小説「蛇のあしあと」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

我々の母親は大変あたまの良い人だった。
が、それでいて大変不細工な人でもあった。

頭が良くて醜い女の人というのはこれは相当な貧乏くじと言うべきものである。

かたや醜いことが長所を損ない、
かたや秀才が短所を加速する。
女の人が頭が良く不細工に生まれると、それはそれだけで人生の大間違いなのである。

おっと違った。
大間違いなのは我々の母親に限ったことであった。

頭の良い女の人というのは実際世の中の宝である。

有能な人というのは実際てきぱきてきぱきと仕事をしてくれる。
あくせくと働いてしっかり納税して国の不手際に影ながら援助しているのが、仕事に有能な人というものである。

特に女の人はそもそも思考がミルフィーユ構造になっているもので、
更に特に頭の良い人なら、その辺の男の人よりもよっぽどあくせく仕事が出来る。
一度に4つくらい違うことが考えられるから。
これはやっかみとかじゃなくて、生物学的にこうなんである。

我々の母親もせかせかと仕事をしているだけの人ならよかったのだ。

しかし、
生まれた以上は結婚するものだ
という誤った認識の時代に成長してしまった為に、誤って結婚してしまい、
我々三人は生まれてしまった。

我々は別に生まれなくも良かったのである。
多分そのせいで我々は体が薄い。

兄は天気の良い日に外で見ると輪郭がぼんやりするし、

弟などは透けて背骨がうっすら見える程だ。

我々の母親もあくせく働いて世の中の役に立つだけで良かったのに。

誤って生んでしまった我々が
多分生きている意味が無いために世の中のまったき害悪であることは、

残念な皮肉である、これは顕かな皮肉である。