AA7月。虚血再環流やら、全血やら | 犬好き麻酔科医ブログ

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日々精進。

暑いけど、頑張ってこ〜。


Effect of Remote Ischemic Preconditioning on Outcomes in Adult Cardiac Surgery: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Studies


RIP。。。
2〜3年前か?Lancet、NEJM、名だたる雑誌に一気にめっさのり、、、その後、話を聞かなくなりつつありますが、、、
そのReview。

BACKGROUND:
Remote ischemic preconditioning (RIPC) 。
心臓手術患者で、虚血再環流障害を軽減する、、なんて言われてました。
で、いっちゃん新しいRCTで否定的な話でしたね。よくある流れのように。。
メタ解析して、Outcomeは、
acute myocardial infarction (AMI),
acute kidney injury (AKI),
そして死亡。

RESULTS:
30 Study。7036 patients。
で。。。
RIPC は、、、
Trop値を減少させる。
(−0.25 ng/mL; 95% [CI], −0.41 to −0.048 ng/mL; P = .004),
CKMBは、変わらず。
(−0.22; 95% CI, −0.07–0.35 ng/mL; P = .46),
全Trop放出を減少させる。
(−0.49 ng/mL; 95% CI, −0.93 to −0.55 ng/mL; P = .03)

が。。。。
AMI発生は、減らさず。
(RR, 0.89; 95% CI, 0.70–1.13; P = .34)
AKIも、減らさず。
(RR, 0.88; 95% CI, 0.72–1.06; P = .18)
当然、死亡も変わらず。

サブ解析で、、、
吸入麻酔で管理された人だけで見ると、
AKIと、死亡が減少していた。

CONCLUSIONS:
ふうむ。
Tropが減る、、、、事は、
似ているようで、MIを減らす事とは違うねんな。
Tropで死亡が、、、、なんて報告もあるが、、、どこまでの上昇が、とか絶対値的なもんもね、まだ微妙だしね。
吸入麻酔だと、、、?
あは、笑えますがね。
吸入麻酔のがいいとは思ってるけど、それとこれとは別っしょ⁈




Effects of Increasing Airway Pressures on the Pressure of the Endotracheal Tube Cuff During Pelvic Laparoscopic Surgery


挿管チューブカフ圧。ー
粘膜の環流圧以上になると悪い影響があるとされている。
ちょっと、いや大分、、BMI高い(37)患者の腹腔鏡手術。ー
で、新しい知見としては、、、
カフ圧は、術中、
気道内圧と関連して上昇する、だって。
気道、、、内圧と、、、か。
これって、腹腔鏡のCO2の影響じゃないんかね?
ま、、、ウチはカフ圧計がないけん、関係ないね‼︎



Transfusion of Older Red Blood Cells Increases the Risk of Acute Kidney Injury After Orthotopic Liver Transplantation: A Propensity Score Analysis


もう、古い貯蔵血は、いいやないか⁈
RCTでもう、差がなかったけんね。ー
懲りずに、肝移植患者で調査。ー.
しかも、今更レトロ。。。
で。
AKIは、65.1% 🆚 40.5%
[OR] = 2.47 [95% {CI}, 1.13–5.41]; P = .024)
severe AKI (OR = 5.88 [95% CI, 2.06–16.80]; P = .001)
今更のレトロと、多施設RCT。
肝移植というスパイスを加えたら、何か変わる?
僕はそうは思わんけど。。。




Incidence and Risk Factors for Chronic Postoperative Opioid Use After Major Spine Surgery: A Cross-Sectional Study With Longitudinal Outcome

手術が慢性麻薬依存の一因だという話もある。
脊椎手術患者で調査。
術後12ヶ月で麻薬依存かどうかがOutcome。
術前、、、
麻薬無し27.9%
麻薬有り 72.3%。
この時点で、日本とはかけ離れてますなー。

麻薬あり患者で、12か月後、
依然として、 52.0%は、麻薬使ってた。
量は減っていた。
−14.7 mg ME (standard deviation, 1.57; 95% [CI], −17.8 to −11.7).

麻薬無しだった患者で、
12ヶ月後麻薬使ってたのは、
18.3%。

術前麻薬使用は、約4倍、慢性麻薬使用に関わっていた。
OR 3.95; 95% CI, 2.51–6.33; P < .001

術後疼痛のレベル(0〜10)も、
慢性使用に関連。
OR (1増加ごと) 1.25, 95% CI, 1.13–1.38; P < .001).

