「円形ではないのに、円形脱毛症?」
円形脱毛症には、
円形の脱毛班を作らない様々なタイプがあります。
その中で、
頭全体の髪がびまん性(広い範囲にわたって)に、
急速かつ大量に抜けていく重症型ですが、
予後は良いことが多いとされている病型があります。
そんな、
「急速に進行するのに、回復しやすい」
びまん性の円形脱毛症
acute diffuse and total alopecia:ADTA
について調べてみました。
発症初期などでは、
ADTAであることが分かりにくい場合もあるようです。
なので、
脱毛症に詳しい専門医にしっかり診てもらい、
脱毛の状態を正しく評価してもらうことが重要だと思います。
また、
「なぜADTAは、急速に脱毛しても、その後に急速に回復していくのか?」
をテーマにした研究があり、
ADTAでも「制御性T細胞(Tレグ)」
( 暴走する免疫を抑える働きを持つ免疫細胞 ) が、
回復に関わっている可能性が示されていました。
ADTAだけでなく、
円形脱毛症の回復のカギの一つは、
Tレグの働きにあると思われます。
※円形脱毛症とTレグの関係に興味がある方は、
目次の「8.円形脱毛症の回復の鍵は『Tレグ』!? ADTA研究から」
をクリックすると、その項目に移動できます。
【 1.円形脱毛症 】
: alopecia areata
: AAは、
免疫系や毛包(髪をつくる組織)の性質に関わる遺伝的な「なりやすさ」を土台に、
生活環境や精神的・肉体的ストレスなど、
さまざまな要因が重なって発症する多因子性疾患です。
本来は体を守るはずの免疫細胞が、
何らかのきっかけで誤って毛包を攻撃してしまうことで、
脱毛が起こる自己免疫疾患と考えられています。
円形脱毛症には様々なタイプがあり、
円形の脱毛斑でなくても、
毛包に対する自己免疫反応による脱毛であれば、
円形脱毛症に含まれます。
参考にさせていただいたサイトなど
円形脱毛症 診療ガイドライン2024
自己免疫疾患プラス
日本ウェルネス再生クリニック
大正製薬 健康ナビ
【 2. 急速に頭全体から抜ける特殊な病型「ADTA:急性 びまん性 全頭 脱毛症」 】
円形脱毛症には
髪が、急激に境目なく頭部全体からびまん性に抜け
最終的に80%以上〜全頭の脱毛(頭髪の全てが抜ける状態)となりますが
その後は急速に髪が生えて元通りに回復することが多い
「急性 びまん性 全頭 脱毛症」
:acute diffuse and total alopecia
:ADTA
という特殊な病型があります
さらに、ADTAの中には
治療を行わなくても髪が自然に回復する
「自己治癒性 急性 びまん性 全頭 脱毛症」
:self-healing acute diffuse and total alopecia
:sADTA
と呼ばれるタイプがあります
AAの評価と診断
3.AAの分類・重症度
から抜粋
「経過に基づく呼称として
頭部全体の広範囲 に急速に脱毛が進行してみられる急速進行型(rapidly progressive AA)がある.
