「体験」から「資産」へ、ストーリーづくりの3つのステップ | チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる

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この世に生まれて間もなく、人は「ものがたり」と出会い、そこで広い世界とのつながりを作ります。このblogでは、「ものがたり」と共にある人の可能性を探求していきます。

 

構造化されたストーリーが

「類推」の基盤として働き、

それが思考の質を高めていくと前に書きました。

 

そうであるならば、

日々積み上げている無数の「体験」を、

“構造化”されたストーリーに編集していくことで、

私たちの思考の基盤は強化されることになります。

 

“体験という資産”に磨きがかけられる訳です。

 

今回は、私が企業向けの研修で提供している

“体験”から“構造化ストーリー”へと編集する

3つのステップを、ご紹介しようと思います。※

 

少し長くなってしまいますが、

お付き合い頂ければ嬉しいです。

 

3つのステップとは、

1)再生(振り返り)

2)構造化

3)5段落への落とし込み(再ストーリー化)

です。

 

1)の再生は、過去を振り返って語ること。

つまりストーリーテリングです。

 

出来れば2-3人の仲間と代わるがわる語って

お互いに聞き合うといいのですが、

 

ここでは文字起こし機能の付いたボイスメモを使って、

一人で進める方法をお伝えします。(MS ワードの

ディクテーション機能で出来ます)

 

予め問いを3つ用意しておきます。内容は、

 

①    現在の自分(仕事力、性格、自信、評価、等)に

つながっている重要な体験を一つあげる。 

それはどんな体験だったか?

②    場面場面で何を考え、何を感じたのか?

③    改めて、その体験から得られたものは何か?

 

語る際は、後輩とか友人とか、

どなたかの顔を思い浮かべ、その人に向けて語る様にします。

 

その様にするのは、自分では分り切っている部分も

あえて言語化しておくためです。

 

ひとつの問いに対して5-7分を目安に、

思いついたまま言葉にしていきます。

 

語るうちに問いと直接繋がらない話が浮かんでも、

それを含めて語っていきます。

 

時間は目安なので、オーバーしても構わず、

浮かんできたものは全て語りきる様にします。

 

ステップの2番目は構造化です。

1)で語った内容を文字化し、これを編集していく作業です。

 

構造化の中身はここまでに述べて来た通りなので、

重複は避けますが、

以下2つの点には、意識を向けておく必要があります。

 

一つ目は

“達成”に貢献した要素をすべて表に出すことです。

 

体験を客観視して、

貢献要素とそれらの因果関係を洗い出す、

すなわち“構造”をしっかり捉えることです。

 

二つ目は、

“心の風景”に意識を向けることです。

 

ストーリーは“出来事の風景”と“心の風景”の両方から

出来ています。

 

そして、

ものごとを成功させたり、達成したりする上では、

この両方の課題が克服できていなければいけません。

 

…と、心に決めて取り組んだ、

…が力強く背中を押してくれた、

…に慰められた、等の心の状態も

“構造”の一要素になるものです。

 

3ステップの最後は

5つの段落に落とし込む“ストーリー化”の作業です。

 

5つとは、

 

(1)   背景・経緯

(2)   課題の出現、新展開の開始

(3)   事態の展開、意図と感情の変動

(4)   決着、クライマックスシーン

(5)   体験が自分にもたらしたもの、意味づけ

 

実際には順番が変わったり、

部分的に省略されたりもするので、

この通りにならないケースは多いのですが、

ここでは基本形として示しておきます。

 

重要なのは体験を、

ここで示した5段落の枠組みに落とし込んでいくことです。

 

“構造化”作業で引き出された“出来事”と“心”の諸要素を

(2)(3)(4)のストーリーの中に

反映させるようにします。

 

(1)(2)で見えていたものが

(3)(4)で大きく変わったり、

新事実が出てきたり、

脅威に打ち勝ったり、と、そんな具合に

展開させていくことになります。

 

ここの作業は少し骨が折れるものですが、

しばしば新たな発見を生みだす最重要プロセスです。

 

ここまで終えたら(5)に進みます。

 

成功の要因を一言でまとめたり

その体験が自分にもたらしたものを確認したりします。

体験の意味が、

ここで最終的に言語化されることになります。

 

多くのケースでは、

一連の作業を通じて発見されたものが(5)に反映され、

新たな意味を帯びた体験として記憶に残ります。

 

ここは、やってみて初めて気づく部分ではあるので、

是非体験してほしい、としか言いようがありません。

 

ある程度の仕事経験を積まれた方なら、

 

・社会人になりたての頃の学び

・試練を乗り越えた体験

・充実を感じた協働体験

・忘れられない葛藤体験

・管理職としての苦労、

 

などを上の手順でストーリー化すると

思いもよらなかった色々な発見が起きてきます。

 

体験をストーリーという形の形式知にしておく事は、

独自の知識資産の形成に間違いなくなると思います。

 

なお、ここまでで、

気づかれた方も多いかもしれませんが、

 

編集されたストーリーは、

後輩や同僚に知を継承するメディアにもなります。

 

後輩たちが無駄な回り道をしないようにしたり、

彼らに新しい発想の材料を提供したり出来る

大きな貢献ポテンシャルがあると思います。

 

その観点を入れて私の1日の研修では、

後輩や同僚に語りやすいサイズとして、

ワンストーリー800-1000字を目安に作ってもらっています。

 

以上、

今回はストーリー化の3ステップを紹介いたしました。

 

ご自身の「知」のアップグレードの為にも、

また、自分の経験の知を世の中に役立てていくためにも、

 

多くの実践者が、自身の体験をストーリーにしていく、

こうした作業に取り組んで下されば、と思います。

 

 

 

※上記は「ストーリー伝承力」という1日の研修として

実施しているものです。