小説「天パの取り合い」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

コンビニの前。夕方。学校はもう終わっている。
セーラー服を着た女の子が二人、立ち話している。
紺色の制服に寒そうな顔が、まだあどけない感じなのだけど
「女の階段」は二人ともすでに登り始めているわけで。
なんとなく険悪な空気で辺りと自分を隔壁している彼女らは、
今「冴えない天パの中村くん」について、出口の無い論議を
繰り返しているのだった。
「あんまりさあ。口利いてほしくないの」
と、こういう彼女は冴えない天パの中村くんと付き合っている。
彼女は自分が冴えない天パの中村くんのちゃんとした彼女なのに、
一方の女子が、最近どうも中村君とやたら親しくなったことが、
気に入らない。
「なんでそういうこと言うわけ。」
とこっちの女子も言った。
このこは普段からこういう顔なんだけど、
話題が話題だからもう素敵に無愛想である。
「だからさ。中村くんあたしと付き合ってるんだから、
あんたがやたら話してくるのおかしくない?」
「おかしくないよ、そんなの。中村くんとあんたが
付き合ってるのはいいけどさ、じゃあ中村くんは
あんたとしか口利いちゃいけないの?
そっちのほうがおかしいでしょ。」
こっちの女子のほうが強気だ。
「じゃあさ、言うけどさ、あんた中村くんのこと
どう思ってるのってこと。」
「どうって。」
「だから。中村くんあたしと付き合ってるんだから。
へんなこと考えないでよ。」
「なにそれ。」
と、女子はふふんって感じで笑った。
感じワルー。
あどけない女が二人でバトルを行う。
が、そうであるのに当の中村くんとしては、本当に、
実に冴えない天パなのである。
天パがみんな冴えないということではないのです。
しかし中村くんの場合は、彼の冴えないところが、
どうも、誂えたように、天パとしっくりきているという、
そういうこと。
そして冴えない男をあどけない女が二人で取り合っている。

と、いうのは、さっき私が角のコンビニであった中学生について、空想したまったく架空の物語です。
中学生でも、セーラー服着ていても、
女が二人で角突き合わせていると
どうしてもこんな空気を醸す。
あなおそろしやおそろしや。
天パの中村くんが、まさか実在していたら、どうしようか。