この病型の中には全頭型 または汎発型に移行し慢性化する症例がある一方,
急速に回復して予後が良好な傾向を示すacute diffuse and total alopecia (ADTA)という亜型があり,
その一部の症例では無治療で自然に回復する(self-healing acute diffuse and total alopecia(sADTA)。」
ADTAをイメージするうえで、分かりやすい説明がありました。
西新宿サテライトクリニックの
急速進行型円形脱毛症 の治療 の項で
「急速進行型は びまん性型ともよばれ、
類円形の脱毛斑を作ることなく、
ある日突然に頭髪が抜け始め、
抗がん薬を使用した時のように1~2か月で頭部の半分以上、
あるいは ほとんどの毛が抜けてしまう特殊な病型です。
恐怖でパニックに陥る人もいますが、
予後は良いことが多いです。
治療せずに経過観察しても6割くらいの方は1年以内に回復します。」
と説明されています。
現在の円形脱毛症診療ガイドラインでは、
「急速進行型」=「びまん性型」という分類で使われているわけではないようですが、
ADTA(sADTAも含む)がどのような病型なのかをイメージする助けになると思います。
【 3. 急性休止期脱毛症】
急速に頭全体の髪が大量に抜ける病気としては、
「急性休止期脱毛症」がありますが、
自己免疫疾患ではなく、
円形脱毛症とは異なる病気です。
「急性休止期脱毛症」についても、
西新宿サテライトクリニック
脱毛症のページ の 「休止期脱毛症」 に
「休止期脱毛症とは
何らかの原因で成長期にある毛包が休止期に移行することで
一時的に脱毛が増える状態をいいます。
急性と慢性があり、
急性では1日300本程度の脱毛が半年程度持続します。
明らかな脱毛斑は認めません。
・・・・
多くの場合には原因が除去されれば元の毛量に回復しますが、十分に改善しない場合もあります。」
とあります。
【西新宿サテライトクリニックの説明を参考にすると】
急性休止期脱毛症は,
「1日300本程度の脱毛」で、激しい脱毛です。
急速進行型円形脱毛症(ADTA)は、
「1~2か月で頭部の半分以上、あるいはほとんどの毛髪を失う」とされていて、
一般的な頭髪数から単純に計算すると、
平均して「1日1,000本前後から数千本相当の脱毛」になります。
急速進行型円形脱毛症(ADTA)は、
急性休止期脱毛症をさらに上回る勢いで脱毛が進行することがうかがえます。
【 急速に頭全体の髪が抜ける原因と評価 】
急速にびまん性に頭髪が抜ける病気には
ADTAや急性休止期脱毛症のほかにも、
薬剤の影響や全身性の病気など、さまざまな可能性があります。
また、複数の脱毛症が同時に起こっている場合もあります。
発症初期には特に鑑別が難しいこともあり、
脱毛の経過や、毛髪や毛包の状態などを含めて、総合的な評価が重要だと思います。
【4. 急速に進行する円形脱毛症 診療ガイドライン2024と日本臨床毛髪学会が示すsADTA (自己治癒性ADTA) 】
『円形脱毛症診療ガイドライン2024』
AAGL2024.pdf では、
「発症から半年以内で、頭部全体の25%以上に急速に進行している重症例に対して、ステロイド内服やステロイドパルス(点滴)療法を行ってもよい」
とされています。
これは、
円形脱毛症では免疫の異常によって毛包周囲に炎症が起こると考えられていて、
ステロイドにはその炎症を抑える作用があるためです。
特に急速に進行する場合は、
炎症が強く続いている可能性があるので、
炎症を早期に強く抑える目的で、
ステロイド内服やステロイドパルス療法が検討されます。
一方で、
「自然治癒する可能性が高い症例 (sADTA)を除外すること」
も明記されました。
急速進行性の重症例の場合には、
ステロイド内服やステロイドパルス療法が選択肢となりますが、
「治療を行わなくても自然に治るタイプ(sADTA)」があるので、
過剰な治療を避けるための慎重な見極めが求められるようになりました。
CQ( Clinical Question:臨床的な質問)から抜粋です以下
CQ4 ステロイドの内服療法は有用か
推薦文
・発症初期の急速に進行しているS2(脱毛巣が25~49%)以上の成人症例に行ってもよい
・自然治癒傾向のある急速進行型の症例を除外する
・休薬後の再発率が高いことより,ステロイドの外用・注射などの他標準的治療に抵抗する症例に限り検討する .
