何時厨小説館
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2011/07/16


「ちょっと!!聞いてんの!?」

マリナの黄色い声で現実に引き戻された僕は服の上から鳩尾あたりを撫でた。
あの時、アユムにもらった石。
あれから肌身離さず持ち歩き、人目に触れないようにしてきた。マリナでも知らない、僕と彼女の約束。
それが有る限り、繋がっているのだと、そう信じていた。
でも、あれから3年。本当にあれは気休めのさようならだったのだろうか…。

「もー。アタシ帰る」

「帰れよ」

「アンタに伝言があるんだけど。やっぱ教えない」

「え?」

「アンタのお母さんからよ」

「なんだよ」

「聞きたいの?」

2011/07/16

「明日、この島を発つわ」

振り返らずにアユムはそう言った。
紺碧の長い髪が風に遊ばれ左右に靡くのを見ながら僕は呆然とした。

そうだ。アユムは冒険者なのだ。こんなにも長くこの島にいたのが不思議なくらい。

「盗賊団、見つかったの?」

「うん」

「そっか…」

夕日に染まる景色と染まらないアユム。
そこだけ光が当たってるかのように、アユムはアユムで碧いままだった。

「必ず、また会おうね。必ず」

そう言って僕の首に革紐に繋がった薄青色の石をかけてくれた。

「それまで、持ってて。誰にも内緒で」

そして、状況を把握しきれていない僕を置いてアユムは去っていってしまった。

2011/07/16

彼女はアユムと言う名前のハンターだった。

あれから毎日の様に北の岬で僕らは会い、時には狩りを教わって過ごした。
アユムはイシュタールという街の生まれで、両親は交易商を営んでいたらしい。
当然自分もその後を継ぐと思っていた矢先に、彼女の家の家宝とも言われていた宝石が盗賊の手によって盗まれてしまったのだそうだ。
両親はすぐにギルドに調査を依頼したが、盗賊の消息は掴めず、捜査は打ち切りになった。ひどく落胆した父親は病に倒れ他界、そしてすぐに後を追い、母親は自らの命を絶った。
残されたアユムはギルドに引き取られ、年月を経る毎に盗賊団への復讐心が強く芽生えたのだとか。

「でもね、虐殺とかは考えてないの。だってどんなに悪人でも死んじゃったら悲しむ人がいるよね…。だから、盗り返すことにしたの」

悪戯っ子のように片方の唇の端だけ上げて笑うアユム。

「でもお父さんとお母さんは…」

「違うのよ。お父さんもお母さんも、盗賊に殺されたわけじゃなくて、自分が自分を殺したの。弱い人だったのよ」

3代続く交易商だったアユムの父親は、親から莫大な財産と会社を受け継ぎ、苦もなく地位を手に入れた。そして、仕事は部下に任せ、左団扇だったのだそうだ。

「ヒダリウチワって?」

「楽してたってことよ」

「じゃあミギウチワは忙しいの?」

「知ーらない」

日を追う毎に僕らは仲良くなっていった。

僕はアユムからたくさんの事を聞き、僕はアユムに島のことを教えた。

僕の好きな場所や時々アイテムを拾う場所、隣町のフランソワ婦人のペット『マロン』の隠れ家とか。そんな些細な情報を、アユムは好んで聞いてくれた。

そしてある夕方。

僕は彼女に呼び出されて岬へと行った。
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