現実を捉える2通りの視点 | チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる

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この世に生まれて間もなく、人は「ものがたり」と出会い、そこで広い世界とのつながりを作ります。このblogでは、「ものがたり」と共にある人の可能性を探求していきます。

 

ジェローム・ブルーナーという

心理学者によれば、人の現実認識には

2通りの仕方があるのだそうです。

 

一つは科学や法則、実証性やロジックに

焦点をあてて現実を捉える見方。

観察とか論理性を重視します。

 

もう一つは、

人間の意図や想い、感情の変化、

人の生き方や在り方に関わる義や徳、

価値観などに焦点を当てる見方。

 

現実をストーリー的に捉える見方

とも言えます。

 

例えば、目の前にあるコップを見て、

 

色やデザイン、

素材やその加工の方法、仕上がりの具合、

購入価格などから、

コップの価値を判断しようとするか。

 

コップを手に入れた経緯や、

その後の使用の歴史に現れる想い出、

そこと繋がる人との関係などから、

コップの価値を見ようとするか。

 

前回紹介した

空調機器の購入を考えているX社の

ケースでは、

 

機能や使い勝手、材質や耐久性、

価格などに焦点をあてて、

自社製品の売り込みを行った

A社、B社、などが、前者の視点。

 

目指す未来と、X社の取り組みに

リンクを張って、

価値観や働く人間の想いを浮き上がらせた

R社のアプローチが、後者の視点。

 

こちらはストーリー的な面を

焦点化することで、

“その他大勢”と異なるポジションを

獲得できており、プレゼン的には

成功と言っていいのだと思います。

 

前者の視点を「科学・実証モード」、

後者を「物語モード」と呼んで整理すると、

 

1.普段あまり意識していないけれど、

私たちはものごとを

「科学・実証モード」と「物語モード」

の二つの見方で見ている。

 

2.企業とか役所等の場では、殆ど自動的に

「科学・実証モード」が優先されており

「物語モード」は、あまり重要でない、

検討に値しない事として

軽視される傾向が強い。

 

と言うことは、出来ると思います。

 

仕事の場で「科学・実証モード」が重視される

のは当然で、

これに代えて「物語モード」を優先せよ、

という気は毛頭ありません。

 

とはいえ、「物語モード」は、

ビジネスの場などでもっと重視され

活用されてもよいと、私は思います。

 

R社のアプローチは「科学・実証モード」に

基盤を置いて、

その上に「物語モード」を押し出して

ユニークなポジションを得ている事例です。

 

こんな風に

「物語モード」には交渉を優位に進める

手段的意義が認められますが、

私はむしろ以下2つの理由から、

日本のビジネスマンはもっと「物語モード」の

語りに長じていくべきだと考えています。

 

一つ目は、人間の顔が感じられることです。

「科学・実証モード」は

客観的なデータや実証に基づく為、

信頼性と言う意味では圧倒的です。が、

残念ながら人間の顔が殆ど見えてきません。

 

そもそも、

人間の顔を出さないようにすることで、

科学性や実証性を担保しようとする発想なので、

これは当然の話ではあります。

 

ですが「科学・実証モード」の優勢が

仕事の中の人間的な繋がりを

どんどん希薄にしていく

根本原因であることは、

意識しておくべき重大事だと思います。

 

そして一方の「物語モード」が、

岐阜工場に働く人々の

笑顔や息吹をどこかに意識させる

魔力を秘めていることは

覚えておくべきでしょう。

 

二つ目は、純粋に面白いことです。

 

そもそも私たちは

物語的世界に生きている動物です。

過去の出来事に因縁を感じ、出来事、出会い、

偶然から未来に向けて展開する人生こそが、

ワクワクドキドキして

面白いことを、

誰もが経験的に知っています。

 

「物語モード」には、

必ず人間や出来事との出会いがあります。

語られる内容を通じて聞き手と人間や出来事には

何らかの「関係」が生まれ、その関係が、

それからどう展開していくかは、聞き手の

判断や行動と無縁でなくなる性格を持っています。

 

仕事でも日常生活でも、

こうした展開の要素がどれだけあるかは、

人生の質に影響すると言ってもいいかもしれません。

 

上に「科学・実証モード」の信頼性は圧倒的、と

書きましたが、

空調機器の例の如く、

そこでの比較が決定打にならないケースは

現実に多くあります。

 

また“実証”と言っても、

全てのデータが揃って判断するようなケースは

現実世界ではむしろ稀であり、

「科学・実証モード」は思ったほどには

使えていない、という実態も

改めて意識しておくべき点だと思います。

 

職場の中で“非公式”な領域に押し込まれてきた

物語モードの活用範囲は、

VUCAと言われる今の時代に、

もっともっと

領域を拡大させてもよいのだと思います。