CQ5 静脈注射によるステロイドパルス療法は有用か
推薦文
・急速に進行しているS2以上の発症初期の症例に行ってもよい
・実施前に再発の可能性や,副作用の十分な説明が必要である
・自然治癒する可能性の高い症例の除外に努める
・小児には行わない方がよい
解説 から抜粋
急速かつ広汎性に脱毛している症例において,
初診時に
頭部の皮膚の痛みや痒みが無く,
頭部以外の脱毛が無く,
ヘアプルテストで棍毛(休止期毛)が抜去され,
トリコスコ ピーにてshort vellus hairs や空の毛孔像が多く認められる場合,
治療介入せずとも自然治癒する可能性があり(self-healing acute diffuse and total alopecia:sADTA),
治療前に十分な検討が必要と考えられる。
以上です。
日本臨床毛髪学会
円形脱毛症について にも
以下のような内容の記載があります。
◆ ステロイド(ハーフ)パルス療法
・(円形脱毛症で)急性びまん性に脱毛症状を呈していて、
ダーモスコピー(拡大鏡)観察で、感嘆符毛や切れ毛が多数観察される 急性びまん性全頭性脱毛症に対して ステロイドパルス療法(薬を半分にするハーフパルス含む)が適応されます。
・(円形脱毛症で急性びまん性に脱毛症状を呈している場合)治療を行わなくても自然に回復するタイプ(self-healing acute diffuse and total alopecia:sADTA)の可能性があります。
①女性であること
②脱毛病変部(抜けている箇所)に瘙痒(かゆみ)・疼痛がないこと
③頭髪以外(眉毛や体毛など)に脱毛症状がないこと
④抜毛テストで毛球部(髪の根本)の萎縮がないこと
トリコスコピーで
⑤毛孔内(毛穴の中)が空であること
⑥短軟毛(うぶ毛)が全頭で優位にみられること
の6項目のうち4項目以上を満たす場合には、
sADTAである可能性が高いので、
ステロイドパルス療法(ハーフパルス含む)を行わず、
しばらく経過をみることも可能です。
【参考に】
トリコスコピー像
円形脱毛症の急性期の所見
【 5. 「円形脱毛症でのステロイドパルス療法」や「急速進行型円形脱毛症のアプローチ」 などについての講演資料 】
大変参考になる2つの講演資料をご紹介します
杏林大学皮膚科・木下美咲 先生
2022年(診療ガイドライン2024発刊前の講義です)
ラジオNIKKEI マルホ皮膚科セミナー
脱毛症診療Update
ステロイドパルス療法が効きやすいタイプについての説明もあります
杏林大学皮膚科・福山雅大 先生
2023年(診療ガイドライン2024発刊前の講義です)
ラジオNIKKEI マルホ皮膚科セミナー
脱毛症診療のポイント
脱毛症改善・再発予防のために
【 6. 栄養面からも高めておきたい 自己治癒力 】
sADTAの可能性が高く、経過観察となった場合や、
ADTAなどの円形脱毛症、
休止期脱毛症などの場合にも、
回復する力を栄養面から支えるために、
栄養不足がないかを確かめておくことも大切だと思います。
実際、
『 円形脱毛症診療ガイドライン2024 』
AAGL2024.pdf では、
「鉄欠乏性貧血やビタミンD不足などが合併していないかを確認するために、
必要に応じて血液検査を行ってもよい」
とされています。
『 亜鉛欠乏症の診療指針 2024』
亜鉛欠乏症の診断基準となる症状の一つとして、
「脱毛」が挙げられています。
また、
きょうの健康ーNHK
髪と頭皮 日常ケアから
にも、
「薄毛になる原因には
休止期脱毛症 もあり、
この休止期脱毛症の裏には、
甲状腺の病気、
鉄欠乏性貧血、
亜鉛欠乏性貧血 など、
他の病気が隠れている場合があります。」
と紹介されています。
激しい脱毛があり、
病院を受診した際は、
血液検査の項目に、次の項目が含まれているかをご確認ください。
・鉄
・フェリチン(鉄貯蔵タンパク:体内に蓄えられた鉄の目安)
・ビタミンD
・亜鉛
もし、これらの項目が検査に含まれていなかった場合は、
追加の検査について、医師に相談してみてもよいと思います。
※ビタミンDの血液検査は、保険適用外となることがありますが、希望すれば自費で検査を受けられる場合があります。
検査で不足が無いかを確認し、担当医と相談しながら、
並行して日々の栄養面も見直してみましょう。
栄養面から、脱毛症の回復を支えるには
① 髪をつくるための材料
タンパク質など
② 毛包の働きや毛周期を調節するシグナル
ビタミンDなど
③ 髪をつくる毛包の細胞の働きを支える
鉄・亜鉛・ビタミンB群など
加えて、
円形脱毛症は自己免疫が関与するので、
④ 免疫バランスを支える栄養
ビタミンD・亜鉛・オメガ3脂肪酸・腸内環境を整える水溶性食物繊維など
を不足なく、十分な状態にしておくことが、
脱毛症からの回復に向けた「自己治癒力」の維持・向上へとつながるのではないかと思います 。
他にも必要な栄養はあると思いますし、
栄養関連以外の検査も必要です。
異常な脱毛がある場合の検査や
髪の栄養などについては、
下記サイトなども参考になると思います。
大木皮ふ科クリニック
AGAメディカルケアクリニック
あさ美皮フ科クリニック
亜鉛とビタミンを組み合わせて髪を育てる!育毛効率を高める栄養摂取術
ビタミンB群の育毛効果を解説!毛母細胞を活性化する食事と栄養素
神戸きしだクリニック
髪の健康に欠かせないミネラルとは?亜鉛・鉄・マグネシウムの役割
原宿クリニック
【 7.ADTA と ADTAFS(女性の頭皮に生じる急性びまん性全頭脱毛症)】
急激に全頭の髪がびまん性に脱毛し
全頭(または、ほぼ全頭)の髪が抜けますが
その後は良好な経過をたどる特殊な円形脱毛症
急性 びまん性 全頭 脱毛症
: acute diffuse and total alopecia
:ADTA
について
ADTAは、
2002年に川村真樹先生らによって
当初、ADTAFS
:Acute diffuse and total alopecia of the female scalp.
