心臓手術はAfのメッカ | 犬好き麻酔科医ブログ

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New-Onset Atrial Fibrillation After Cardiac Surgery: Pathophysiology, Prophylaxis, and Treatment





うーん、主要な4月文献も出だしたから、、、
コレくらい、ちょっとの合間に済ませてしまうか、、、。
気合い入れねば!!
心臓手術とAfの話っす。



術後Afと、術後AKIが、心臓手術後合併症の2大巨頭でしょう!
30-50%に起こりますね。
術後、5日、特に48時間、に起こる。

一度起きると、合併症も死亡率も上がる。
(合併症起きやすい人がAfになるのか、どっちが鶏で卵か、って話も)
Strokeになりやすくし、追加治療を必要とし、コストもかかる。

心臓手術後にAfが起きやすい原因は、明確ではない。
恐らく、多原因であり、周術期に原因があるのだろう。

原因は、多くのStudyがされても、詳細は不明であり、
予防方も各種研究されているが、確定、とまではいかない。

ただ、リスクファクターは、数多く知られている。
(図に羅列されてます、、、)

Afは、上室性不整脈として、メジャーなものだ。
無茶苦茶なリズムの、心房収縮、と定義づけられる。

Afの定義として、30秒以上続く、ECGに記録されたもの、を言うんだって。
30秒以下の場合は、何回も出現する場合、なんだって。
コレは、ちょっと複雑だなあ、、。


Afと共に、低血圧、動悸、めまい、尿低下、倦怠感、が起きることも、
全く症状を伴わないこともある。

単なるCABGで、30%、弁手術で40%、で、リスキー手術だと、50%にもなる。
術後のAfで、血行動態が異常となるのは一部に過ぎない。

心臓手術と、Af予防薬は、数多く行われているStudyだ。
(図に、羅列されてます)

交感神経過剰、は、当然起きている状態であり、一因であろう。

周術期のβ遮断薬は、Af予防、治療で、最もEBMがある方法だ。


2014 ESC/EACTS 冠動脈再建ガイドラインでは、
β遮断薬は、Af予防に、
(class of recommendation, I; level of evidence, A).
で、推奨されている。

ソタロール(βたす、K阻害)、
アミオダロン(K阻害)、
は、両者とも、俗に言う、4つの機序全てで、不整脈を予防する。

ガイドラインでは、
術後AfのHigh Risk患者に、
アミオダロンを推奨。 (class of recommendations, IIa; level of evidence, A).
している。


魚油が、冠動脈疾患を減らすという話もある。(特に高齢者で)
マグロを始め、青魚の黒みの部分、の摂取が多いと、
(揚げ魚はダメ、だって、、、そりゃそうだ)
Afの頻度も下がるんだってさ。


1日1gの、n-3 polyunsaturated fatty acid (PUFA) は、
抗炎症効果で、MI後の死亡を低下させる話もある。

ARMYDA-3 (Atorvastatin for Reduction of MYocardial Dysrhythmia After cardiac surgery) は、
スタチンで、心臓手術後のAfを減少させたという、最初のRctだ。

コレでは、中等度リスク患者に、術前1週間前から、術後まで、
スタチン内服群で有意にAf頻度が低下した。
(35% v 57%; p = 0.003).

ありがち、、、、ですが、こういう有意差を示すStudyって、
介入群が低い、というより、プラセボが、高いんじゃね?
って~感じは、否めませんがね、、、。

入院期間然り。
(6.9±1.4 v 6.3±1.2 days; p = 0.001).


術後のAf原因の一つには、炎症過剰もあるだろう。
ステロイドは、抗炎症効果がある。
で、あれば、ステロイドは、Afを減らすかもしれない。
(残念ながら、今のところ、減らさないようですが、、、)

低Mg血症も、Afを引き起こす。
幾つかのStudyでは、予防的Mgで、Af頻度が低下するとしている。
特に、CABGでね。
(もちろん、、、してないのもね、、、ただ、無害なのはデカイ)
(最新のメタ解析だと、無効、なんだよね)


コルヒチンにも、抗炎症がある。痛風の薬だけどね。
Colchicine for the Prevention of the Postpericardiotomy Syndrome (COPPS) trial, は、
コルヒチンで、 post-pericardiotomy syndromeが予防できるとしている。
好中球からのケモカイン抑制では、とされているが、定かではない。
それ以外の効果もあるって書いてあるが、難しくてわからん。
だが、理論的には、組織障害を軽減しうる。と。


Ca阻害薬も、よく使われ、心筋の酸素消費と、供給のバランスをとるとされる。
血圧、脈拍などに注意して使用する必要はあるが。

ジゴキシンは、術後のAfを減らすとはされていない。
(もしかすると、、、死亡率も上がるかもな薬だしね)


予防的に、心房ペーシングしておくのもよく見る方法だ。
心房も、右左、両方、イロイロ試された。

Posterior pericardiotomy (PP) は、
Af頻度を低下させるようだ。
13.8% 🆚 35.4% (I2, 70%; random effect p = 0.002; OR, 0.31; 95% CI, 0.15-0.65).

