「埋めちまおう。」
と兄が言って
「そうだね」
と私が言った、私たちは双子だ。
我が家は1階が共有スペースのキッチンリビングダイニング、お風呂トイレと納戸、2階には個室が4部屋しかない。
6つ年上の姉の後に私たちが生まれたので、私と兄は今年16になるけど未だに二段ベッドで寝ている。部屋が無いのだ。
私たちは今日兄の箪笥の一番したの、一番ぐちゃぐちゃな抽出しの中から古い箱を見つけ出した。
大した用事でもないのだけれど、兄が小学校の友達の家に電話をかけたくて、小学校の卒業文集を探している内に出てきたのだ。
恐らくおばあちゃんがくれた和菓子の空き箱で、恐らく私たちのどちらかの手で
“たからものいれ”
と書いてある、鉛筆で。
「このきたねえ字はお前だな。」
「どう考えたってあんたよ。」
蓋を取ってみたら。
中には山ほど入っていた。蝋石のかけらとか、ラムネのビー玉とか、セミのぬけがらとか、外国の切手とか、金貨の形のチョコレートとか、おびただしい貝殻とか、いちじるしいどんぐりとか、社会見学の博物館の入場券とか、二人だけで観に行った映画の半券とか、二人だけで乗った新幹線の切符の残りとか、二人で食べてどっちだったか、一人だけアタリが出たから喧嘩になって結局交換しなかったアイスの棒とか、二人で買ってどっちかだけキラキラのシールが出たから喧嘩になって、結局無かったことにされたビックリマンシールとか。
山ほど入っていた、小さい頃の、二人の、宝物が山ほど。
私たちは蓋を開けたまま言葉もなくただ中身を見ていた。やるせない。こんな夜はやるせない。だから
「埋めちまおう。」
と言った兄に私は同調した。
両親と姉は自室に居たので私と兄は誰にも咎められず玄関から、兄はスコップ、私はたからものいれを持って外に出た。
家の近くの河原に向かう。
金の月が光る夜だった。
兄が河原の砂利を掻き分けてスコップで穴を掘った。
ザック、ザック、ざくざくざく
と言う音を、私はたからものいれを胸に抱えて聴いていた。
「もう良いだろうよ、」
と兄が言ったとき、穴はたいして大きくはなっていなかった。穴を掘る作業は体力を消耗する。
私はたからものいれを兄の掘った穴に入れて、上から土や小石をいっぱいに被せて、見えなくなるまでそうした。
「葬式だな。」
と兄が言った。
「そうだね。」
と私が言った。
「俺、出るわ。」
と兄が言った。
「何処?」
「家、出るわ。このまま。」
「金持ってきたの?」
「とりあえず先輩んとこ行くわ。」
兄には大学生の友達がたくさん居るのだ。
私たちは余りにも近いところに居すぎた。長い時間、長い時間を一緒に居すぎた。このままじゃあ。
このままじゃあいずれ、どっちが早いにしてもどちらかから先に駄目になってしまう。
だから、私たちは喪うことにしたんだと思う。お互いを。
「元気でね。」
と私は言った。
「しっかりな。」
と兄は言った。夜中金色の中を、彼は振り返らず歩いて去る。