梶くんって変。と友人に言われてしまった。
僕はそこそこ自覚していたことなんだけども、面と向かって言われると、結構傷つく。
「しかもやや変態だよね。」
なんて言われてしまう。
「酷い言いようですね。」
と僕は一応反論した。でも彼女には恩がある。
既婚者のこの友人は、旦那さんの実家が秋田で農家をしているので、毎月送られてくる食べきれないほどの米や野菜を僕に融通してくれるのだ。
だから彼女には恩がある。だから彼女の言うことには簡単に反論できない。
野菜と米を失うと僕は些かにも、困ったことになる。
「梶くんの掘っ立て小屋は落ち着くね。」
と彼女は言う。
僕の家はプレハブで、元は畑の脇で物置に使われていたものが長い間打ち捨てられているのをずっと見ていた。
僕は持主の人と交渉して、修繕や片付けの責任一切を持つのなら、ここに住んでもよいと約束を交わすことが出来たのだ。
その僕の家を、友人は掘っ立て小屋と言った。
「まあ、言い得て妙ですね。」
「梶くんって時々変態に見える。冷徹かと思えばバカだし、自己犠牲的かと思えば攻撃的な一面もあるし。うん。
君は変な人だわ。変よ。」
つまり彼女は家庭での鬱憤を僕のところで晴らしに来るのである。
旦那さんに不満があるのだ、といつも話す。
だが愚痴はいつも最後には、
「でも宿命だから仕方ないのよ。」
のひと言で終わる。
「宿命なんですか。」
と僕は訊いた。前に。
そうよ。と友人は応える。
「私がこのたった一つの命に宿して生まれてきたのよ。」
「何を?」
「対人関係。」
「誰との?」
「夫との。」
と友人は話す。
「命に宿すから宿命。私が生まれたときから私の命の中にはこの関係性が宿っていたの。」
だから仕方ない、とは言いながら、彼女の瞳はクリスマスツリーのモールみたいに煌めいている。
だから、僕はいつも安心する。ああこの人は幸せなんだなと。
「ところで君のいとしの彼はどうなった?」
と友人は訊く。
「どうもしないみたいですよ。暫く会いませんが、恋人とは上手く行っているみたいです。」
「そう言うのって嫉妬しないの。」
「しませんよ。」
僕は答えた。
「やっぱり梶くんって変態だわ。」
自分の好きな男が女と上手く行ってるのに妬きもしないだなんて、変な人。
とまたあんまりな事を言われた。
「彼は運命の人ですから。」
「何、それ。」
友人は聞き返す。
「貴方と同じですよ。命を動かすから運命。彼は僕の命を動かした人です。
僕の命はそのためにおおいに運動した。僕はそれだけで、もう充分なんです。」
「やっぱり変な人ね。」
ねえご自慢のミントティー飲みたいんだけど。と言う。
この友人は、なかなかやっかいな親友でもある。
(注・「東尾言語」梶のスピンオフです。)