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ぼう、超有名医師メーリングリストで、
人工心肺のお話が出てます。


なんの話かというと、
deep hypothermic low flow cardiopulmonary bypass
なるものについて、だそうで。

体温26度、拍動下手術らしいですわ。

これを、CABGの症例でも、積極的にやってる
USAの施設の方が、どうなのよ?
と、申されてますわ。


さて、、、
どう思いますか?


幾つか、整理しましょう。
体温に関しては、
伝統的超低体温は、20度以下、
最近では、
中等度、20ー28℃
軽度の低体温28ー34℃、
と、分類するものもあり、
用語としては、
中等度低体温、が、正式ではないでしょうか?
Deep Hypothermiaでは、無いですよね?

因みに、超低体温は、1987年という、
割と最近に、エール大学から、報告されたものでしたね?
ですが、
予後悪化と、関連するとされ、
どうしても、っていう場合を除き、使用は制限されていますね。
低体温するなら、26ー28位が時代にあってるんでしょうか?




次に、人工心肺のFlowは、
通常、2.1ー2.8L/m2程度を標準量としますので、
Low Flowとは、
2L\m2以下のFlowを意味するでしょう。

俗に、
28度程度まで、体温低下とともに、
代謝は5-6%づつ下がるとされており、
26であれば、単純に考えれば、
Low Flowでも、十分だと考えられます。
ただ、
どこまで低くていいかは不明ですので、
INVOSや、Lacを指標に、
Flow、Hb、粘稠度、代謝、のバランスで、決定されるものです。
が、
特に神経系は、回復が難しい組織であるので、
安全域は十分取る必要があります。
一方、
GDTの様に、Flowが多ければ多いほどいいじゃん?
という考えは、心臓に負担をかけず、Flowを増やせるので、
一見、理にかなってますが、
Flowを人工心肺という形で増やすと、
デブリスを飛ばし、塞栓症を増やしことが指摘されており、
現在の2.1ー2.8程度に収まったのでしたね。




次に、拍動下、について考えましょう。
通常、30度を切ると、
心臓に有効な拍動を期待するのは、酷でしょう。
Bradyになり、拍出も激減です。
26度であれば、ゆっくり冷やしても、Vfになる可能性は
高いでしょうし、なってなくとも、拍出はしないでしょう。
で、あれば、通常は、LVを十分Emptyな状態にすべく、
ベントを挿入する必要があると考えます。
そうでないと、心筋負荷、うっ血、肺水腫も起こり得ます。

On CPB Beating CABGの予後が良い、
という、チョットないでしょ、的な報告が、
散見はされますが、個人的には無いし、
今回のとは、意味合いが全く違うと思います。
しっかりしたBeatingがあれば、Flowとしては、Totalでは、
恐らく、Hyperでしょうし、
冠動脈にも、酸素化された血液が巡回しているでしょう。
そういう意味でも、体温下げて、Flow下げて、とは違いますね。



拍動下で、低体温で、CABGする。
通常の、On CABGであれば、
大動脈遮断し、冠動脈に、保護液を流し、
心臓に仮死状態になっててもらう訳ですが、
低体温拍動だと、代謝下げてるんで、いいっしょ?
ってノリですよね。

僕は、人工心肺の進歩は、そのほとんどが、
心筋保護の進歩だと思ってるんで、、、
進歩の全否定、みたいなやり方にしか感じない。

低体温にして、復温。
人工心肺時間も長くなる。
恐らく、ベントも入ってない。
ARがあるかもしれない。
うっ血による異常は?
還流は保たれてるの?
、、、
いくつだって、否定的な意見が出てきますな。

そうやって、大丈夫であったのと、
積み重ねで、安全なやり方が確立するのでは、
意味合いが違いすぎます。


クランプが出来ない?
Aorta Nontouchで行けや、
クランプ無しで穴だけ開けろや、
バルーンプレジア使えやー、
中等度低体温で、LowFlow、、、ではないでしょ?
優先順位として。。。


右心系と呼吸器系には、
そりゃ影響するでしょう?
拍出がほぼ無いのにVolumeがあるんだから、、


Low Flowにする意味も低い。
Lowが幾つかによりますが、、、。
弓部置換、選択還流でも、
500ー600は流してたでしょ?
(1ー2本とか、圧とか、Invosとかもあるんだろうが)
全身に流して、、、
LowFlow。。。
脊椎は? 腸管は? 腎は?
胸腹部置換で、
数十分の腸管虚血にも、気を使うのに、、。
低体温だから、、、の一言で、
モニタリングなく、見過ごせるか??


ちなみに、、、
肺梗塞で、肺動脈をいじるのであれば、
体温は、20度程度を目安に、循環停止、した方がいい可能性はある。
選択的脳還流が出来ないなら、
20度、30分を目安としてもいいかもしれない。
一方、
このオペを、体温を26でやりたいから、ちょっとだけ流しとく?
っていうのは、
全くEBMはないが、実験的方法としてなら、
アリになる。
が、、、非倫理的でもある。


うーーーん、、
全くもって、、、
意味がわからん議論だ。。。

一言で言えば、ありえない。
術者の好みによる?
そういうもんではない。
確立された安全な方法があるのに
それを無視し、EBMのない好みを押し付けるのであれば、
それは医療でなく、実験だろう?

因みに、、、、
人工心肺でまず、賦活化されるのは、センヨウケイである。
希釈の影響をうけるのも、
まず、センヨウケイだ。
この辺は、言い出すときりがない。。


ふう、
こんなもんにしとこう。。
まとめずに書いたから、
よみにくかったら、ごめんね?