書けない。
と言う珍しい状態に陥っています。書くだけなら書くんです、私は。いくらでも書くのです。
でも書けない。
書くことは決まっている。でも書けない。
これから書くものが面白いのかどうなのか解らないから書けないんです。
悩むくらいなら書く、
が信条なのですが、最近面白いものを書くということに膠泥してなかなか書く指が活きてくれない。
問題は面白いとはどういうことなのか、
それが自分で分かっていない。
面白いの基準が分からない。
こういう迷いが有るときはやっぱり自分の感覚を信じるしかないでしょう。
私が一番面白いと思う小説は、
夏目漱石の「行人」
です。
太宰治の「斜陽」は400回くらい再読してるんですが、行人の方が面白いと思っています。
何が面白いというと、
人間の心理と神経の森の中に何処までも深く別け入っていって
最期には自分が樹木になるまで歩き続けるしかない
ような描写が面白いんです。現実世界とはただの観客席で、
読書することでそのむこう側の限りない虚構を
遊泳する義務を私たちは負っている
そんな感じが好きなんです。
文学の本分はひとのこころを立体彫刻にすることだ。
そこまでわかっていても、
私には出来ない。
そこまでえげつなくひとのこころを描けない。
だから今は書けずに居ます。なんか、こういう状態って、よくないと思うんだけどなあ。