長編お話「芦原血祭物語」"笹子" | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

私は自分の名前が嫌いだ。
「アサコ?」

と聞き返されるから嫌いだ。アサコだなんて。
なんて平凡な名前。なんにも考えずに付けたような名前じゃないの。と、思う。

それに、今時女の子の名前に子供の子を付けるなんて。

時代錯誤だと思う。現実に、私の同級生で子供の子が付いている女なんて居ない。
ダッサイ名前。そう思う。

でも、仕方が無かったのだと聞いている。
大きいおばあちゃんが付けたのだから。

私の母は双子で、姉妹である伯母が近所に住んでいる。
成長してからもくっついて暮らしている母と伯母は、それぞれ似たような時期にわたしたちを授かった。

だから私と従姉のミツキの誕生日は3日しか違わない。ミツキの方が、3日だけ早い。

私は笹子と言う名前にならなければならなかったのだそうだ。

「このこたちのなまえは、ばんてんこにつけたからね。」

と昔ミツキが言っていた。
「大きいおばあちゃんが言ってた。」
「ばんてんこって?」
「たぶん、あべこべ?」
「なんで?」
「私がわたしだから。私が笹子じゃいけなかったんだって。」

と、大きいおばあちゃんが言ったのだと。ミツキが。そう言っている。

じゃあ私が笹子じゃないといけなかっなの?
いい迷惑なのだ。
私はいつもミツキとペアみたいに考えられている。
迷惑な。なんて迷惑な。

それで痛い目を見るのは私なんだから。それなのにミツキはいつもむちゃくちゃなことをする。

こんな状態でWi-Fiスポットまで行こうなんて。
「嫌よ、まだお腹苦しいのに。」
と私は文句を言った。

夜、と言うよりもう朝に近い時間。
朝子だ、まるで。
「Wi-Fiスポットならまだなんか拾えるかもしれない。」
とミツキは主張する。