小説「眠りと冷却」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

恋のうちに結婚すると、バカ以外の何物でもないよ、と友達に言われる。

「目も当てられない」

と吐き捨てられた。

彼女は、誰のことも好きにならない。

「恋は、おぞましいものだから」

と言う。だから私も、これから夫になる人に対して、恋することを止めなさいと言われていて、本当にそうだろうかなと、悩んでいる所。

「人間関係が恋の間は、結局自分勝手以外のなんでもないんだから」

彼女はカフェインを取らない。その代わりミントティーに砂糖を入れて飲む。なんて出鱈目な嗜好だろうかと疑う。刺激物を甘くしてなんになるというんだ。

私は夫になる人に恋をしたので、一緒に居たいと思うので、結婚を決めた。しかし、彼女はそれがバカらしいと言う。

「何が気に入らないのか、教えてくれてもいいじゃない」

と私は持参したペットボトルのコーヒーを飲みつつ、言う。

「好きだ好きだって思っている間は、それはその人のことを好きなんじゃなくて、自分のことを大好きなだけなのよ」

「どういうこと?」

「恋慕は没我。愛情は冷却」

もっと分からないことを言われた。

「あなたは今彼氏のことを好きだと言う。でも、それは“貴方の中にいる彼氏”のことが好きなだけなのよ。

それに夢中で、感情にはまり込んでいるだけ。そういうの、愛情って言わない。愛情はね、もっとけったくそ悪い物よ。それをあなたが知ったら、きっと気分悪くなると思う」

私の中のあの人。

それを請うていて何がいけないんだろうと反論したくなるんだけど、それが、私の中のあの人、と指摘されて、はっとなる。

私はあの人について、本当に何を知っている?

「恋は結局都合のいい夢の中で寝てるだけなのよ。それが、愛情に変わる時、さーんと冷たいものが降ってくる」

「降る?」

「例えよ。冷えるのよ。愛情ってとってもクールよ。あばたもえくぼって言うけど、愛情が身に着くとえくぼがあばたに見えるのよ」

それと同時に自分自身の本質に気付くのだ、と彼女は言う。

「そうじゃない結婚なんて目も当てられないわ」

ともう一度言った。

「自分に埋没しただけの人生なんて、狂っている。ま。それで構わないなら、存分いクレイジーでいてくれればいいんだわ」

それで私は彼を愛さない事にした。

自分の心の中だけにいてくれればいいと思ったのだ。現実は、イヤミだから。そんなもの中で冷や水浴びて目を覚ましていなんかいたくない。

結婚できなくても困らない。

私は、夫になってもらうのはよそうと決意する。