小説「ミツキ」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

三日間、左の肩から首にかけて激痛に襲われた。
大きな裁ち鋏が突き刺さっているような痛みなのだ。ただ事じゃない。肩凝りとか、そんな、話じゃない。
私は、絶対あいつだ、と思ったので近所に住んでいる従姉のミツキに電話した。

「ちょっとー。ミツキー。あんたまたなんか拾ってきたね。」
「ああ?そうなの。またあんたんとこに行ったのね。ごめんごめん。」
なんて、言う。
「ごめんはいいから早くなんとかしてちょうだい。」
「えーっとね。ちょっと待ってね。」
そう言って、ミツキは電話を遠くに離す気配があった。

ガサガサ、と音がする。

「分かった分かった。」
しばらくすると、またミツキの声がした。
「あのね、おばあちゃんの戒名知ってる?」
「うん。」
「教えて。」
「なに、あんたおばあちゃんの戒名覚えてないの?」
「うん、あのね、今回は、私がおばあちゃんの戒名覚えてないの怒って化けて出てきたのね。」
「だから、なんであんたんとこに出るはずのおばあちゃんが私のとこに化けて出るのよ、まったく。」

そうなのです。
ミツキは霊媒体質で、しょっちゅういろんなものを体にくっつけてくる。
でも、どうしてなのか彼女が拾ってきたヒトナラザルモノは、私に祟るのだ、いつもいつも。

「あんたがヘマしてんのに、どうしていっつも私に出るの!」
私は腹がたつのでミツキに文句言う。
「知らないわよ。」
平然としているのだ。
「なんか、あんたが私のルーターみたいになってるんじゃないの?一回あんたんとこに出るよの。そっから、私のところまで電波が届くのね。」
いい迷惑だわ。と私は思う。
「とにかくおばあちゃんの戒名教えるからメモとって!」
私は一刻も早くこの激痛から逃れ去りたいの。

電話の向こうでミツキが何か書いている気配。
「ありがと。書いたよ。あとはまあ。お経でも唱えといてやるかな。」
どこまでも呑気だ。
「お願いだから早くしてちょうだいな。」
分かったわかった。
と言って、
「大丈夫、あんたの肩に噛みついてたおばあちゃんもう離れてるわよ。」
「何、おばあちゃんそんなことしてたの!?」
「そうよ。痛かったでしょ。」
平然としているのだ。
「痛かったわよ!」
私は怒鳴った。
「だからもう痛くないでしょ?」
平然と言う。
「あ、ほんとだ。」
確かに肩はもう痛くなかった。でも、裁ち鋏が刺さっていたような感触はまだここにある。
「あんたが食われりゃいいのに。」
と言ったら、
「歯が生えるほど私が憎かったのね。」
おばあちゃん、入れ歯だったもんね。としみじみしている。
「だからどうして私に出るの!」
「だからあんたがルーター役なのよ。」
「責任感じてほしいもんだわ。」
そりゃごめんなさい。とミツキは何て事ない様に笑って言った。