小説「インディゴ」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

一番新しい父の記憶は屍体。私の脳の中のアルバムの最後一ページに貼ってある。
その先は捲っても捲っても真っ暗な闇が始まっているだけで、父に関する新しい記憶は産まれない。私は当たり前の事を言っている。
当たり前の事でも言い聞かせなくては自分が納得しないと言うこともある。

無いかもしれない。ただ私がそう言う質なのだ。

だから時々アルバムのページを捲って確かめる。脳の中にある父の記憶を確かめる。死んだときの記憶を確かめる。

インディゴのシャツを着た中年の男の屍体が其処には貼ってある。父に関する一番新しい記憶。インディゴのシャツを着たまま死んだ。
それが一番新しい思い出。これ以上新しくはならない思い出。

しかしインディゴの服が時分の中でトラウマになるとばかり思っていたのに、
ふと気付くと息子達はインディゴ色がいやと言うほど似合うのである。

何故かと言うと、インディゴの服ばかり買って着せてしまうからである。
インディゴなんて見たくもないと思う筈だったのになんだか私はあらぬ方向へ進んでいくみたいだ。

兄は浅黒い皮膚をしているのでインディゴが良く似合う。

弟は弟でまだ幼いから対して日に当てない、だから桃いろっぽい肌の色をしているのだが不思議とインディゴが良く似合う。

私は自分にあきれてしまう。セール品のラックの中から今もインディゴを探してしまうからだ。
買い物カートに弟を乗せて、掘り出し物が無いか、店のひとににらまれながら乱暴にがさがさしている。

私は自分の中の傷について考える。
果たしてそんなものがちゃんと付いているのだろうかと考える。息子達はインディゴが似合う。祖父が死んだ時に着ていたのと同じ色を着せられる孫達。秀逸なる姿の私の息子。

私はちゃんと傷を負っただろうか。傷は傷のままちゃんとあるだろうか。

この頃それが甚だしく不安なのだ。