ナミハンミョウその愛 | ぶなまつの昆虫的エッセイ

ぶなまつの昆虫的エッセイ

昆虫の「生活史」をメインに、裏山にて「ソロ虫活」を楽しんでいるシニアです。
読書と哲学と自然が大好きです♡
イハレアカラ・ヒューレン博士を心の師としています。
平和(^^)/は私から始まる。
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 図鑑によればハンミョウ類は国内において23種が確認されている。
しかし年々見られる種類や個体数も減少し、生態そのものもわからないことが多い。卵から成虫の産卵まで2年以上かかるといわれている美しき甲虫の生活環境は、土岸工事や宅地化など「開発」という名目で人為的に破壊され続けているのが現実だ。小型で外骨格が柔らかいハンミョウ類は乾燥や低温に極端に弱い。越冬力にしても、大型で外骨格が固い同じ肉食のマイマイカブリの方がはるかに上だ。秋の観察で人為的な飼育やブリードも難しいことがわかった。
 
以下の話はそんなハンミョウとの不思議なふれあいの1ページ。
 

 イメージ 1

  
晴れ好天が続く4月下旬、
カメラだけを携えて彼らの住まいを訪ねてみた。
春なのにギラギラと輝く太陽。
春と夏が一緒に到来したようで4月ということを忘れてしまう。
 
 
音をたてないようにゆっくり足を踏み入れると、
越冬から目覚めたハンミョウたちの活動が早くも始まっていた。
 1頭・2頭・3頭・・・あっという間に確認頭数が2桁に達した。
秋よりも数が多く感じるのは真夏日のような気温のせいだろうか?
 
ハンミョウが活動している局地的なこの場所は越冬しやすいだけで
なく、生きていくのに必要なもの全てが満たされているからかもしれ
ない。
 
イメージ 2
 
 
ハンミョウの求愛活動が始まった。
肩に止まった1頭の♀ハンミョウが、カメラを持つ私に話しかけてきた。
まるで夢先案内人のように・・
 

 

イメージ 3
  
 
『長い越冬から目覚め大地から飛び出すと、
熱い太陽の下で私たちは身体も心も激しく燃えるのよ。
ぶなちろくん、私についてきなさい。』
 
 
「この先にはいったい何があるのだろう?」
 
道教えと称するハンミョウの移動する後姿を追いかけた。
 
 
 
 
突然、
 
    ジージー ジージージー  ジージー ジージージー

 

 
 
           という悶え声が聞こえてきた。
 
 
そこではハンミョウたちによる聖なる秘め事が行われていたのだ。
 
 
 
 
目の前には、一組のハンミョウ夫婦が聖なる秘め事の真っ最中。
息を飲みこみ気持ちを落ち着かせようとしても、ファインダーがぶ
れてしまい修正がきかない。
 
強い鼓動を心臓に感じながら、心でシャッターを切った。
 
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撮影が終了し画像を確認していると秘め事を今終えたばかりのナミオ(♂)とナミエット(♀)が自分に気づき、真顔で突っ込みを入れてきた。

 

  
 
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『おい、ぶなちろくん!
 いつの間に俺たちの恥ずかしい姿を撮影していたんだい?』(♂)
 
『とても恥ずかしかったわ。(でも本当は嬉しかったわ)』(♀)
 
「ごめんね。ナミオ&ナミエットさん、謝ります。
 どうかたくさん・たくさん・たくさん卵を産んで、
子どもたちをいっぱい、いっぱ-い増やしてね。」
 
『うふふ、ぶなちろくんたら・・(笑)
草食系のあなたに見られたから最高に燃えたのかもしれないわね。
あなたも知っているように、
ナミオさんは肉食系だからすごいのよ。
性感帯の首は顎で抑えられるととても感じるのよ(笑)
こんなことは、息子さんには内緒よ。
恥ずかしいんだから(笑)
  
でもこのことは忘れないでね。
私たちハンミョウの♀にとって、
交尾はたった1度だけの神聖なものなのよ。
お互い栄養が足りない場合は交尾をしません。
最愛の彼との1度だけの交尾を大切にして、
パートナーの元気な赤ちゃんを産むの。
1度に1個ずつ時間をかけながらたくさん産んでいくのよ。
ねぇ、ナミオさん・・』(♀)
  
 
 
『ナミエットの言うとおりだよ。
俺たち成虫の寿命は約1年弱だがその半分以上は冬眠している。
春、越冬から覚めた後は大切なパートナーを見つけ子孫を残すのさ。
子孫を残したらもう俺たちは…』(♂)
 
「どうなってしまうのですか?」
 
『人間も同じだからわかるだろう?
俺たちの細胞も君たち人間と同じ、一つ一つに生命がある。
細胞一つ一つの寿命が尽きれば、 その集合体の身体全体も生命が尽きるんだよ。』(♂)
 
「何だか悲しいですね。」
 
『悲しいなんて言うなよ。
限りある短い寿命を本能のごとく精いっぱい生きる。
それは決して悲しいことではない。
 愛するパートナーと出逢えたことを感謝し、
身体も熱く燃え上がる。
自然界における最後の務めとして、
生命と引き換えに俺たちの子孫を残す。
これを悲しいことなんて思ったことなど一度だってないぞ。
そして最後は…』(♂)
 
「最後は?」
 
 
 
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『最後は地球の自我と一つになるのさ・・』(♂)
 
「地球の自我と合一するのですか?」
 
『私たちハンミョウは誰にも教わらなくてもちゃんとわかっているのよ。
最後は地球の一部になるってことをね・・』(♀)
 
『そうさ、そしてまた新しい俺たちの生命に宿るのさ。』(♂)
 
「ハンミョウさんありがとう。最後に教えてください。
私自身いろいろなものに縛られて本当に大切なものが見えなくなっています。
そんな私でも最後は、あなたたちのようにになれるでしょうか?」
 
『ああ、なれるとも。
人間も大自然の一部、生命あるものはすべてなれるさ。
お前自身も、
お前の大切なパートナーも、
愛する息子もな。
 
じゃ、また逢おうぜ。
お前にかっこいいことを言ったけれど、
俺たちハンミョウも、
運命に逆らわず、ただありのまま生きているだけだから・・』(♂)
  
『今度は、私たちの赤ちゃんたちにも会いに来てくださいね。』(♀)
 
 
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 産めよ 増えよ 地に満ちよ

ハンミョウの子どもたちがたくさんたくさん生まれ育ちますように・・
 
自然は素晴らしく限りなく美しい。

 

そのことを教わったハンミョウたちに

 

感謝を込めてこの記事を捧げます。ラブレターラブレター
 
 

平成27年4月29日昭和の日