好天に恵まれた5月最後の休日。
ブナの新芽が見たくなり早朝から一人ドライブを楽しむ。
THE BOOM 「風になりたい」
をエンドレスに聴きながらテンションを上げていく。
現地に到着すると写真愛好家たちがブナの新芽を撮影していた。
カメラのことがよく分からない自分でも高価な機材であることは
わかる。
彼らもあの小さく美しいクワガタを目的に撮影にきたのだろうか。
小さく美しいクワガタ。
それはブナの幼木の新芽につくコルリクワガタのことだ。
そう、ここはユキグニコルリクワガタの基産地なのだ。
ブナの幼木の新芽に集まるコルリクワガタ♂
昨年の5月初めて撮影に成功
例年よりも早い雪どけに心をはやらせながら、
コルリクワガタの見れる季節を今か今かと待っていた自分。
ブナの新芽がまだ開ききらないことを祈りながら、
はやる気持ちを抑えきれずにいた。
「焦るな。
何事もタイミングが大切。
自分の直感を信じ、
タイミングがはずれたとしても、
新緑のブナ林の中を散歩するつもりの気持ちが大事だ。」
新緑の新鮮なブナの香りが漂ってきた。
1本のブナの幹に顔を近づけそっと耳を当ててみた。
ブナの鼓動が静かに聞こえてくるようだ。
そんなロマンチックに浸っている時だった。
ズボ ズボボ ズボ ズボボ
ズボ ズボボ ズボ ズボボ
「いでぇ、また転んだ」
残雪に足首がとられ何度も泥だらけになってしまった。
転んだ痛みに耐えながらもまた前に歩き出す。
5月とはいえまだ残雪が多く思ったように歩けないのだ。
途中、
クマに出逢ったら大変なので携帯した鈴を取り出す。
静かだ。
自然の中に埋没しそうな感覚になる。
自分は一体何を求めて歩いているのだろうか。
時間だけが過ぎ去っていく。
歩きながら不安と虚しさがよぎる。
「どうやら新芽はまだ半分以上がつぼみ状態だ。
いくら好天が続き雪どけが早いと言っても、
つぼみではコルリも飛んでこない。」
半開きの新芽には虫気がほとんど感じられず、
コルリの飛来にはまだ早かったことに気づき、
気落ちしていく自分。
がっかり感が足取りを重くしていく。
駐車場に戻ると、3~4台ほどの車が停車していた。
彼らも同じようにコルリを求めてきていたのだろうか。
強い日差しが顔を照らす。
雪どけの湧き水で顔を洗うと生き返ったように感じた。
「成虫がブナの新芽を求めて活動するのは約2週間と短い。
昨年はビギナーズラックもあり、ギフチョウも飛んでいた。
しかし、今回は完全にタイミングがずれてしまった。
虫の気配が全くないな」
自分の直感がはずれ自信を失うこともある。
今季は早春から台風がたくさん発生するなど、
まだ春なのに真夏のような暑さになる日も多い。
こんなにも早く夏のような暑さが続いてしまうと、
自分の胸の中にあるクワガタ探知機が強く騒ぎだす。
樹木で活動する成虫たちの姿が早く見たくなり、
自制心がなくなり落ち着かなくなってしまうのだ。
そんな気持ちを引きずりながら夕方に帰宅。
出逢いは「タイミングと奇跡」ということを改めて感じた。
諦めずにまた来てみよう。
ああ、ついに私も完全に虫馬鹿になってしまった。
今の自分につける何かよい薬はないものだろうか・・
ブナに笑われたぶなちろくんでした。(^◇^)
平成25年5月6日水曜日(休日)