特殊技能はなんでも生業になるのである。
特殊というならばあんまりにも特殊であり、他の誰にもない技術であれば、
犯罪であっても利用する余地はある。
銀行強盗はセキュリティ会社の顧問に、ハッカーはシステムの防壁開発者に。
犯罪→悪いことをしようとする人間は、そのために
「悪いことが出来ない状態」について何度もシミュレーションを繰り返すから、
自然と「悪いことが出来ない状態」への造詣が深くなる。
我々善良な市民が、考え付かないくらい、厚く。
そんなわけで私がインタビューに来たある殺人鬼も
その技能を生かして自分が「生きている」わけなのだ。
正確には役に立つ部分を全部搾り取ったら死刑、
役に立っているうちは生かしてやる、ということなんだけど。
人命の防衛に生かすために殺人者の心理についてデータを取る。
それが私の仕事。
「僕は、基本、シャイなんです。恥ずかしい、恥ずかしいんですよ。人と会うのは。」
殺人鬼はもじもじしている。
モニター越しに会話しているにも関わらずあっちこっち斜めを向いたり
しきりに手指や耳たぶを触って、落ち着きなくもじもじしていた。
「僕はね、シャイだったんです、昔からずっと。だから人と話すのがずっと苦手だったんですね。
誰か正面に居てしまうと、とても駄目で。話たり、できないし。
し、親密な関係なんて、とても、ととても無理なんですね。どんな人でもね。
か、顔が、見えなかったり声も、聞こえなかったりするといいんですけど。
だから僕はブログが好きでした。サイトの文字がこう、
にゅっと、穴みたいに、文字の穴から押し出された寒天みたいなだれかが、
向こう側にいてくれるみたいで、だから好きでした。」
彼はそうしてサイトで出会った人間を現実で物理的にこっぴどい方法で何人も殺している。
「僕は基本、とても人が好きなんです。うん。好きです。とても好きですね。
好意を感じるんです。すてきな生き物だって思うんですよ。
でも僕は、とても、とてもシャイなんで、ど、どんなに好きでも、
正面から、会えないんですね。会えないんですよ。恥ずかしいんです。
だから殺してしまうは僕にとっていっちばん効率的な方法です。
死んでたら恥ずかしくないんです。不思議ですよね、同じ人なのに。
僕は死んだ人からたくさんのことを知ることが出来ました。
誰かが死んだ後にたくさんのことを理解出来るのにとてもしあわせを感じました。
皮膚とかつめとか髪を調べたらその人がどんな物質を蓄積しているか分かりますし、
内臓を剥いてみたら食べたものとか、それによってどんな病気だったか分かりますし。
骨を見ていると成長の途中でどんなダメージを負ったのとか。
いろんなことが分かります。え、ええ。僕は医学の学位、持ってます。
僕は基本、人が好きなんです。だからとてもたくさんのことを知りたい。
そして知りえたことは僕の中に永久に蓄積されます。
ねえ、僕の中にはあんまりたくさんの人の情報が蓄積されているんです。
どの人についても、どんなことだって僕は覚えていられますよ。
ねえ、僕の中でその人達は今も鮮やかに息しているんです。
だ、だから、いじめ? 無視するのって、僕はちょっと分からないなあ。
興味、もたないんでしょ? 興味、ないんでしょ? そこにいる、誰かのことが。
居なくしてしまってるんでしょ? なんにも知りたくないんでしょ?
知りたくないなんにも知りたくないってこと、それって、
ひとごろしですよ。
な、なんで取り締まらないのかなあ。僕はここにいるのに。
ひとごろしです。みんな、たくさんたくさんころしてますよね?」
とりあえず、
肉体が無傷なら立件が難しい現状に改善を希望、
ということで私はインタビューの要約を作製。