんびりとした町が好きだったからであった。
店を大きくして忙しい商売をすることも望まず、
町を発展させて国際都市にすることも望まず、
ただ川を眺めながら、
のんびりと暮していきたい、と思っているだけだった。

自分の店ではないとは言え、
1年も働けば、
自分でも十分店を経営する自信が、あべるにもできた。
こうして、あべるは、
黒胡椒屋に別れを告げ、
お礼に1本のビン詰め黒胡椒をもらい、
かいんのもとへと戻った。

長らくお待たせしました。
1年という期間を待っていただいて感謝します。
この1年、
かいんさんは毎日、
聖ガンジスに浸かっていましたね。
熱い日も寒い日も1年中川に浸かって、
それで風邪をひかないというのは、
いったいどういうことなのでしょうか。
高いところが好きだったり、
ハサミも使いようだったり、
休み休み言えと怒鳴られたりするようですが、
いや、失礼。
失言でした。
水遊びをしているわけじゃない。
体を清めていたのですよね。
決して水遊びではないはずです。
断じて違いますよね、かいんさん?
と、心の中でだけつぶやいたあべるだった。
声にするとカンジ悪い人になってしまうので。
少し前にあだむに似たようなこと言ったら、
なんかあだむが落ち込んでたので。


さて、あだむといぶは、
この1年の間に情報収集をして、
日々イメージトレーニングをしていた。
何のイメージトレーニングか。
それは転職後の戦い方。
ここバハラタで得た情報の中にこういうものがあった。
北の山奥にダーマの神殿があり、
その神殿の神官に認めてもらえば、
職業を変えることができるというのである。
まだ未熟であるとは言え、
先々の技能の習得の道筋を考えておくのも悪からぬことだろうと、
ふたりとも考えたからであった。

いぶは以前から武闘派の職業に就きたいと思っていた。
そもそも、いぶがルイーダの酒場にいたのも、
打たれ弱い魔法使いではひとり旅ができないから、
という理由だった。
仲間がいなければ、ひとりでは旅立てないから、
であった。
逆に、
もし戦士や武闘家であったならば、
かいんが酒場に来るよりも前に、
ひとりで旅に出ているはずだった。
いぶは、
自分が魔法使いであることを残念に思ったこともあったが、
今やかいんたちと冒険していることが楽しくてしょうがない。
もちろん転職するとすれば武闘派になるつもりではあるが、
それでひとり旅をしようとすることは考えておらず、
剣や拳でかいんの助けとなりたいと思うようになった。
そして、あだむと情報交換、意見交換をしながら、
イメージトレーニングを続けるのだった。

あだむがかいんの仲間になったのは、
かいんが歴戦の戦士を求めたからだった。
そして、実戦経験がないにもかかわらず、
かいんの仲間になるのに立候補し、
晴れて今の仲間たちと冒険をしている。
歴戦の戦士。
ある意味、それはあだむが臨んだ姿であるのだが、
常々いぶの戦い方を見ているうちに、
自分も魔法が使いたいと思うようになってきた。
確かにあだむの攻撃は強力だった。
しかし、いぶがメラミを唱えれば、
あだむの攻撃など取るに足らないものであった。
確かにあだむの剣は硬い鎧も甲羅も貫いた。
しかし、いぶのどくばりは、
鎧にも甲羅にも傷をつけずに一撃で敵を倒してのけた。
あだむが1匹の敵を倒している間に、
いぶのベギラマは3匹の敵を同時に灰にした。
ときには仲間の守備力を上げ、
ときには敵の素早さを下げ、
機転を利かせて薬草を使い、
魔力が尽きてもまどうしの杖を振る。
あだむの攻撃一辺倒とは違って、
非常に知的な戦い方だった。
そんないぶの戦い方に、あだむは羨ましさを覚えていた。
先日あべるにこんなことを言われた。
あだむさんのおおばさみは強力ですね、と。
すごくお似合いですよ、と。
あだむさんは賢さが14ですか、と。
あだむさんとハサミは使いようですね、ハハハ、と。
あだむには、このあべるの言葉の意味がわからなかった。
しかし、バカにされていることだけはわかった。
バカにされているはずなのにその意味がわからないなんて、
オレは馬鹿なのか。
言葉の意味がわからないオレは馬鹿なのか。
奇しくも、理解できないあだむに、
あべるの言いたいことが正しく伝わったわけではあるが、
以前から感じていた劣等感があだむの中で膨れ上がり、
魔法が使える賢い職業に憧れるようになった。
そして、いぶと情報交換、意見交換をしながら、
イメージトレーニングを続けるのだった。


まるで4人がバラバラに行動していたようではあるが、
実際は4人とも同じ宿屋に泊っていた。1年間も。
だから毎日会っていた。
毎日会っているのに、
朝になると、各人バラバラの場所に行き、
各々の日々を送っていた。
そんな折に、
あべるの商人修行が終わったわけで、
4人は晴れてダーマを目指した。
黒胡椒をポルトガ王に持って行ったほうがいい気もするものの、
東で見聞したことを教えてほしい、
というのがポルトガ王の頼みだったし、
まだ東の果てに来たわけでもなく、
まだまだ東の方角に進めるわけで、
急いでポルトガに戻る必要もないと考え、
かいんはダーマへと足を進めた。
ダーマ自体はバハラタの北の方角なのであるが、
東に行こうとすると、
一旦ダーマを経由しないといけないようだった。
まだまだポルトガ王に会いに戻るには時間がかかるだろうけど、
大陸横断してるんだから、
1年ぐらい経ったって別に遅くないよね、とかいん。

かくして、
ダーマを経由してさらに東へ行こうとする一行であったが、
ダーマのすぐそばの塔に登ってみたところ、
悟りの書、というものを発見した。
かいんが悟りの書を手にできたのは、偶然の産物だった。
塔の途中の、フロアとフロアを繋ぐ細いロープを渡っているときに、
空からスカイドラゴンに襲われ、
足を踏み外して落下したのだが、
ちょうど落下地点に宝箱があって、
そこに悟りの書が入っていた。
偶然の産物。
いや、
4人がかりでロープを渡っているときに足を踏み外したのだから、
まったく偶然ではない。必然だった。
そういうわけで、
必然的に悟りの書を手に入れることとなった一行。
悟りたくてしょうがないあだむに書を渡し、
4人は東へ向かう。

東へ東へ。北へ北へ。
大陸を横断し終えて、さらに北上したところに、
最果ての村ムオルはあった。
そして、この村は、
かいんにとって重要な意味を持つ村であった。


かいん(勇者・男):レベル17、HP135
あだむ(戦士・男):レベル18、HP150
あべる(商人・男):レベル19、HP136
いぶ(魔法使い・女):レベル17、HP83







にほんブログ村 ゲームブログ ドラクエシリーズへ
にほんブログ村