長く生きているとこいつだけは、
自分より幸せに成るのは納得いかない、
と言う変な意地を張ってしまう相手が居るもので。
最近彼女が結婚したと言う話を聞いたので久しぶりに連絡を取った。
快く会ってくれると言った。私は根性悪である。自分より不幸になってほしい相手が自分より不幸かどうか確かめにいくのである。
そして、確かめに行きながら、多分私よりは幸せに成っているだろうなと、半ば諦めているのだから情けないことこの上ない。
分譲マンションを買ったけど部屋数が少なくてちょっと不便なの、と予め聞いていたんだけど、
確かにこれから子供も生まれようかと言う人たちが3LDKじゃ暮らしにくいだろうなと思う。
久しぶり。
と言って出迎えてくれた。可愛い高校生が30前の中年もどきになっていた。
中年。
中年なんて、年じゃ無いだろう。28歳なんだから。なんて。なんて、女に成ったんだろうかと私は拍子抜けしたのだった。
中年に成っていた。今まで仕事したり出来なかったりして老け込んだと言うのなら解る。
しかし老けてはいないのだ。落ち着いてしまった。
彼女は落ち着いてしまったのだった。
昔はもっとキビキビした人だった。勉強でも部活でも負けている気はしていなかったけど、
それはつまり負けたくなかったと言う事だ。
負けたくない。
そういう魅力を持った人だったのだ、だからこの人が自分より幸せになるのが赦せなかった。
私は意固地なのである。
そして、そんな魅力的な人だったのだから必ず私よりは幸せに成っているだろうなと思っていたのだ、私は、やな奴だ。
なのに、紅茶を入れてくれた彼女はすっかり落ち着いた女になってしまっていた。
魅力が無い、と言うと違うな。
自分が魅力的であることを止めてしまった。そんな風に取り巻く空気が、変わってしまっていたのだ。
なんだ、この詰まらない女は。
何故こんなに動きが無くなってしまったのだ。相変わらず可愛い人だった。でも、清流が塞き止められてドブになったみたいに。
流れが弱くなって腐臭が寄ってきた様に。
詰まらない女に成っていた。
私は、辛かった。
幻滅するのは屈辱よりも辛い、なんでこんな思いをすることに成ってしまった。
こんな女に会うことになるなら私はのこのこ来たりしなかった。
私はとても辛くなっていた。一緒に茶菓子を摘まみながらこれからの仕事の話をして、私は拍子抜け辛かった。
幻滅しながら見下されている。あまりにも落ち着いてしまったのだから、私にはもう彼女より不細工に成ることさえできない。かといって魅力を持つことさえできない。
私はお茶をもらいながら笑って昔の話をしながら、泣きたい気持ちを一生懸命押さえていた、午後三時半。