:女性の頭皮に生じる急性びまん性全頭脱毛症
として提唱された円形脱毛症の病型です。
臨床皮膚科 (2004年4月発行)
では、以下のように記載されています
円形脱毛症のなかで,
急性びまん性に脱毛して全頭脱毛に至るが すぐに生えて治癒する例が経験されることがあるが,
過去には詳しい記載がなかった.
それらに共通する特徴をまとめ,
acute diffuse and total alopecia of the female scalp
(女性頭皮の急性 びまん性 全頭 脱毛症)
ADTAFS
として分類した.
ADTAFSの最大の特徴は
共通する臨床経過と 予後が良好ということで,
その経過とは,
平均3カ月で全頭脱毛に至るが,
それと同時期に新しい 終毛 が生え始め,
平均6カ月で略治に至る
というものであり,
当科経験例では12/14例が治癒した.
さらに,
生検組織で他の病型と比較し,より多くの好酸球浸潤の所見や,
女性優位を認める.
ステロイド全身投与でもびまん性脱毛の進行は止まらないが,
一方,
ステロイド外用のみにても治癒に至り,
現時点では,
治療法の違いで経過および予後に差は生じず,
予後良好な病型と思われる.
ADTAFS
: acute diffuse and total alopecia of the female scalp
名称には「Total(全頭)」とありますが、
原著論文では必ずしも頭髪が100%失われた症例だけを対象としたわけではなく、
頭髪の80%以上失った重症例が対象とされていたようです。
また、
当初は女性患者のみの報告であったので、
名称に「Female Scalp(女性の頭皮)」が含まれていましたが、
その後は男性例も報告されるようになり、
現在では
ADTA
:Acute diffuse and total alopecia
「急性 びまん性 全頭(性) 脱毛症」
と呼ばれています。
※定義としては
「発症後3か月以内に脱毛面積が80%以上となり、
その後6か月以内に80%以上の脱毛班が改善する」
とされているようです。
【 ADTAには、こんな経過もあるようです 】
ADTAの具体的な症例報告は、なかなか見つかりませんが、
金沢典子先生らによる、実際の症例報告がありました。
Acute diffuse and total alopecia of the female scalp :ADTAFSの1例
この方は、「頭頂部の母指頭大の脱毛に気づいた」ことから始まっています。
最初から頭全体がびまん性に抜けたわけではなく、
いわゆる典型的なADTAFSのイメージとは少し違う始まり方だったようです。
その後、
・発症から4か月で全頭脱毛に至り
・発症4か月の時点でステロイドパルスを施行、SADBE 療法を開始
・治療開始から6か月後には、ショートヘアの状態まで回復
という経過をたどり、ADTAFSと診断されています。
この症例からも、ADTA(ADTAFS)といっても、いつも同じような始まり方・経過をたどるわけではないことが分かります。
発症初期だけでは判断が難しいことも多いようなので、医師による丁寧な経過観察が大切ですね。
【 8.円形脱毛症の回復の鍵は「Tレグ」!? ADTA研究から 】
ADTAでは、なぜ
「激しく急速に抜けても急速に回復する」
のでしょうか?