ケタミン、リドカインは、関連無し。

ま、、、
脊椎のオペは痛いけんね。
で、術前から、、、そんな麻薬処方されてちゃ、術後も麻薬効き悪くて、量も増えて、依存を作るかも、、、、なあ。って感じか。
日本は、恵まれてるねえ、この点は。




The Brachiocephalic Vein as a Safe and Viable Alternative to Internal Jugular Vein for Central Venous Cannulation

やったことない、、、、。
が、腕頭静脈の超音波アプローチによるCvってな、簡単なオプションなんだってさ。
内頸静脈より、、、簡単だって。
ホンマかいなあ〜。
メジャーになったらやって見るかなあ。




最後、かつメイン。
全血、ってな、もしかする血、今後逆にね、はやる可能性があるよね〜。

Whole Blood for Resuscitation in Adult Civilian Trauma in 2017: A Narrative Review


2012,年に、全血輸血、の専門家Reviewがなされた。
時々、全血の有効性っていう報告は出ます。
隙あらば、、、適応を広げてやろう、ってね。
まず最初はいつも軍隊でのデータなんだよね。その後、民間に降りてきて、外傷、ってね。お決まり。ー
病院での全血プロトコル作成の為、
麻酔科、外傷医、病理医、多岐にわたる専門的意見が求められた。
ほお。面白いですね。
僕は謎に、、、全血何度か使う機会があったけど、普通、あんまないからね。まとめにいいでしょ。ー

CONCEPT AND HISTORICAL PERSPECTIVE

全血輸血は、第一次大戦の時に始まったんだって。
でも、真剣に調査されたのはm第二次大戦の時なんだって。
恐ろしいけど、戦争で医学は発展すんだよね。。。
ベトナム戦争の頃には、全血は好んで使われてたんだって。ー
でも
その後に、成分ごとに輸血を分ける技術が発達して、RBc、FFP、PCと言う今の成分輸血体制になったわけです。
で、次第に全血輸血は、姿を消していきました。

定時手術で、非劣勢が報告されている。

出血性Shockに対する、効果や血行動態を調べると言う報告は昔は無かった。

出血性Shockに、RBCと外液のみで管理する、
って管理は安全で、FFPとか、💻はさほど重要じゃない、ってな、間違った解釈が初期にはあった。
面白い言葉がある。
出血性Shockに、生理食塩水は安全に使用できる。 “until WB is available.” 全血が準備できるまでの間、、、だって。

ここ20年で、
このような管理が危険であるとされてきた。
『coagulopathy』、凝固障害、と言う概念ですなぁ。

バランスよく、血漿、血小板、更にはクライオ、を補充する、それも早急に、 って言う概念がではじめたわけだ。
アメリカのLevel1外傷センターでは、
1:1:1 plasma:platelets:RBC 、
ってなね、神さまレシピ的なものが流行ったりもしました。

そして全血が再び注目されたのが、イラク、アフガニスタン戦争の頃。ー
いくつかの理由があるが、成分輸血は手間がかかる、運送にも手間、PCは特にすぐ足りなくなる、凍結しておく場所がない、、、などね。
その点、全血はね、手間も省け、成分も全部一個で含まれてて、保存もできる、、、と。
でまあ、レトロだけどデータが出始めると。ー
んでまあ、
全血、もしくは1:1:1輸血(全血には成分上ならんが)、ってのが2007年の専門家推奨に上がると。
ほとんどレトロなこと以外は、いい雰囲気が出てましたな。

その後、外傷領域で大きな変換点である、damage control resuscitation と言う概念が出始める。
その頃、全血を外傷で使おうとする試みも出たが、当初、戦地と違い、新鮮全血じゃない、保存全血、と言うものをどう管理すればいいか、のノウハウは無かった為、実臨床にはそぐわん、という意見もあった。ー

全血の利点として、ー
Costが安い、成文化する際の余計な手間、が省けることがある。
軍隊では、全血と、1:1:1輸血は、同じくらい安全、有効だとする報告もあり、外傷レベルに降りてきている。

近年の報告で、
全血とPC、と言う輸血方法が、RCTで、ーー
止血を得られるまでの総投与量ふぁ減る、と言うサブ解析もある。ーーーー


BLOOD BANKING PERSPECTIVE: PRODUCT, AVAILABILITY, AND RISKS

ここ30年、
外傷に対する輸血は、成分輸血が利用されておる。それは、保存量の関係であったり、足りないものを補う、と言う観点からだ。

大量輸血プロトコル (massive transfusion) (MT) protocols は、ー外傷では利用される。
ただ、、、、
各種輸血を足しても、成分的には全血に及ばない、と言う懸念材料がある。
最近の算出によると、
1:1:1は、全血に比べ、
凝固因子は、 (38%) 、
platelet (56%) 、
成分機能が低下していると言うことだ。


