ミラーニューロンという脳の神経細胞は、「ミラー(鏡)」という名前の通り頭の中で誰かのモノマネをする特徴があります。
例えばAさんが手を動かす時、Aさんの脳内では当然「自分の手を動かしている時の反応」が出ます。
だけどそれをBさんがぼーっと見ていた時、見ているだけのBさんの脳内でも「自分の手を動かしている時の反応」が現れるんですね。
そしてこのミラーニューロンは、人体の動きだけではなくて、頭の中の感覚もモノマネするんじゃないかと言われています。
面白いですよね。
この仕組みがあることによって、
人の「お悩み」をどう捉えるか?が全く変わってきます。
「嫌なあの人のことをいつも思い出してしまう」、というお悩みがあった時、
例えば、
「感情をその場で適切に表出(処理)出来ていないのではないか」という考え方もできます。
その場で「不快」という気持ちをしっかり感じることが出来なくて、後から思い出して嫌な気分になったり、人によっては具合が悪くなってしまうことがあるからです。
そして、「なぜその人がそんなに嫌なのかな」と考えてみると、例えば「何かトラウマがあるかもしれない」となります。
それならトラウマ治療をしたり、「その場で感情を感じられない」事へアプローチをしていくと、だんだん「あの人のことを思い出さなくなる」かもしれません。
これらは全て、原因が自分の中(脳の働きや過去の経験、心の傷など)にあるだろうという前提の見立てです。
しかしここに、ミラーニューロンの仕組みを取り込むと、
「それは本当にあなたのものなのか?」という疑問が出てきます。
つまり、「嫌なあの人のことをいつも思い出してしまう」のは、
私が思い出しているのではなくて、「あの人」が私のことをいつも考えているかもしれない、という可能性について検討する必要があるということです。
あの人が私のことを考えているから、ミラーニューロンによって私も鏡のようにあの人のことを考えてしまうのかもしれない。
この視点は、自分が悩んでいるのに自分の悩みではないということになるので、なかなか受け入れにくく感じる方もいらっしゃいます。
ただ、普段から心理療法がしっかり効くタイプの方に「これだけは改善しない」というお悩みがあった時、「他人の脳を受け取っている」というミラーニューロンの仕組みを取り入れることで改善した例も実際にあるのがちょっと面白いところです。
人の脳って一体どうなっているんでしょうね。
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※このブログ内に登場するエピソードは特定のクライアントさんの経験談とは関係ありません。