小説「こころをこやすには」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

空気で為した貪欲な獏と遣り合っているみたいにして
私の意欲というのか気力というのか
要するにこころのふとさみたいなものは
毎朝にして縮んだり伸び広がったり枯れ荒んだり
膿んで腫れたりしていたのだが
それにしてもなぜこうも今朝は晴天であるのか。
そういうことは、13歳(中学に入った年だ。その年私の住んでいる地域で
その頃にしては大規模なカタストロフが起きているのだが、
その後にもっと度肝を抜くおおごとは起こるわけだし
それ以前にももっと手に負えない惨事はいくらでもあったわけなのだから、
あの一個の大災害は
いわばわれわれ世代のためになすられたものなのだろうかと考えるのは
傲慢不遜とはいわないけれど
いささかの空気感を欠いているのはたしかだろう。)
にもなればもう分かっている、決定事項、はい了解なものなのだが、
それにしてもこうも酷い顔で毎朝起きる私に対して
冬であるのに
なぜこうも連日晴れているものだろうか。
朝目覚まし時計が鳴って起きる時間になると、決まって私のこころはやせていた。
夜の間に何があるのだろうかといぶかってみるのだが。
これが肉体的なカロリーならば大いに歓迎するのだが。
前日までにこころに備わっていたちからはのこらずすっきり
何に使ったのか考えるのもいやになるくらい、なくなっていて
私はかさかさしている。
こころをこやさねばならぬ。
体は痩せなくとも、何もしないと私のこころはそげていく。
たくさんのたくさんの浅ましいことに刈り取られて
合成繊維よりも買い叩かれる貧相な羊みたいにそげていく。
誰ともどことも分からずに気みたいな血管のひとつひとつから
確実に堅実に吸い上げられていく。
にも関わらず、どうしてもこうも朝が晴れやかであるのだろうか。
今日のための3万円がどうしても作れない。
どうにかして工面するという方策がすでにない。
いつの間にこんなことになったのか。
そもそも最初は誰から何をもらったんだったか。
確認するのも面倒なありさまである。
私は布団から出たくない。空気で為したどんよくな獏、
いっそ脳みそごめすすってくれたらいいのになと思う。
いっそ雪が振り込めてくれたなら、と私は思う。
初めから何も無かったみたいに真っ白になれるだろうに。