ハザマランド -11ページ目

11月6日

 今夜は新月。余計なことは言わず、後悔のないようにと願う。

空から空へ


 写真集、学園祭、ショートアニメ、栗ご飯、まどろみ、金木犀。
 知人のブログで気分転換して、自分の物書きへ戻る。
 ただいま午前2時22分。
 ふと思い立って写真を一枚添付。
 2本線の飛行機雲。
 別なサイトで同じものを見つけた人はラッキーの兆しありかも。
 キーワードーは「Out Of Sight 」
 さて、もうひとふんばり。


ハザマランド

木に立って見る

 とある木の根もと。重なる枝葉を見上げて幼い彼女は叫んだ。
「そんな高い所にいないで、下りて来て登らせてよぉ。見てるだけなんてずるいずるい」
 それから数年。右手に紫の花、左手に猫の人形を握って、おしゃまになった彼女が声を上げる。
「木の上なんて退屈そうね。それより下に来て一緒に遊びましょ。思いっきり走れるし、寝転がれるわよ」
 さらに数年。彼女は背中を木にもたせかけて、髪の毛先を人差し指に巻きつける。
「そこはどんな所? こっちは楽しかったり辛かったりするけれど、そっちも一緒?」
 また数年。浮き足で踊る彼女。長い足を器用に交差させている。
「ようやく私も木に登れる日が来たわ。大切な人ができたの。ねぇ、同じ高さで話せる日は来ると思う?」
 そして数年。涙が落ちた。彼女は近くの細い枝を握り締める。
「あぁ、もうイヤ。彼にも、彼女にも、あの子にも、私はなれない。気持ちなんてわからない。私は私でしかない。何も出来ない」
 続けて数年。太い枝の上に立って彼女は目を細めた。口角が上がっている。
「風が吹いたの。葉っぱが流れていったわ。ここは遠くまでよく見えるのね。下ばかり見ていて気がつかなかった」
 残り数年。輝く瞳。熱こもる声。彼女の本気。
「どうしても伝えたかった。だからこれまで見続けた全てを使って考えたの。別々の存在だから見えるものがある。私は私で、彼らは彼ら。それでいい。それがいい。ちゃんと伝わっていますように」
 最後の年。揺れる木漏れ日が彼女を照らす。青空はどこまでも澄み渡っている。
「幹が伸びて、枝も伸びて、やっと真横からあなたの顔を見れた。ほら、下でむずかってるあの子が見える? 昔の私みたい。うん。わかってる。ちゃんとやれる。だから安心して吹いて。どこかで悩んでる新入りさんに遠くを教えて上げて。また会おうね。少しだけさようなら。私の親友」
 風に吹かれて涙が舞った。彼女は空を見上げて笑っている。





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イカスじいさん

 みなぎ得一 「足洗邸の住人たち 第09巻」 ワニブックスより引用


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 自分を下に縛れば縛るほどそういう人間になってまうぞ!!


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 下を上と入れ替えても通じる言葉。
 どちらであれ知らず知らずに自分を貶めてしまうことは少なくない。
 傲慢にも卑屈にもならずに均衡を保てればいいのだけど、これがまた難しい。
 誰でも動かずには生きられない。動けばバランスが取りにくくなる。そして転ぶ、落ちる。痛いのは嫌だから縛って固定したくなる。そのまま動きが鈍くなって活きられなくなる。
 つまるところ目先の痛みを恐れずに、バランス上手を目指すのが回り道でも近道なのかもしれない。
 そんなことをぼんやり考えた敬老の日。
 縛られたじいさんより綱渡りのうまいじいさんになりたいなと思った。

方言

 小説で方言を用いると、場の雰囲気が出やすいですが、多用すると他の土地に住む人には通じなくなります。だからといって、注釈を入れると文章のリズムを崩してしまう。

 標準語との配分が難しいですね。

 言葉の意味を損なわず、土地の香りを立たせたものが書きたいです。


 みちのく怪談投稿

 新たな民話

長月

 九月ですね。長月です。

 新暦では旧暦と一ヶ月ほどずれがあるものの、少しずつ夜と雨と稲が長くなっていく季節です。

 そんな風に長い目で見てくれる友人達に感謝しつつ秋を迎えたいと思います。

 そしていつか必ず実りを届けたいと思います。

残暑お見舞い申し上げます

 友人を見習ってブログの更新。

 夏の背中を追いかけパチリ。


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つぶやき

 投稿が滞って二ヶ月ほど経つツイッター。マシな一部を抜き出して転載保存。



04月10日(土)

 雨上がりの朝。濡れたアスファルトがまだらに発光している。穏やかな風が吹き抜けて、木の葉の滴が落ちた。散策日和。


04月12日(月)

 とある方のつぶやきに「夜桜、お稲荷」の文字を見つけた。あぁ、これはいい相性だなと、石の狐像に降る花びらを思い浮かべる。


04月13日(火)