コレには、しんのうすい、による刺激がなくなるなどの機序らしい。


Off-pump CABG は、炎症軽減、よってAfも軽減と思われている。
実際、RctでもAfが下がった報告もある。

Afのアブレーションをするかどうかも意見があるが、した方が予後がいいという報告もある。
Pafであったとしても、した方がいいと。

最近のAfであれば、CABGと同時にアブレーションするのが、いい可能性があると。

術後のAfを減少させる術は幾つかある。(図に羅列されてる)

術後のAfは、一過性で自己解決されることもあるが、
時に、急性心不全、血行動態不良、MI、で、
Sinusの維持が急務となることもある。
DCの出番だ。

他の異常も調整せねばいかん。
電解質異常、体液バランス、酸素化、還流、などがこれにあたる。

最近の推奨では、
新規Afに対して、
最初の24時間は、レートコントロール、が行われる。
使用される薬と量は、図に羅列されている。

ほとんどの観察研究で、どの薬剤でも、
新規Afは、24時間以内に、Sinusに戻ってることがほとんどだ。

通常は、
βブロッカー
Ca拮抗薬、
アミオダロン、
ジゴキシン、
が多く使われる。
単独、もしくは併用でね。
(併用で、ガツっと脈が落ちることあるんで、注意だけどね)

どの程度の脈拍数?、ってのに結論はまだない。
症状などあれば、80以下、
なければ、110以下が、なんとなく推奨されてはいる。


Pafは、構造的、電気的異常が出来上がると、不可逆的な、CーAfとなる。
このようになる前に、リズムコントロールがされることもある。

血行動態不良、AMI合併、のリズムコントロールは、
緊急で行われることがある。

48時間以内のDCであれば、抗凝固なしに行える。
(コレであっても、塞栓は増えるんで、抗凝固せえ、という意見はある)

48時間異常続いた場合、、、
抗凝固は、直ぐに開始されるべきで、少なくとも4週間は使用されるべきだ。

抗凝固は、
ヘパリンを使用し、他の抗凝固が十分になるまで続ける、ってのが標準方法。

血行動態以外の理由でも、
もうすぐ48時間になる、落ち着いてる新規Af患者にもDCは行われる。
ただ、これは、患者が、抗凝固による副作用を起こしやすいと、判断されたケースに、通常は限られる。


Flecainide, dofetilide, propafenone, ibutilide などが、
最も一般的な、第一選択の抗不整脈薬だ。
投与後は、4時間は最低心電図変化に気をつける。

どのタイプのAfであれ、 (paroxysmal, persistent, permanent, silent)
血栓症のリスクになる。特にStroke。

抗凝固で、塞栓は減り、、、、出血のリスクが増える。
常に、使用前に、出血と塞栓を天秤にかける必要がある。


Strokeのリスクは、
スコアリング (CHADS2167 and CHA2DS2-VASc168) 、
出血のリスクは、
スコアリング (HAS-BLED,169 ATRIA,170 and HEMORR2HAGES171)
が、使用される。
特に、CHA2DS2-VAScと、 HAS-BLED scoresが広く使われている。


心臓手術自体の死亡率は減少しているが、かかるコストは、依然高いままだ。
そして、新規Af然り。コストも、手間も予後も、悪影響だ。
ただの一過性イベントでは、片付けられない。

術後のAfには、様々なメカニズムがあるだろう。
ただ、正確な機序が分かるにはまだまだ時間が必要だろう。

適切な新規Af治療は、
臨床症状、合併症、StrokeRisk、出血のリスク、
様々な側面からの判断となる。

今の予防のスタンダードは、βブロッカーだ。
が、陰性の変力作用があり、注意して使用するべきだ。

βブロッカーや、アミオダロンで、Afや、入院期間が減るというStudyはあるが、
何故か、死亡率も下げたよ、という報告はない。

そして、長期予後に関連させるStudyもない。


まだまだ、多くのことが未知の領域であり、
今後ともにStudyが必要である、と。

ま、、、
知ってることばかりでしょうが、、、、
なんとなく流れとして、まとまってますかね?