車の中に入って私はほっとした。うあー、と深く息を吐いたのだった。なんだったんだあの圧迫感は、と思った。
確かに私は病院が好きではない。何人もの人の最後に立ち会ったことを思い出すし、自分が死にかけたこともあるからだ。
数年前までそのせいで定期的な通院が欠かせなかったくらいだし、病院なんて今更通いなれている。
私は親戚の見舞いを終えたところ。
恐ろしい圧迫感に耐えられなくて走って病院から出てきたのだ、本当に、意味不明の恐ろしい圧迫感だった。
簡単な良性腫瘍を取るだけの入院なので命がどうこうとかじゃない。それに圧迫はその叔母さんから発していた訳じゃなかった。
私の上にそれが乗っていた、タクサンタクサン乗っていた、空気で出来た煉瓦みたいなものが。私は重くて仕方がなかった。でも確かにそれは私の上に乗っていたのだ。なんだったんだあれは。粘って纏わりついてくるような。
叔母さんには悪いんだけど私は暇な人の雑談を適当にぶったぎって車に逃げ帰った。
まるで堅い死の気配にとりまかれているみたいだったのだ。辛くてならない。こんなところには長く居られない。
私が車の中にいて呼吸を整えていると、やっと落ち着いて冷たい軽い簾みたいなものがたくさん集まってくるような気配が感じられた。
ああ良かった。
私はほっとした。
死の気配に晒された私を何が好きか澄んだ優しい者が慰めてくれているのだ、そんな気がしたのだった。
夜、
シャワーを浴びながら私は気がついたのだった。
逆だ。
あの重い気配は死の巣窟から私を逃がそうとしていたのだ、あそこにはそれが満喫していて、私は取りつかれやすいから。
そして
車の中で寄り添ってきたのが
それだったのだ。逆だ。