亡くなった人ならともかく生きている人の葬式は辛い。
しかし既に自分たちの祖父母の最期を看た両親は
晴れ晴れした顔をしている。
今日、おじいちゃんは老人センターに入っていって、お父さんはセンターの銀行口座に、五十万円振り込んだ。

死んだらそのまま焼いてください。

とセンターのひとに頼んだ。そのための費用なのだ。

おじいちゃんを置いてきたあと私たちはファミレスに寄った。

せっかくだから、とお父さんが言う。何でも好きなものたのめよ。しかし六百円より高いものはあまりない。

お父さんは運転をお母さんに代わるから、迷うことなくビールを選んだ。
私たちはドリンクバーを三つ、ピザや唐揚げやフライドポテトやスパゲッティを頼んだ。

「ではおじいちゃんの無事なる往生を願って、献杯。」
と言ったのはお父さんだけで、私たちは勝手に届いたものを摘まんだ。

私はフライドポテトにマスタードを付けてどんどんほおばった。別にじゃがいもじゃないのかもしれないけど、マスタードの味がすればいいやと思った。

お父さんはお酒を呑むほど機嫌がよくなって、焼酎の水割りをどんどんお代わりしている。

お母さんはわかめうどんを静かに食べていた。

おじいちゃんはまだ生きているけど、
一家の日常からはもう消えてしまった。
生前葬。

私は唐揚げにマスタードを浸けながら、おじいちゃんの名前が出るのは今日で最後、と思った。