札幌学院大学のキャンパス。
佐伯ひかりは、経済学部の研究室を訪れていた。
「すみません、“MMT”について少し教えていただけませんか?」
対応してくれたのは、若い助教の女性だった。
彼女は驚いたように微笑んだ。
「MMTに興味を持つ女性、珍しいですね。どうして?」
ひかりは少し照れながら答えた。
「生活が苦しくて…でも、国って本当はもっと柔軟にお金を使えるって聞いて。
それが本当なら、私たちの暮らしも変わるかもしれないって思って」
助教は頷いた。
「そうですね。MMTは“国は通貨を発行できるから、財政赤字は問題ではない”という考え方です。
ただし、インフレを防ぐために“税”で調整する必要があります」
ひかりは目を見開いた。
「じゃあ…“税金=財源”じゃないんですか?」
「そうです。税金は“使いすぎを抑えるためのブレーキ”なんです」
その瞬間、ひかりの中で何かがはじけた。
「じゃあ、消費税って…?」
助教は少し笑った。
「松田学さんという元財務官僚は、“消費税ゼロでも財政は回る”と主張しています。
彼はMMTに近い考え方で、“国民に直接お金を届ける”ことを重視しています」
ひかりは思わず立ち上がった。
「それって…苫米地博士の“デジタル通貨”にもつながりますよね?」
助教は驚いたように目を見開いた。
「ええ、まさに。
苫米地博士は“期限付き地域通貨”を提案しています。
スマホやカードで、地域の店だけで使える。
しかも、使わないと失効するから、経済が回る」
ひかりは息を飲んだ。
「それなら…江別でもできるかもしれない」
助教は静かに言った。
「市民が声を上げれば、政治は動きます。
あなたのような人が、未来を変えるんです」
──その夜、ひかりは江別駅前のベンチに座っていた。
スマホを開き、岡市議のFacebookを見つめる。
「岡さんなら、きっと話を聞いてくれる」
彼女はメッセージを打ち始めた。
「江別の未来を、変えたいんです。
期限付きデジタル地域通貨──
それが、私たちの暮らしを守る鍵になると思います」
送信ボタンを押した瞬間、
ひかりの胸に小さな灯がともった。
それは、
“市民が政治に参加する”という、
新しい時代の始まりだった。
──佐伯ひかりの物語は、まだ始まったばかり。