Component Therapy

RBCs には、血型 (A, B, AB, or O) を決める抗原が含まれている。
通常、冷所 (1°C–6°C) で、42 days(外国は)保存される。

血漿は、凍結状態で保存され、
8時間以内の (fresh frozen plasma [FFP]) 、
24 時間以内の (PF24)、
に分類され、
ABO 抗原に対する抗体を持っている。

同様に、液体状の (never- frozen)血漿、
コレは、 26 days、 1°C–6°C, で保管されうるが、MTプロトコルでは、使われ始めている。へー、成分が多いのかね?

Rhマイナスは、通常で抗原を持たないが、過去の輸血などで曝露していることもありうる。

血小板は、室温で通常5日(Max7日)(外国ですよ)、保存される。これは細菌感染が多いからだ。


Whole Blood

Cold全血、は、通常は、民間で使用されるが、抗凝固剤と共に採取される。ー
その後、1°C–6°Cで、攪拌なしで、管理される。ー
保存時に使われる抗凝固剤により、、21〜35日以内で使用できる。
勿論、通常の感染症検査などはされる。

一方、新鮮な全血、で
は、戦時中に使われることが多い。
通常、採取後数時間以内に使用される。
冷所保存せず、22度で8時間以内の使用が通例だ。感染検査もしない、するまもないし、ね。
結構な差があるわけだ。

当然だが、新鮮な方が、血小板、凝固因子、共に多く含んでいるらしい。

保存全血で、血小板機能は大丈夫なの⁈、と言う当然の疑問にも答えたStudyが有り、通常のPCと保存全血で、血小板機能に差がないとされている。(少なくとも14日目までは、あらゆる検査で同等)

全血一単位 (570 mL)は、抗凝固剤、補充物質による希釈を、1:1:1輸血 (660 mL)よりも影響を受けない。

よって、
血小板数も高く (≥200 vs 88 × 109/L)、
凝固因子レベルも高い (≥90% vs 65%),
だから、臨床的にも止血効果が高いのは当然だ。

理論的に、全血は、血型があっている必要がある。(D抗原含め)

緊急時に血液型不明な場合はどうだろう?
RBCなら、O型を投与できる。
FFPならAB型を。
妊娠可能年齢の女性に対する、RHプラスの全血投与は、議論がある。

全血では、O型血は、血漿にA、Bの抗体を持っておる。血漿の量は、FFPと変わらず豊富だ。
理論的には溶血のリスクがある。
中には、強い抗体かどうかを検査して投与する、、と言う執念を見せてるトコもあるらしい。。。。その前に血液型出そうな気もするが。。、

成分輸血は、ほぼ現在、白血球除去で準備されている。副作用が減る、と考えられてるからだ。ウイルス感染(サイトメガロ)、免疫低下、など。

従来の白血球除去フィルターは、一緒に血小板も除去し、全血にも、推奨されない。

それが血小板は除去しないフィルターが出来てきた。それならば全血に、使える可能性がある。


MILITARY PERSPECTIVE: CURRENT USE

イラクアフガニスタン戦争での外傷では、新鮮全血が、治療の主役として、出てきた。

成分輸血の比率による投与の時と同様に、使用経験が蓄積していった。
ただm暫くはレトロな報告ばかりだったので、なんとも。死んじゃったりするけんね。評価の前にね。なにせ早期死亡が、リアルな早期(時間の単位)だけんね。その効果が全血によるものか、評価できんわけさ。

ランダム化など、難しいが、似たような重症度の患者に、(110 fresh 全血, 254 成分輸血) 投与したところ、
24時間、30日、の死亡が全血で改善した報告もある。

同じくレトロで、ー
fresh 全血 (85)、成分輸血 (284) 、
を比較している。
で、、、差はないとされた。
(ま、非劣勢であると、Positiveに結論)

さらに研究が進むと、
新鮮全血を、RBc、FFPに併用すると、生存が上がる、、、、重症度は高いのに、
と言う評価も出た。

生存は置いておいて、、mだが、
新鮮全血で、『coagulopathy』は、減っている。

レトロなんでね、もう、色んな問題だらけではありますが。
それでも新鮮全血hq、使用が増えていくわけです。

スウェーデンの報告で、溶血が、ABO不適合血漿成分で、起きる危険性が指摘された。
だがmリスクより、利点が大きいのでは、ともしている。

現在、標準的?な、成分輸血に加え、新鮮全血を併用する治療が有効かも、、、とされている。が、まだまだ情報は少ないけん。。。
が、
戦争領域では、Firstラインとして、出血性Shockに記載されるまでになっておる。


