natural即violence
だと、彼女は言う、だから自然なものほど体に良いと言う発想がどこから来るのかさっぱり分からないらと彼女は言う。
「野菜も肉も本来攻撃的なものを人の体に合わせてアレンジして食べやすくしているものなのに。」
と彼女は言う。
「自然というのがそもそも攻撃性の表象なのに。」
と彼女は不思議そうに言う。例えば野菜はね、と、彼女は。
「自分が攻撃されないために攻撃的になっているのよ。
野菜はね、そもそもみんな苦いのよ。ナゼ苦いのか。
それが毒素だからよ。他の生きものに補食されないために体の中に毒素を生成してここまで繁殖してきたのよ。野菜に毒がなかってご覧なさい。
地球上の植物はみんな虫や小動物に食い荒らされて、
この星は亡んでいるわよ。
酸素を、生成できなくなってね。死の星。
だから自然に近い野菜なんて毒素の塊みたいなものでしょう?
わざわざ病気になるためにナチュラル製法の野菜を食べているわけ?」
僕は答える。
「しかし自然農法に力を入れたお陰で2020年代以降日本人の平均寿命は70歳代まで落ち込んだ。
お陰で懸案だった老人問題や医療費問題は解決されつつある。」
事実だ。
体に良いものを食べましょうと言うスローガンで自然農法の野菜ばかり流通するようになってから、癌になって早く死ぬ人が激増した。
しかも進行がはやく5年以内に亡くなるのだ。
「みんな生きたくて必死なのね。だから体の中に毒素を溜め込む。捕食者から逃れるために。
でも人間は分化の過程で他の生きものに抜きん出る方法を獲てしまった。人の体だけは補食される必要がない。
だから溜め込んだ毒素を自分で管理できない。
補食されないための毒素に自分が補食されていくのね。
何のために自分を守ろうとするのか分からない。」
と言う彼女は全身に天然由来の成文からなる基礎化粧品を纏って、ネオンの下でキラキラと輝いている。
何でそんなことを? 彼女も自分の体を守っているのだ。
毒の鎧でがちがちにコーティングすることによって。
自然由来成文の中にnaturalに含まれている毒素の問題は30年代から明らかになりだした。
だから完全自然製法の野菜や肉から栄養や体組成分になる組織だけを取り出してアレンジメントした食品が、ここ20年の主流になっている。
だから天然由来信徒は今や恐れられる存在だ。未だに全自然なるものが人体に最も適していると考える人も多い。
だから貴方はそんなに毒素で体をコーティングしているのか、捕食者から身を守るために。
捕食者。
彼女を食べたい人間はいくらでも居るだろう。
わかくてかわいい女の子。用途はいくらでもある。食べればおいしい。でも食べられたくない彼女なのだ。
だから貴方はそうして自分を守っているのか。
毒に鎧されて、なお生きていくのはどんな気分?
僕は彼女に訊いてみる。
「どくだみに、なった気分よ。」
と彼女は応える。