「ああ。
俺も体力無くなったもんだなあ。前に山懸けしたときはこんなにきつくなかったんだけどなあ。」
と間崎さんはまた項垂れた。
「大丈夫なんですか、間崎さん、しんじゃいますよ。」
「死なないよ。その為に狗賓様が様子見てくれてたんだから。」
それは三郎彦の事だろうか。お山の狗賓を継いだのだと言う。
でもきつい。
と間崎さんは真っ青な顔をしている。白い着物の襟は汗のよごれがしっかりと染み付いていた。
「ほんとに水も飲んでないんですか。」
飲んでない。かすれた声で呟く。だんだん力が無くなって行くようで私は心配になった。
「なんで間崎さん、そこまでやらなきゃいけないんですか。」
「土地の神々が荒御魂じゃあウブスナを飲み込むことができないからね。」
とうとう目がぼんやりし始めてしまった。私はますます心配になる。
「どのみち鎮めておかないと君のおとうさんを食べるときにおもっくそ抵抗されるんた。
それで結局俺死にかけるだろうし。
同じ死にかけるなら今やっても後でやっても同じって感じかな。」
はあ。
全く。止め屋の連中マジで赦されね。
「何でなんでしょう。」
「何が?」
「どうして、三郎彦もだけど、稲兄さんやお爺ちゃんも、わかりますけど、どうして鏑木の神様たちがそんなに怒ってるんです。」
私は、不思議だった。
楢岡というオジさんに乱暴されたことに、どうして土地の神様は怒ってるんだろう。
「それはヒオリさんだからだよ。」
間崎さんは顔を上げて、言う。少し落ち着いたみたいな顔してる。
「私ですか?」
「君は大切な君のおとうさんのこだからね。」
「野槌がそんなに大切なものなんですか。」
間崎さんが首を振る。汗なのか、お清めなのかが、飛び散った。
「君のおとうさんは野槌じゃない。」
そう、言った。
「君のおとうさんはクグノチだ。」