前回の続きです。
クライアントのAさんは、元々の相談内容が過去のいじめについてではなく仕事についてです。
Aさんは月に2回ほどカウンセリングを受け、どうしても落ち込んでしまう時に追加でもう1日いらっしゃる方でした。
仕事に対する不安感への対処が急がれたため、しばらくはいじめについて深く触れない日々が続きます。
仕事に対するトラウマ治療を始めて数か月ほど経った頃、
ちょうど仕事に対する悩みと過去のいじめに共通点が見つかったので、「どんなことをされたんでしたっけ」ともう一度Aさんに聞いてみました。
「基本は無視されたり、陰口を言われて笑われている感じ。友人が出来たと思ったら、その友人がいじめの子に私が何を言ってたか全部報告していたり。体育のサーブとか、授業中の発言とか、私が一人で何かするときにクスクス笑われたりもしてました。中1の時に靴とかカバンを隠されて誰にも言えずに帰ったり、知らないうちに私がいじめをしていると先生に告げ口されていたみたいで先生にも怒られました。それから…」
そこからAさんは、カウンセリング時間の半分以上を使ってAさんが中学生の時にされてきた事をおそらくほとんど吐き出しました。
今回はAさんは泣いていません。
その代わり全身が尋常ではないほど震えています。
「なんか震えが止まらないんですけど…」
と震える声で言ってAさんは笑っています。
全身の震えは、きっとAさんの怒りです。
いじめのトラウマはまだ治療していなかったけど、仕事の不安感への治療や「人に話す」という経験を経て、Aさんは自分の感情と記憶を取り戻しつつあるのかもしれません。
そう思っていると、Aさんが教えてくれました。
「記憶が鮮明になって、自分がどんなことをされていたのか思い出せたんですよね。ものすごくつらいわけではないけど、とにかく体が震える。そっかあ、怒りかあ…。私はずっと怒っていたんですね。」
そこからいじめのトラウマ治療をしたら、Aさんの表情がすっきりおだやかになっていました。
「胸がすっとして、視界がはっきり見える感じがした」そうです。
ここまで話題に上りませんでしたが、Aさんには「怒りを感じちゃいけない」という強固な力が働いていて、自分が明らかに被害にあっている場面でも「私も悪かったから」と思おうとする仕組みが出来上がっていました。
トラウマは、一番大事な物を隠して、その上にいろんなガードや目くらましを設置します。
なので、トラウマを消化することによってガードや目くらましも撤去されて、本来の自分に戻ることが出来ます。
その後Aさんに、何か変化がないかお聞きしたら、
「毎日21時までに入浴を済ませられるようになった」らしいです(笑)
いじめのトラウマがそんなところにつながっているのか、と私もびっくりしました(笑)
あとは「複数人でいる時に感じる不安が減った」「断れるようになった」ということも教えていただきました。
トラウマ治療をすることで、全員が記憶を取り戻すわけではありませんが、
心の中は確実に変化をしていきます。
トラウマ治療には、本来の自分に戻る心地よさがありますね。
※クライアントさんご本人からお申し出をいただき、このブログを書いています。
許可なくクライアントさんのカウンセリング内容を記載することはありません。
*このブログは毎日19時に更新されます
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