その理由を免疫学的な観点から検討した研究が、2025年に発表されていました。
日本語の解説記事(CareNet)
急性びまん性 全脱毛症の良好な予後、制御性T細胞の機能亢進が関与か
研究論文の原文(PMC ※英語)
急性びまん性 全頭脱毛におけるTヘルパー17細胞と制御性T細胞の役割 :
この研究では、
ADTA患者さんの頭皮および血液中の免疫学的特徴が解析されました。
その結果、炎症を促すTh17細胞の活性化がみられ、
ADTAでも円形脱毛症に特徴的な免疫反応が起きていることが確認されました。
一方で、
過剰な免疫反応を制御し、体内の免疫バランスを整える 免疫細胞である”制御性T細胞(Tレグ)” の活性化を示唆する所見も認められました。
研究者らは、
ADTAでは、
脱毛を引き起こす免疫反応だけでなく、
それを抑えようとするTレグの働きも活発であり、
このTレグの働きが、良好な予後や早期回復に関与している可能性があると考察しています。
また、
ADTA患者さんに限らず、円形脱毛症患者さんを対象とした研究
円形脱毛症患者では、疾患の活性抑制のために活性化された調節T細胞が増加します -
では、
円形脱毛症で活性化Tレグが増えている患者さんほど、病気の活動性が抑えられ、回復に向かう傾向がみられました。
ADTAだけでなく、
自己免疫が関係する円形脱毛症では、
過剰な免疫反応を適切にコントロールするために、
Tレグが十分に働ける状態であることが重要だと思います。
最近では、Tレグには、毛包にある幹細胞を活性化させ、毛の再生や成長を促す働きがあることも分かってきています ![]()
そのTレグの働きを支えるうえで、
栄養状態も大切です。
先に「免疫バランスを支える栄養状態」で挙げた、
ビタミンD・亜鉛・オメガ3脂肪酸・水溶性食物繊維などは、
以下のような仕組みで、Tレグの働きをバックアップしてくれます。
・ビタミンD ・ 亜鉛
Tレグとしての性質や働きに関わるT細胞の遺伝子に働きかけ、その機能を安定させ、適切に働くことを支えるために重要な栄養素です。
・水溶性食物繊維
腸内で善玉菌のエサとなり、Tレグを増やすスイッチとなる「短鎖脂肪酸(酪酸など)」を生み出します。
Tレグの数を増やして育てるために、重要な役割を担っています。
・オメガ3脂肪酸
細胞の膜の性質を整え、Tレグを含む免疫細胞が適切に働くための環境を支えます。
また、体内の炎症が必要以上に長引かないよう、炎症を落ち着かせる働きもあります。
【 9. sADTA(自己治癒性 急性びまん性 全頭性 脱毛症)と杏林大学の研究 】
ADTAの中に無治療で自然回復する症例群が存在することに着目し、
杏林大学の研究グループは、
sADTA
:self-healing Acute Diffuse and Total Alopecia)
:自己治癒性 急性 びまん性 全頭性 脱毛症
という概念を提唱しました。
杏林大学皮膚科の福山先生らは2020年に、
sADTAの早期診断を目的とした研究を報告しています。
自己治癒性 急性びまん性 全頭脱毛症 を早期診断するためのための、年齢・性別・症状・毛髪鏡検査での特徴の解明 -
sADTAやその診断のポイントなどについては
このページで先に紹介した
福山 先生の講演資料が大変参考になります
ラジオNIKKEI マルホ皮膚科セミナー講演資料
脱毛症診療のポイント
【 10. sADTAについて:杏林大学の研究を基に考察します】
杏林大学の研究では、
後に sADTA と診断された患者さんは全員女性でした。
若年成人から中高年まで幅広い年齢層にみられました(平均年齢38.1歳)。
脱毛は発症後しばらく進行し、
多くの患者さんで2~5か月程度で脱毛の進行がピークに達し、
その後は回復へ向かい、
発症後半年~10か月程度で完全な発毛がみられるケースが多く、
平均では約8か月で完全回復していました。
また、この研究では、
sADTAには次のような特徴があるとされています。
① 女性であること
② 頭皮のかゆみや痛みがないこと
