足元がしのしのしてるのに、どうして空は真ん丸なのだろう、これは、格差というやつだ。誰もかれも、私より優れてしあわせ、そうだそうた。
天は今夜、朗らかなのだ。私の足元には、やけっぱちが落としていった残骸で。びっしゃり。
ああなんて明るい月の夜だろうか。明日か明後日には満ちてしまいそう。そして、来週には欠けてしまいそう。そんなように見える。
月は満ちたり欠けたりしないもの。そういうもの。そういうものの夢を、現実にしていたっていいじゃない。
隣の部屋から何か香ばしく、じりじり焼ける匂いがする。美味しそうだけど、嫌な匂いだ、でも美味しそう。きっと、冷凍庫ですっかり乾いたギョーザでも焼いてるんだろう。そう言えば私もギョーザが食べたいな。
あの人がいた頃は、月もちゃんと満ち欠けした。夜の次には朝だった。
違ってしまったの。今は、もう違う。月は真の玉、夜はカーテン。手品師の気まぐれ。それが今、情けなく、現実。
月が巡る世界に居たころは、私もお腹が減ったりニキビが出きることを気にしなかった。でも、もう私の時間は止まってしまったから、それなのに、皮膚も膓も行儀よく餓えていく、更けている。不思議だし不条理だし、不快、嫌いだ。
私にはもう時間が無いのに、概念だけが膨れっ面みたいにぱつんぱつんだ。私は時間を持っていない。なのに、どうしてここに居るのだろう。
きっと、月のこちら側であの人が啼いているからだ。