クレームといっても、その意味合いを含む事例は非常に広いと感じておりまして、
いわゆる商取引に関係した異議だけでなく、単なる不満や憤まんといった、個人的な感情からくるものについても、クレームという言葉の枠に含まれるのであります。
たとえば、
「牛丼出せよ! なんで食べられねぇんだよ!」
調べたら、2004年のことでしたか。
アメリカでBSEにした感染した牛が見つかって、政府が米国産牛の輸入を止めてしまった騒動。
このあおりを食ったのが、牛丼チェーンだったんですね。いわゆる「早い・うまい・安い」を実現できたのは、適度に脂身があって牛丼の具に適している米国産牛だったわけですから、この騒動は日本中に大きな衝撃を与えることになりました。
で、大手チェーンは材料が調達できず、一時的に牛丼の販売を止めなければいけなくなったんですけど、
牛丼店はほぼすべてが「24時間営業」ですから、営業中のどこかのタイミングで店員さんが「ここで牛丼終わります!」と言ってメニューから外さなければならない。
あくまで、今思えば、ですが、
これ、店員さんに酷なことをさせたよなと感じます。
時代が許さなかったのかもしれませんが、24時間営業にこだわることなく、数時間でもお店を閉めて仕切り直しをしたほうが、いろんな意味でスムーズな営業につながったのは間違いありません。
しかし当時は、お店を開けた状態で客に「牛丼ストップ」を告げ、厨房から片づけるという大変な対応を現場は求められたわけです。
牛丼販売停止の日時をまたいだ時点で店内には「牛丼を食している客」と「牛丼を食べている客がいるのに、牛丼を注文することができない客」が混在した状況も、お店にもよりますが、あったことでしょう。
さらに、いくつか限定されますが、
券売機ではなく、店員に口頭で注文を伝える形式のチェーンだと、
「牛丼を頼めないのはもう仕方ない」と客に分からせる、明確な歯止めが何もないことになってしまいます。
牛丼一旦終了のアナウンスを、素直に聞いてくれる、従ってくれるお客さんばかりなら良かったのですが、
当時、牛丼が食べられない怒りを店員にぶつける客とのトラブルが、各地で起きてしまいます。
暴言のみならず、器物破損や暴行にまで発展したケースもあり、刑事事件もいくつか報道されました。
深夜でしたし、酒に酔っている客もいたということで……この流れも想定できたといえば、できたはずです。
たやすく来店拒否などできない状況で、客の文句や罵倒をすべて受け止めなければいけないツラさは相当なものだったかと思います。
後年、深夜の「すき家」を狙った強盗事件が頻発した時期もありましたが、
会社側のポリシーと、店舗運営の現状と、利用客の欲求。
この3つがうまく噛み合わなくなかったところの綻びから、いろんなトラブルが生まれるのではないかと感じます。
当時捕まった犯人が「ネットを見て、自分もできると思ってやった」と供述したニュースを見た時に思ったのは、
もうお客さんは、たとえば吉野家の牛丼とかすき家のカレーとか、自分が食べるもの、食べたいものだけを考えてお店を見ているわけではないんだなと。
24時間営業の外食チェーン店というのは、マネージャーや社員といった、何か起きたらすぐ対処できる人間が常に貼りついているわけではない環境にあります。
そしてお客さんも、運営管理が少なからず手薄となりがちな状況に陥っていることを把握できる時代になったのです。
私の持論ですが、
客足が少ない時間ほど、接客リスクは大きくなる。
だから本来、閑散時のワンオペは偉い人がやるべき。
店内にお客さんがいないから、周りを気にせず大声を上げられる、罵倒できる、手を出せる……弱い人間なんて、そんなもんです(だから酒に酔って暴れる客も出てくるのかもしれませんが、なおさら責任ある人が対峙したほうがいい気もします)。
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