「それで康人。小川さんはどうだったんだ。」
きれいな人だったよ、とヤっちゃんが答えた。
その日、
は、立川中学近くの無国籍居酒屋で迎えられようとしていた。小川さんを交えて飲もうと約束していた日だ。
このお店は永いこと東京で修行していた中学の先輩が数年前に帰ってきて開いたのだと聞く。
やっぱりみんな帰ってきてしまう、立川に。何故だろう。立川の何が私達を引き戻すのだろう?
何処に? まさか過去にではないだろう。
七時の約束だったんだけど珍しく暇をもてあまして、
いや、本音を言おう。
気が急いてしまったのだ。私は、先に入って注文しとけばいいんだと6時半にはお店に向かった。
そうしたら岡村くんとやったけどヤっちゃんがもう来ていてカウンターで飲んでたんである。
早い時間でお客は少なかった。マスターに、テーブル席に移っていいかな、と確認してから私達は席を改めたのだった。
と、そうしてたら小田切と坂岡くんもやってきた。みんな暇なのか。いや、それとも。
「いやだからさ、それはみんな分かってんだよ、すんごい美人なのはさ。そうじゃないだろ。」
「え、何いってんの、僕買ってないよ。」
ええ、と他三人が心底驚いた顔をする。
「あれを目の当たりにして着いていかずに済んだのか?!」
と岡村くん、
「ばーか。」
私は言った。
「嫌だな。皆の話聞いた後で僕までお金出せる訳ないでしょう。人聞き悪いよ。」
ヤっちゃんの言うことはもっともだ。
「それにしても本当に記憶に無かったなあ。あんなきれいなこが居たら絶体覚えてる筈なのに。」
「そう、それ! そこが問題なの!」
「おいおい宗田さん、早くも悪のりするなよ。」
坂岡くんにセーブされた。
だって結局問題は解決されなかった、こんなに、小川さんが居たことを皆が覚えているのに小川さんが居たことしか誰の記憶の中にもない。
どうしてなんだ。どうして私達はこんなに奇妙な記憶を共有して、そして共有していることを知らないまま十数年を過ごしてきたんだ。
分からない。知りたい。知りたいから、今日、今、此処に居る。
「えっと、沢谷くんで良かったんだっけ?」
「はい?」
と名前を呼ばれたヤっちゃんが振り返る。
「あってた? あなたよね、こないだのひと。」
物凄い女がそこに立っていた。