蔵に隔離されている弟に食事を運ぶのは私の役目だ。
弟は病気だ。私の家の、遺伝する病気。私たちの代では弟に出た。弟が産まれたとき、だから助産師さんたちは酷く悲しんだそうだ。
無理もない。
なのに、弟に会いたいと言ってくるひとは月に2、3人はある。私の家の遺伝性の病気は、ここら一帯では有名だ。
「史さまに逢わせてもらえませんか。」
弟はフミサマと呼ばれている。父はそれを怒る。
何を思ってあんなものを視たいと言うんだ。
と言って怒る。だから弟は決して蔵から出ない。父が断固として弟を人に遭わせない。
“死人書き”
と、呼ばれる病気なのだそうだ。弟の目は産まれた時から見開いていて、赤い。真っ赤だ。
弟の、死人書きの目を見ると、自分がこの先どんなように生きて、そして如何にして死んでいくのか。
自分の最期が。
見えるのだ。それが、私の家に伝わっている病気。
「そんなものを、知る必要などない。」
父は弟を外に出さない。
しかし中には多いのだ。
自分がどう生きて、如何に死んでいくのか。
知りたい、知りたくて堪らないと言う人が。興味本位だったり、不安で仕方がなかったり。知りたくて知りたくて堪らないのだ。
私は、
知らない方がいいと思う。
母が弟を産むときに、私も側で手伝っていた。女の子の仕事だからと言われて。
私は、知らない方が良かったと思う。
あの子が産まれた時私は視たもの、あの、赤い目を。