長編お話「普遍的なアリス」の31 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

気が付いた。
結束バンド、と言うのだろう、細かな荷物をまとめておくもの。
手首はそれで縛られていた。
私が気が付いたとき、手首は結束バンドで拘束されていて、そこに小さな南京錠が掛けてあった。そのさきには犬に使うような
鎖が延びて信行のベッドの足に縛り付けられていた。そしてそこも南京錠で閉ざしてあった。

逃げられないな。
と冷静に思った自分にまたしてもぞっとした。
ああ、私は自分の事を的確に捉えすぎている。私は逃げられない。結束バンドを切って南京錠を壊すだけの力が自分にあるとは思わなかった。
だって信行がそこに居たもの。

南京錠から延びた鎖はトイレを使うのに充分な長さがあった。

私は何も着ていなかった。

私はほっとした。ともかくお手洗いだけは使えそう。

私がベッドに寝転んだまま、そんな情けない安堵にやすんじていたかのか信行は分かっていたのかな。
彼も全裸だった。
そして、ひどく消耗していた。

がっくりとうなだれていてた、というとただしい表現かもしれない。私は、自分がされたことよりもその信行の姿がいたましくて声を掛けた。

「なんでこんなことしたの。」
私はベッドに寝たままだった。

「お前あの兄貴と寝てるんだろ。」
と言った信行は、本気で怒り狂っているようだった。