小説「資源。」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

友人にジャーナリストが居る。

ジャーナリストと言うのは、自分が面白そうだな、と思う情報を見付けたら、現場に行って実際に目の当たりにしてみて、
「これなら大衆のウケが善くなるだろうな」
と言う形にまとまるように、
人やモノをコーディネートするのが仕事なんだそうだ。

私は彼の最近の仕事の話を聞いた。経営破綻した石油国の元大富豪の妻女の扱いが国際的な問題になっているのだそうだ。

化石資源が潤沢に採集されていた頃のかの地は世界有数の経済集積地だった。ほんの、20年ほど前までの話だ。
だからオイルマネーと言うと私にも決して馴染まない言葉ではない。裕福な国だったんだそうだ。自分の目で見た訳じゃないけど、しかしそう言うように聞いている。

お国柄、
と言うものもあって。元々そこの国に生れたお嬢さんは
必ず親の決めた相手と結婚するのが不文律だったそうだ。生まれた時から誰と結婚するか決まっている。
裕福な家のお嬢さんだから嫁ぐ先も裕福だ。
お金はたくさんあって好きなように使えるけど、お国柄自由に出歩けない。
裕福な家だから、身の回りの世話は皆誰か他の人間がやってくれる。料理とか、洗濯用とか。子育てとか。

子供の頃から将来そんなそんな風に暮らすんだと決まっているから、学校にも行っていない。
在籍はしていても、登校しないことをだれも責めないのだ。だから考えるという習慣が身に就かない。

毎日眠って、目覚めたらお菓子をもらって、眠くなったらまた寝て、時々ベッドに運ばれて、また甘いものをもらって、ちょっとうとうとして、そしてまた眠っていた、

そして夫が経済破綻したのだ。

お金が、なくなったんである。死んでしまう。死んでしまう訳には行かない。
そんなご婦人の就職支援がおっそろしく難航しているんだと、友人のジャーナリストはまとめようと頑張っている。そりゃ難航するだろうなと私は思っている。

何せ知識も技術力も何にもない上に下手をしたらまともに言葉も話せないし、自分の置かれている状況も理解が付かないし、酷くなると自分の名前、ファミリーネームもしらないんだそうだ。

仕方ないから人身売買に回そうとするんだけど、
男と言うのは取り合えず何か刺激をくれる女じゃないと面白くもなんともないので。

で、
刺激も何にもない。
グラブの下働きでもさせようかって箒の持ち方も分からない、
ここまで何にもできない人間を量産することが可能だった歴史が敢えてすごい、
なんて友人はまとめている。私は彼のへー、と思いながら聞いている。

世界は変わる。ほんの一分ででも。
資源が失われた。
資源になりようもない残骸が遺された。分解できないヘドロみたいに。しかも分解するために酸素を取り込む方が無意味なくらいに。これからこの現実は変わるだろうか。

「さあ、その辺はまた別の話題だよ。」
どうやらジャーナリストの友人には現実に興味が無いらしい、現実を変えると言う興味が。