 麗らかな昼下がり。通りがかった団地では、整然と並んだ洗濯物が風に揺れていた。町はのどかで、遠くの列車がさらに遠くへ走る音が聞こえた。タタン、タタン。タタン、タタン。


04月15日(木)

 深夜の雨はよく響く。目が覚めた。起きたついでに喉を潤そうと、三ツ矢サイダーをコップに注ぐ。透けた底から気泡が浮き上がって小さく弾けた。ゆらゆら、ぱちぱち。ゆらゆら、しゅわしゅわ。甘い後味とともにもうひと眠り。


04月16日(金)

 久方振りに松井冬子の画を鑑賞。地上の桜花と水面の桜花。一対になった櫻の渦に飲み込まれそうになる。


04月18日(日)

 夕闇と宵闇の共通点を考察。鍵なる言葉は視界の隅の月。


04月19日(月)

 雨音の間を縫って、六時のチャイムが細く届いた。水たまりの波紋は絶えず混ざり合っている。


 香道で用いる志野袋の口は、月々の花の形で結ばれている。梅や菖蒲の花結びなんて初めて見た。香りを愉しむための粋な計らい。道が付くのも納得。


04月20日(火)

 蜘蛛の巣についた丸い滴が仄暗い空を映している。今朝も雨。


 傘のいらなくなった昼下がり。雲の分け目の青空を、ひこうき雲が斜めに上がっていった。


04月21日(水)

 霧の朝。幹の霞んだ杉の木がいつもより濃く見える。黒々とした緑。微かに雨の匂いがした。


 窓の明かりは家に寄って違うのだなと、夜の町で立ち止まる。雨粒が傘を打つのを止めた。流れる水と走り去る車。湿り気を帯びた夜気を吸う。見えにくい散歩も悪くない。


04月22日(木)

 朝からずっと雨。青いバケツの水面が踊り続けている。


04月23日(金)

 ゆるやかに流れる雲の下で、鯉のぼりの尾が揺れる。膨らみ出したその腹を撫でるように燕が抜けた。


04月24日(土)

 夕刻。燃え立つ色の歩道橋から金網越しに西を眺める。同じ色の電車がでかい夕日に向かって突き進んでいた。


 今夜の月はやけに明るい。帝釈天のために身を焼いた兎の煙がよく見える。


04月26日(月)

 皆が次々と横になる零時過ぎ。閑かな部屋でまどろみながら、今日、布団を干した人はどれほどいて、日溜まりの匂いを嗅ぐ人はどれほどいるのかと、たわいない疑問を浮かべる。そんな週の始まり。昼寝をした自分に抽選券は配られない。


04月27日(火)

 フードを被った幼稚園児が水たまりに映る自分を蹴っていた。黄色い雨靴から飛沫が上がった。


04月29日(木)

 本日は美声で名高いあの人の足跡を辿る。図書の館へいざ行かん。


05月01日(土)

 早朝の城下町跡。石垣と生垣の間の一本道を無言で歩く。道の端で丸まった猫が大きなあくびをした。グッモーニン。


 夜の地下鉄。まばらな車両に乗り込むと、黒い窓に映る自分と目が合った。笑えよ。


05月02日(日)

 緩やかに気温の上がった昼下がり。冷えたビワを頬張ると、控えめな甘さが舌を洗った。初夏の風が窓から窓へ吹き抜けて行く。


05月03日(月)

 汗ばむほどの昼下がり。扇風機の羽を洗った。軽く拭って、組み立てて、弱のボタンを押し込む。形のない掌が頬を撫でた。今年もお世話になりまする。


05月06日(木)

 蕾の開きに見向きもしなかった少年と、本を開くことのなかった少女。二人が知らない魅力を覚えて、数十年後に出逢ったらどんな言葉を交わすのか。そんな物語を読み進めている。


05月08日(土)

 少し早いが軒先に風鈴を吊るした。夕暮れ前のそよ風を受けて、水色の短冊が揺れる。地面に落ちた木漏れ日も、煌きながら揺れている。ちりぃん。


05月10日(月)

 吉田良一と天野可淡の作品集を借りる。どちらもその世界にその人ありと言われる人形師。彼らが生んだ虚ろでない虚ろにしばし見入る。どれもが、誰もが、眠りながら起きている。


05月12日(水)

 朝。東の窓から差し込んだ光が西の壁を柑子色に染めた。カーテンの隙間を長く伸ばした形。壁の前に立つと目が眩んだ。目映い隙間に白い円環が浮かんでいる。


05月13日(木)

 灰色の朝。街灯のオレンジはまだ消えない。落ちる前にもいでしまいたくなる。


05月23日(日)

 雨を含んだ紫陽花が貴やかになっていく。立ち止まる雨脚に、花を見下ろす男を思った。黒い外套と鳥打ち帽子が似合いそうだ。

第8回ビーケーワン怪談大賞応募作品

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