小説「プリズム」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

螺旋階段、二重螺旋の螺旋階段、右を回ると上に行けます。

下に行く人は、左を回って行きなさい。

二重螺旋の螺旋階段、上がる人、下りるひと、お互い姿は見えません。

と思ってるのは右回りの人だけ。左を回る我々に向こうの姿はよく見える。だって二重螺旋に仕切りなんてないのだから。

上っていく人には下りていく人が見えやしない。しかし我々には上っていく人がつぶさに見える。

着てる服の縫い目まで見える。
付けてるピアスの値札まで見える。
履いてる靴の踵まで見える。買った店で直したばかり、きっちり四角い革製の踵。

我々は灰色のズック靴。足をくるむ以外の目的などない。それでも靴は必要だ。

これからこの長い階段を、いつまでだって下りていく。そのために是非必要な、灰色のズック靴。

上っていく人には我々の姿は見えない。

僕は微笑み交わしつつ上っていく彼らのことを、
いつかは弾ける天上の星と改める。