私はそのとき、飢えに飢え、渇きに渇いていた。
熱病にやられたのだろうか、身体はだるく、
意識が朦朧としており、
自分が今どこにいるのかわからないほど
遠くまでやってきてしまっていた。
名も知らぬスラム街を歩いていると、あばら家と、
より飢えて貧しい子供たちがひしめきあっていた。
その光景が私の目の前を、
永遠とも思えるほど長い時間続いた。
何が悲しいのかはわからなかったが、
しまいには自分が悲しいのか、
悲しみが自分なのかすら
わからなくなっていた。
ふと気づくと街外れの小川にたどり着いていた。
美しいバラモンの青年が一人、私に近寄ってきて、
籠にいっぱいの魚を与えてくれた。
私は一見してそれをすべて川に返した。
彼はその行為を見るともなく見てから、
静かな笑みをたたえ、
背をむけて森へ向かって歩いていった。
そして私は何のためらいもなく川に入った。
とにかく胸が痛む。
朦朧とした意識で川の中へ入っていき、
流されるままに川を下った。
どうしても私のなかにある悲しみが去ることはなく、
川はいくつかの流れを従えながら、
私にはどうすることもできない勢いで流れていった。
気づけば滝のほとりで、
ほとんど丸裸に近い状態で倒れていた。
悲しみは去ることがなく、
ただ、まだ自分が生きていることに
不思議な気持ちでいると、
私は私である部分であったものとは
違った私に導かれて森の中へと
入って行った。
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