“ナラティブ”の不思議な力 | チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる

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この世に生まれて間もなく、人は「ものがたり」と出会い、そこで広い世界とのつながりを作ります。このblogでは、「ものがたり」と共にある人の可能性を探求していきます。

今週日曜日に第26回仕事知探求セミナーを開きました。

 

 

企業研修の世界では、

リーダーシップ開発、キャリアデザイン、組織開発等、

様々な領域で“ナラティブ”は頻繁に活用されています。 

 

今や定番メニューの一つと言っていいでしょう。

 

私自身も、自ら手掛ける伝承力研修やリーダーシップ研修の中に、

様々な形の“ナラティブ”を入れています。 

 

ですがそれが何故有効なのか、ナラティブのどんな特性が

どのような効果を生んでいるのか、

あまりちゃんと理解できていないままで、続けてきた感があります。

 

今回のセミナーでは、そのあたりの解明を(ほんの一部分ですが)

目指しました。

 

まずはセミナー参加者に、ペアでの語り(ナラティブ)を

体験頂きました。

今回の語りは「今の自分にとって重要だった学習体験」です。

 

“お一人18分づつ語って頂きます”

 

そうお伝えすると、

 

18分も一体何を話せばいいの??”

 

と、不安そうな声が上がります。

 

ですが、一旦語りを始めてしまうと、皆夢中に語り始め

終了のベルが鳴っても語りは中々止まりません。

 

場の空気も、じんわりと熱気を帯びてきました。

 

“思ったより色々話せるものだと思った”

“18分があっという間だった”

“問題は解決してないけど、話したらすっきりした”

 

ワーク終了後の感想です。

 

あるペアで一人の方が、

“パートナーの語りを聞いているのに、

その語りが自分のことの様に感じられた“

 

と話すと、

相方の方も、

“パートナーの話から自分の話が色々引き出された”

と語られていました。 

 

「共感」という言葉を私が使うと、

二人とも“んっ?”という感じ。 

 

どうも「共感」では言い表せない共感以上の感覚が

生まれていた様でした。

 

ナラティブの世界では、

「語りが“自己”を創る」とか、

「語りが“世界”を創る」などと、言われます。

 

語り手がパートナーに語っている内容は、

語り手が予め用意している(出来上がった)内容ではなくて、

 

語りながら自分が徐々に創られていき(物語的自己)、

語りながら世界が徐々に生み出される(世界が

どのように出来ているのかの了解が生まれてくる)

としばしば説明されています。

 

また、

「語る内容は“共同生成”される」とも言われます。

 

語る当事者は一人であっても、実はその場にいる聞き手の

影響の下に語る内容が創造されてくる、ということです。

つまり聞き手が違えば語られる内容も変わりうる、

ということになります。

 

上のペアのケースも、

語り手、聞き手の境界線が、途中から無くなって

相互に影響しあいながら、双方の語りが

共同で構築されていったのかもしれません。

 

上に「物語的自己」と入れましたが、

 

過去に起きた体験を語るなかで私たちは

 

様々な他者や外の環境とやり取りし、

都度不安になったり苦しんだり、

一方で喜んだり充実を感じたりした挙句の

“今の自分”が、見える様になるのだと思います。

 

語ったあとにすっきりするというのは、

語りの中で現れる物語の中の自分という、

 

“出来立てほやほや”の自分と出会って、

自己理解が強化されている感覚なのかもしれません。

 

リーダーシップも、キャリアデザインも、組織開発も、

いま現在の自分が素材になるので、

 

“出来立てほやほやの自分”

“出来立てほやほやの世界“(組織とか業界とか)を

 

しっかり捉えておくことが大切なのは、

言うまでも無いでしょう。

 

ナラティブの意義や効果を一義的に決めることは

出来ませんが、

今回セミナーで私が実感できた一つの収穫は、

 

“出来たてほやほや”の重要性でした。

 

ご参加の皆様、誠にありがとうございました。