小説「どんぐり拾い」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

「後で後悔するのに何故かひろってしまうのよ。」
と友人は話す。
彼女は学生時代からハスッパで有名だった人で、どういうわけだか私と仲が良かった、彼女と仲が良い同級生なんて私くらいだった。

このハスッパな彼女と何故上手くやっていけるのか自分でも解らない。
一緒にいて特に何か楽しいわけではない。ただ、時々この彼女は話を聞いて欲しそうな素振りをする。
電話掛けてきたりメール打ってきたりする。

だから話を聞いてあげないといけないかなと思う。
大勢居る人の一人で、彼女の中にも歪んでいびつに欠落してしまった何かが有るんだろう。
生まれつきか、生きている過程か。

彼女は、どう考えても最低でしかない、男ばかり拾ってあるく。

無職でギャンブルと酒ばっかりやるような、最低でしかないシロモノばかり拾ってあるくのだ。それでさんざん貢いでから、
厭きると捨てる。そういう、いびつなつきあい方ばかりしている。
もう40になると言うのに。

おそらく、
いやおそらくじゃあないな。どうしようもない人なのだ。

「どんぐりって落ちてると拾うよね。」
私は話す。
「なにそれ。」
「子どもの頃ってね、道端にどんぐりが落ちていると何となく拾ってしまうよね。」
私は電話の向こうで間抜け面してそうな彼女に向かって言った。
向こうは向こうで鼻の下でも掻いてそうな沈黙を投げて返す。

「拾ったからって何かある訳じゃないんだけどさ。
食べられるわけでなし、それで何か遊べるわけでなし。
なのに拾ってしまうのよね。どんぐりって。」
私はクッションの上に置いている自分の足の親指の爪が、黒く割れている事に気付いた。
だが今、あ、爪割れてる、と彼女に話すわけにも行かない。

「あなた未だにどんぐり拾ってるつもりで居るんじゃないの」
と私は仮説、立ててみた。
「因みにあなたは最後にどんぐりを拾ったのはいつ?」
と彼女が問い返してきた。
「先週娘と拾いにいったわ。公園に。」
「娘さんはそのどんぐりをどうしたの?」
「クッキーのカンカンに入れて大事にしてるわ。」
と言うと、如何にもバカにしたような笑い声を投げて返すのだった。