ドラクエ3冒険日記(8) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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ポルトガにサブリナという若い女性がいた。
かつて彼女は、海に臨む公園で、
毎日のように恋人のカルロスと会っていた。
サブリナは、毎日遅くまでカルロスと楽しい時間を過ごし、
次の日にも、また早くからカルロスに会いに出掛ける。
カルロスとの時間は幸せすぎて、
夜が来て別れる度に淋しくてたまらない気持ちになった。
また、翌日会えるにもかかわらず。
それほどまでに、サブリナはカルロスを愛おしく想っていた。
ある日、カルロスが待ち合わせ場所に来なかったことを心配して、
サブリナは、カルロスの家を訪ねた。
しかし、カルロスの家には馬がいるだけだった。
たまたま外出中だっただけだと、サブリナは自分に言い聞かせた。
次の日も、カルロスは公園には来なかった。
サブリナは、またカルロスの家を訪ねた。
しかし、家にカルロスの姿はなく、ただ馬がいななくだけだった。
日が昇る度に、サブリナはカルロスを探し、ポルトガ中を回った。
日が暮れると、彼女は自宅に戻り、眠りに就く。
日が昇ると目覚め、日が沈むと眠りに就く。
起きている間、サブリナは、
黙って姿を消したカルロスの身をひたすらに案じた。
ただ案じるだけが、サブリナにできる唯一のことであった。

ポルトガにカルロスという若い男がいた。
かつて彼は、海に臨む公園で、
毎日のように恋人のサブリナと会っていた。
愛し合う2人は、誰から見ても仲睦まじく、
他人に羨まれるような恋人同士だった。
朝になれば、またサブリナと会えることを喜び、
夜になれば、明日サブリナと何を話そうか考えることを喜んだ。
毎日、サブリナと一緒にいられるだけで、カルロスは幸せだった。
カルロスは、それ以外の何も望んでいなかった。
ところが、ある日突然、日中に意識を失うことがあった。
夜に意識を取り戻し、慌てて公園へと走った。
サブリナは、もう公園にはいなかった。
カルロスは、申し訳ない気持ちで、夜分遅くにサブリナを訪ねた。
しかし、サブリナは家にもいなかった。
ただ見慣れない猫がいるだけだった。
たまたま外泊中なのだと、カルロスは思うことにした。
明日になれば、また会える。
カルロスはそう信じた。
ところが、翌日も、その翌日も、
日が昇ると、カルロスは意識を失い、
意識を取り戻すのは、いつも日が沈んだ後だった。
カルロスは、毎晩サブリナの家を訪ねたが、
彼女はいつも家にはいなかった。
カルロスは、起きている間、
ずっとサブリナを探し続け、想い続けた。
黙って姿を消したサブリナを彼は心底心配した。

いつしかサブリナは、消えたカルロスを想うがあまり、
カルロスの家の馬を愛するようになった。
一方、カルロスは、消えたサブリナを愛しむがあまり、
サブリナの家の猫を愛でるようになった。
こうして、昼には馬とサブリナが、
夜にはカルロスと猫が、一緒の時間を過ごす風景が生まれた。
こんな2人を「面白い恋人」などと、誰が言えよう。


東の国バハラタに、タニアという若い女性がいた。
タニアは、バハラタ名産の胡椒屋の孫娘。
かつて、彼女は、聖なる川ガンジスのほとりで、
恋人のグプタと愛を囁き合っていた。
2人は、家族にも認められた関係で、
将来を誓い合った仲でもあった。
あるとき、西から流れてきた盗賊に、
タニアがさらわれる事件が起きた。
胡椒屋は店を閉め、頭を悩ませ、
グプタは、すぐにタニアを連れ戻そうとした。
しかし、胡椒屋であるタニアの祖父がグプタを止めた。
誰にさらわれたのか、どこに連れ去られたのかもわからずに、
やみくもに探しても見つかるはずがない、と祖父は口にした。
だが、それは口実で、祖父の本音は、
グプタが行っても、返り討ちに遭って捕えられてしまうに違いない、
というものだった。
タニアの祖父から見て、
唯一グプタに欠けているものは、腕っぷしだった。
行動力も、タニアへの想いも十分に祖父に伝わっていた。
ただ、弱い。
そんなグプタが行ったところで、
タニアを連れ戻すことはできないと、祖父は考えた。
グプタが盗賊を刺激して、
逆にタニアが危ないことを祖父は危惧した。
グプタを心配し、タニアを心配した上での結論だった。
だから、はやるグプタを諌めもした。
腕利きの冒険者が現れるのを待った。
しかし、グプタは諦めなかった。
祖父の言葉を鵜呑みにしたグプタは、
目撃情報を集め、盗賊の身なりとアジトの場所を突き止めた。
ここまでしてタニアを救おうとするグプタを
祖父は、もはや止めることができなかった。
タニアは盗賊のアジトで、じっと助けを待ち、
グプタは勇んでタニアを救おうとアジトへ向かった。
結果的に、祖父の考えたとおりに、
グプタ自身も捕えられることになってしまったとしても、
こんな2人を「面白い恋人」などと、誰が言えよう。


さて、視点はかいんへと戻る。
東の国へ進みたいが、
そのためにはノルドに道案内を頼まなければならないかいん。
ノルドは道を教えてはくれないが、
ノルドとポルトガ王が友達だというところまでわかっている。
かいんは、ポルトガ王に頼んで、
ノルドへの手紙を書いてくれるようにお願いする。
つもりでここポルトガまで来た。

しかし、よくよく考えてみれば、
勇者であるとは言え、
よその国から来た一個人が、
王にそんな頼みごとができるものなのか。
出身地のアリアハンですら、
王からの旅立ちの餞別は、銅の剣程度のものであったのに。

そう考えていたかいんであるが、
その悩みは無用のものであることが、すぐにわかることになる。
ポルトガ王は、東の国の情報が知りたくてしょうがなかった。
特に、東の国名産の黒胡椒を欲して止まなかった。
そのために、友に対しての文をしたためることなど、
造作もないことであった。
なにせ、黒胡椒のためならば、船さえ厭わない心持ちであったので。

かいんは、あまりのトントン拍子に驚きながらも、
王の手紙を持ってノルドのもとを再訪問する。
トントン拍子すぎて、
あれだけ最短を目指していたはずなのに、
ポルトガに降り注いだバラモスの呪いに気付くこともなく。

こうして、かいん一行は東の国バハラタへと辿り着き、
タニアのため、グプタのため、黒胡椒のために、
盗賊討伐に向かうのだった。


かいん(勇者・男):レベル14、HP106
あだむ(戦士・男):レベル16、HP124
あべる(商人・男):レベル17、HP121
いぶ(魔法使い・女):レベル15、HP71




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