CIVILIAN PERSPECTIVE: CURRENT USE

新鮮全血の有用性が指摘されるにつれ、非戦争領域(民間レベル)での、Cold(保存の)全血にも、注目が集まる。

大量輸血プロトコルを要する外傷患者のRCTで、ー
1単位のCold全血、か、
成分輸血 (1 RBC + 1 plasma)
を、病院到着後投与した。
両者とも6単位ごとに、PC1単位投与のプロトコル。

で、全体では、輸血量に差はなかったが、
重症頭部外傷を除外すると、
全血患者で輸血量が少なく、24時間輸血が少なかった。ーー
除外、、、て悪い方法ではあるが、頭部はね、確かに特殊ではあるんだよね。

47名の患者に、クロスマッチ無しで、2単位のO型全血を投与した報告がある。
で、
安全性に問題はなかった、と報告されている。
(そう考えると、FFPなんてなに型でもいいっちゃいいってこと⁈)
そんなこんなで、
Cold全血は、トラウマセンターで使われ出している。通常、2〜4単位が使われている。

オーストラリアでは、新鮮全血を平均4単位、通常の輸血に併用した報告がある。ー
で、
データ上の改善はあるが、輸血量、生存には、影響なかった、と。
ま、、、
たったの4単位分でね、大量輸血のね、何分の1かって話です。
ほんとに行くなら、全血のみ、ってのがいいんでしょうがね。


DEVELOPMENT AND IMPLEMENTATION OF WB AT THE INSTITUTIONAL LEVEL

もしかすると、良いかも⁈、くらいなエビデンスではあるのに、期待先行で、結構来てます。
筆者の施設でも全血を始めたらしいです。
成功のためにはでもいくつか決まりごとも必要だと。


Regulatory

準備、が最も重要な項目だ。
基本的には、成分輸血と違って準備されてるものではないからね。
委員会を通じ、輸血プランを練らねばならん。
全員の同意の元、始める必要がある。

“variance use” (型違い輸血)、も、最初に4単位のO型全血を入れるんで、ね。
で、今年の4月に、少量O型全血ってな、一応とある学会?、で認められたんだってさ。ー


Blood Supplier

地域の血液供給の協力体制がない限り、全血供給は成り立たない。
筆者んとこでは、O型、男性由来(FFPと一緒ダネ)、21日貯蔵、白血球除去、のものを供給してくれんだってさ。
限りあるけんね、成分にするか、全血にするか、緊密に連絡取らんとねえ。ー
在庫20単位、一日2単位は新しいのもらう、体制なんだって。
で、RHプラスで我慢してるっぽい。そりゃそうだわなあ。

長いから、、、端折る。


Safety

最初の48時間は溶血判断のため、ハプトグロビン、乳酸脱水素、Bilなど測れと。


Early Process Improvement

いざ始めると、全血の無駄が目立った。
21日と短めの貯蔵、使える事実を知らん、使ったことないから、頼みにくい、とかでね。
で、
教育を続けると、無駄が減ったって。
溶血イベントは驚くほど少なかったって。
など。。。


CONCLUSIONS

戦争で培われ、ある程度の有効性を示した全血。今は市民レベルの外傷に適応がされ始めた。
さてさて、、、
大したデータ(レトロ)しかないのに、外傷センターまで、全血は降りて来ました。
有効性が、、、ってなれば、次は、Txaでもね、産科出血、心臓手術、ですなぁ。
で、若い女性は、妊娠のことがあると、全血は閾値が高すぎる、Studyとしてね。
すると、、、心臓領域。僕の領域に入ってくる可能性があんだよねー。
そんだけ。僕が興味あるのは。
心臓患者に有益か、どうかだけ。
一応、、、今では、大出血患者。実際出血してからじゃ遅いんで、その手術での出血するであろう完成図から見て、場合により、1:1:1に近い成分輸血を行なっていますが、
ま、これ自体も、どこまで、、、って感じですが。
でもまあ、やばい奴は、そうしてます。
その加減がね、難しいんですがね。
ま、
そんなこんなで、全血が皆さんの手元に届く日が、、、来るかも、しれませんよ?