小説「雨の国」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

私の街は、雨の国。絶えること無く雨が降る。

良いことなんだか悪いことなのか。人の歴史は旱の歴史だ。雨が降らないと畑が出来ない。ヒデリが続いて死人を出し続けたのが人の歴史。雨が降らないと人は死ぬ。

でも私の街は無縁だ。一年中曇り空だもの、晴天が見られるのは、本当に希だ。

そんな土地柄もあると思うのだが、この街はぼんやりとしている。いつも濡れそぼっめいるから街ごと角が溶けちゃった感じ。なんとなく、人も物もとろんととぼけていて、躍動感とかスピード感からはかけはなれているのだった。
と言うかそんなものがこの街に持ち込まれたら大きな時計に無駄なネジを無理矢理嵌めこむようなものだろう。

ぱん、
と言って弾けとんでしまうに違いない、雨の朝、私はテーブルでコーヒーを飲みながらそう考えていた。でも私の心がぼんやりしているのはもっと別の理由があるのをちゃんと知っている。

朝はコーヒーしか飲まない。
私は太りやすい体質で、テレビを見たり本を読んだりしていろんなことを覚えて肥らないように試してみた結果、

肥らないためには食べるのを止めるしかない、
と言う決断に至ったからである。

だから食事はお昼だけで(仕事中はおながすく、)夜は水だけか、若干お酒をのむ、お酒を飲んだら次の朝も水を飲むのだ。水だけ飲むのだ。
雨の国なせいかこの街の水はおいしい。地下水を汲み上げている。

私は今日も塞いで陽のひかりを邪魔している雲を、窓の近くに寄って眺めている。コーヒー飲んだら仕事に行く準備だ。雲が厚い。今日もよぼよぼと雨が降っている。

でも雨が降るのは何も街の上ばかりではない、むしろ毎日雨そぼふるのは私の、この心。