少年のころ夫の祖父と言う人は、根がアレなのか加齢によってボケてしまっていたのか、
面倒を見ることも出来ないくせに実に夥しく猫を拾ってきては、当然のごとく著しく見殺しにするという忌むべき悪癖を持っていたという。
多胎する動物だから、避妊もせずに放し飼いにしているとすぐさまあっちにも猫、こっちにも猫という事態になった。
親猫が一匹いたら5匹ま孕む。で、そのうち1匹か2匹は当然のことで死ぬ。
親にしたって労力の無駄なんだから、最初から弱く生まれたやつは自分で育てようとしないのだ。
で、夏が来る前に実に夥しく子猫が死んでいくのだった。
小さな少年だった夫はそれに心を痛めていて、当然だ、まっとうな感性があるのなら、
なんとかその祖父に代わって親に見捨てられた子猫の世話をしようとするのだけど、
これがまた分かってるんだかボケてるんだか、祖父というのが、夫が新聞とか古タオルとか敷いてどうにか快適に眠れるようにしつらえてやった寝床から、
情け容赦なく子猫を引きずり出して、夜風にさらして死なすんだそうだ。そして次の朝堅くなったそれを見て
「くけけ、くけけ。」
と笑うんだそうだ。私はそれを聞いてぞっとした。ボケとかそういうことじゃなくて、
人間のすることじゃねえと思った。
だから当たり前のことで、私と出会った頃には夫の心と世の中の間には
ATフィールド24枚分くらいの距離が常に保たれているようになっていた。
その24枚の強固な壁に対し、サザエさんにおけるミカワヤさんの如く
「ちわあ、醤油の代金を。」
「ちわあす。ビールの代金頂きにあがりました。」
てな具合で一枚またいちまいとこくこくと蹴破って今年で半分。
当然これも犯罪であるのだから、私も、彼の忌んだくそじじいとまあ大差ないところなのである。
夫はかなしいひとなのだ。