③ 頭髪以外(眉毛や体毛など)の脱毛がないこと
④ 抜毛テストでえられた毛が棍毛(こんもう)が主体であること
⑤ トリコスコピーで短軟毛が全頭性に優位に多数みられること
⑥ トリコスコピーで空の毛孔が全頭性に多数みられること
この6項目のうち4項目以上を満たす場合は、sADTAの可能性が非常に高いとされています。
この研究の大きな成果は、
発症初期の段階でも、年齢・性別・症状・抜け毛の状態・トリコスコピー所見を組み合わせることで、sADTAの可能性を早い段階で考えるための具体的な目安を示したことです。
急速に頭全体の髪が抜けている場合でも、これらの特徴を確認することで、その後に自然回復する可能性の高い sADTAを早い段階で見分ける手がかりになると考えられます。
それぞれの特徴を私(ブログ主)なりに考えてみました
① 女性であること
sADTAは、これまでの報告では20代〜40代の女性に多く見れれるという特徴があります。
② 頭皮のかゆみや痛みがないこと
( 発症後少し時間が経った大学病院での)診察を受ける頃には、毛包の周囲で強い炎症が続いている状態ではないことを示しているように思います。
③ 眉毛や体毛など、頭髪以外の脱毛がないこと
これは、汎発(はんぱつ)性脱毛症 のように、
全身の毛にまで自己免疫反応が広がっている状態ではないことを示している、
のではないかと考えます。
④ 抜毛テストで得られた毛が棍毛(こんもう・休止期毛)主体であること
抜毛テスト(髪を軽~く引っ張る検査)では、
通常の進行期(活動期)の円形脱毛症の場合、
免疫細胞による毛包への攻撃によって成長期の毛が傷つき、毛根が細くなった「萎縮毛」がみられることがあります。
一方、「棍毛」とは、
毛の成長期が終わり、自然に抜ける準備が整った休止期の毛です。
「抜毛テストで棍毛が主体である」ということは、
多くの毛包が成長期から休止期へと移行し
その結果として髪が抜けている状態
を示しているのではないか、
と考えます。
⑤ トリコスコピーで短軟毛が全頭性に優位に多数みられること
短軟毛とは、発毛の途中でみられる細く短い毛です。
活動性の高い円形脱毛症でよくみられる黒点や感嘆符毛よりも、
この短軟毛が目立つということは、
脱毛が続いている一方で、毛包ではすでに新しい毛を作り始めていることを示しているように思えます。
⑥ トリコスコピーで空の毛孔が全頭性に多数みられること
空の毛孔とは、毛が抜けた後も毛包自体は保たれている毛穴です。
活動性の高い円形脱毛症でみられる黒点などが少なく、
空の毛孔が頭全体に多くみられることも、
毛包が次の毛周期へ向かう準備を始めていることを示しているように感じます。
【 11. sADTAでは、脱毛と並行して再生も始まっている? 】
通常、頭髪の毛包は、約90%が成長期、約1%が退行期、約10%が休止期にあるとされています。
ここからはまた、私の考察です。
sADTAの発症時には、
自己免疫反応によって免疫細胞が、
主に成長期の毛包を攻撃し、
急速で大量の脱毛が起こります。
また、この攻撃をきっかけに、
多くの毛包が成長期から休止期へ急速に移行します。
免疫細胞の主な標的は成長期の毛包なので、
休止期へ移行した毛包は、
免疫細胞の攻撃を受けにくくなり、
自己免疫反応による脱毛は次第に少なくなります。
しかし、
すでに休止期へ移行した毛包からは、
その後もしばらく大量の脱毛が続きます。
一方で、
休止期に入った毛包では、
次の成長期に向けて、
新しい髪を作るための再生が始まります。
sADTAは、
「円形脱毛症(自己免疫反応)として発症しますが、
(休止期へ移行した毛包からの)激しい脱毛が進んでいる最中から、
毛包では、すでに新しい髪を作るための再生も始まっている。
なので、回復も早もはやい、のではないか」
そんな特殊な円形脱毛症なのかもしれません。
※本来、正常な毛周期では、古い髪が抜ける一方で、次の成長期に向けた準備が進んでいます。
【 12. sADTAの発症から回復までを 図にしてみました 】




